第3話 彼女とスンドゥブ

家に到着!

実は最近は殆ど料理を作ってもらっている。ちゃんと金は払っているから問題はないはず…

彼女の料理は冗談なしで美味しい。この前もアヒージョな気分だから作ってくれと言ったら、お好み焼きを作ってくれた。まあアヒージョをよく知らないから普通に喜んで食ったけど。そんな感じでリクエストは一応可能だったりする。


ちなみに今日はスンドゥブを頼んでおります。さてさて何が出てくるのかと期待を胸に膨らませてみます。


「じゃあ作ってくるから。出来たら呼ぶね。」


「今日のメニュー覚えてる?」

一応確認してみる。スンドゥブなんて忘れたくても忘れられるものじゃない印象強さがある訳だが、念のために聞いておく。


「えっーと、あれよね。

大丈夫分かってるわ。」


なんとなく確認する素振りで、問題無いと安心させてくれる。


30分後…事件は起きた。


「はい、召し上がれ。」

唾を飲む。目の前に置かれたのはぐつぐつ煮えるスンドゥブではなく麻婆豆腐。

見事に擦りもしない間違え方に僕の五感全てが恐れ慄く。


「えっとー僕のリクエスト覚えてる?

念のため認知症の疑いが無いかを検査してみた。」


「も、もちろんよ。麻婆豆腐でしょ?」


どうやらスンドゥブが忘れ去られて麻婆豆腐に置換されてしまったらしい。

あぁなんて可哀想なスンドゥブ…


「スンドゥブだよ。佐々木ちゃん。

スンドゥブ。はい言って。スンドゥブ。」


「えっ?あ、あぁ、スンドゥブね。まあスンドゥブ。

いい名前ね。でも麻婆豆腐も親戚みたいなものよ。だからこの子もスンドゥブよ。」


彼女にとっては麻婆豆腐もスンドゥブらしい。まあいっか。きっと麻婆豆腐も美味しかろうと無理やりポジティブに脳を切り替える。このように彼女へのリクエストは突然変異を遂げたりするする。最近は随分と成長していて、初期は何を頼んでもカレーしか出てこない問答無用のカレーマシンと言われたほどだ。

最近はもはや夕飯ガチャは僕の娯楽へと移り変わっていた。

今度麻婆豆腐を頼んだら何が出てくるのかね?

「佐々木さん。私、気になります‼︎」

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