第2話 電柱まな板少女

「でも今まで役に立ったんじゃないの?スポーツとかで重宝されるって知ってるぞ。」


「まぁそれは動ける人たちね。私は背が高くても運動ムリだから。」


背が高いのに何も得がないなんて、かなり残念な電柱さんだ。


そんな調子で帰路に着く僕と佐々木。実は家が近いのだ。というか、同じアパートなのだ。まぁしかし、おてて繋いで帰りましょうな関係でもないからときどき会話が止まる。

そのぎこちなさが、相手との距離感の測りあいが、重要となってくる。はずなんだけど…


「あんたそういえば彼女とかっているの?」


ド直球にストレートボールを投げてきやがった。もうやっぱり野球少年してろよ。


「えっとー哺乳類の恋人はいないかな。両生類の恋人もいないけど。」


「ふーん。そうなんだぁー。」


適当にはぐらかそうとしたら失敗した。

爬虫類も無いよと安心させてあげれば良かったかね。まあ冗談だけど。


「佐々木はどうなの?」


質問されたので次は僕の番。


「何故か誰とも付き合った事ないのよね。顔はそれなりなはずなのに。」


「なんだ自分でよくわかってるじゃないか。

顔以外が問題だと、主に性格とスタイルが悪いね。」


ハニカム笑顔で相手の問題点をぶつけてみた。


「あんたも大概失礼ね。

ってか性格はいい方でしょ?スタイルについては言及しないわよ。ってかこれ以上言ったら私の右拳が黙ってないわよ。」


やっぱり性格もアレじゃん。って思ったけど口には出さないお口チャック主義をつらぬきとおす。


「まあ頑張りなされ。若人よ。

ホッホッホ。」


「何それうざい。」


「フォッフォッフォッ。」


「キモい。」


「ふぉげぁっきだわぁふぁぉふぁわだぉ。」

(普通に咽せた)


「死になさい。」


これ以上キモさを演出すると僕の身が持たなそうなのでここで一旦停止。

ちゃんと無視しないあたり好感持てるのかね。判断基準が難しいなぁと。蚊に刺されてしまった自分の右腕をかきむしりながら思案してみた。


かように我が家を目指して三千里。

佐々木とのくだらん話をしながら帰宅した。

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