第三話 星の占い C

 〝Ⅽ〟



 翌日、僕こと深崎司は普通に登校していた。


 だが今朝、一組のほうへ行ってみるとそこに皐月はいなかった。一組の知り合いに皐月はまだ登校してないの、と尋ねてみると、


「いや、いつもあいつ一番に登校してきてるからなあ。だからたぶん休みだと思う」


 僕はそれを聞いて、仕方ないよなと納得した。


 僕は自分の席に座って、寝るふりをしながら昨夜のことを振り返った。僕らはあの〝頭〟を発見したあと、すぐさま永井さんのいるセダンへと逃げこんだ。


 皐月があれを見て、尋常じゃないくらいに震えていたのだ。


 永井さんはすっかり寝入っていたが、僕らが車中へ入ると、肩をびくりとさせて起きてくれた。それから僕は永井さんと皐月の希望から、家に送ってもらえることになった。


 まあ、それはそれとして。

 七不思議の七番目──〝星の占い〟のことが何となくわかった気がする。

 これはあくまで僕の妄想である。探偵がやるような論理性ある推理を披露するわけじゃない。


 まず、黒装束の男というのは霧咲皐月だ。


 たしか沙月ちゃんから聞いた話によれば、その黒装束の男は星とこの学校の見取り図を廊下に落としていったとのこと。


手順の一番目として、学校の見取り図を用意できるものを絞ろう。


 そもそも部外者が見取り図を手に入れることは困難である。というか不可能に近いだろう。だからこの在間高校の生徒になる。


 しかし生徒が見取り図を手に入れるタイミングなんてあるものなのだろうか。もしかしたらあるのかもしれない。


 でも、『ない』と仮定するならば、可能なのは一人に絞られる。この在間高校の管理者の息子である、霧咲皐月だ。管理者であるのならば見取り図ぐらいさっさと用意できるだろう。


 そしてこれは僕が皐月に聞いた話だ。


「皐月。調査って今日が初めてか?」

「え? あ、ああ。いや、今日からじゃない。もう一週間前からかな。だいたい転校したてのころから」


 加えて次の話はクラスメイトから聞いた話。


「なあ。七不思議の七番目っていつから作られたんだ?」

「え? ああ、たしか一週間前かな。ほら、あのイケメン転校生がやってきてからさ。だから一部ではあいつと関係があるんじゃないかって──」


 そう、もともと在間高校には七不思議の七番目なんてなかった。六不思議だったのだ。僕が七不思議の名に対する違和感の正体はこれだったのだ。


 あと、これはおまけ。同じく車のなかで聞いた話である。


「で、今日は何を調べようとしたんだ?」

「……今更だな。いや、普通に七不思議の一番目の〈占い死〉についてだよ。説明がよくわからなかったから、自分がわかる範囲でこうして調査してたけどね」


 彼が調べようとしていたのは七番目じゃない。一番目だった。一番目と七番目は似通った怪談だったのだ。七番目と同じく、星を使う占いだったらしい。七番目との違いは、一番目は上から見て星型になるように、その場所に同じく星を描く、というものだった。


 と、そういうわけで七番目の不思議の正体は夜間侵入を繰り返していた霧咲皐月、ということだ。


 しかし──あの頭は誰が置いたのだろう。


 つまりあの少女を殺し、分解し、それを置いたのは誰なのだろう。これはあくまで僕の悪ふざけだけど、この七番目を考えた者──そいつが犯人なのではないだろうか? 


 まあ何より、この不思議はなんとも──。


「──面白いじゃないか」


 僕は悪癖を繰り返す子供みたいに、昨夜と同じことをつぶやいた。



 

  七不思議七番目・〈星の占い〉──了。

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