第4話 春から夏へ

紗奈さんがいなくなって2ヶ月後…

春が訪れた。

まぁやんも龍弥も中学校の最上級生、中学3年生になった。

「まぁやん、龍弥、あんたたちいよいよ3年だよ!しっかり勉強してきなよ!」

みさき先生がはっぱをかけた!

「えぇー勉強嫌いだー」

まぁやんが嘆いた。

実は意外と龍弥は勉強が出来た。

龍弥がまぁやんに宿題を教えていることがしばしばあった。代わりにまぁやんは喧嘩の仕方を教えていた。

それをみさき先生に見られて怒られていた。


「まぁやん!いよいよ頭張るか!」

勝大が嬉しそうにはしゃいでいた。

「だ・か・ら!俺は番長とかに興味がないんだよ!」

「だってよ。頭いないと、他校に示しがつかないぜっ」

「そだ!龍弥、お前やれよ!」

龍弥が驚いた顔でまぁやんを見た。

「はぁ?なんで俺が?」

勝大も賛成した。

「なるほど!ふたりはもはや、ふたりでひとりみたいなもんだしね。表向きは龍弥くんで、裏番に…」

と言いかけたところでまぁやんが勝大の頭を張り倒した!

「誰が裏番だよ!勝手にするな!」

「いてててー。まぁとにかくそれで行こう。昼休み前にみんなに広めてくる」

龍弥が焦ったように勝大を止めようとした。

「ちょっと待っ…」

『ガラガラガラ』

「おーい席つけー」

村井先生が入ってきたので、話が中座してしまった。


昼休み…

龍弥は勝大を探したがいない…

「あいつ、どこいったんだべ」

すると、龍弥とまぁやんの教室に、ゾロゾロとこの学校のヤンキーたちが入ってきた。

その数50人前後。

教室に入りきらない人たちは廊下にいた。

「なんだよ…おめえら!」

龍弥が凄む。まぁやんは…寝てる…

一人のヤンキーが龍弥に向かって

「あんたが龍弥さんかい?」

「あぁ。俺が龍弥だ」

お互い睨みを利かせる。

一触即発の雰囲気だったが…

「龍弥さん!一生ついていきます!よろしくお願いします!」

するとその場にいたヤンキー全員が

「よろしくお願いしまーす!」

と深々と頭を下げた。

その騒ぎでまぁやんも起きた。

ヤンキーの中の数人が

「あのまぁやんさんが認めたお人だ!間違いねえ」

「龍弥さんの裏にまぁやんさんがいるってのは、すっげーアピールになるべ」

「まぁ龍…じゃなかった。『雅龍コンビ』が二人ともこの中学だからな!強くなるぞ、うちの中学は!」

っと盛り上がっていた。

「はぁ…もう勝手にしてくれよ…」

龍弥も呆れてしまった。

勝手に盛り上がる大勢を尻目に、こっそりその場から抜け出したふたり。

「龍、今日はふけようぜ」

「そうだな。なんかめんどくせーし」

まぁやんと龍弥にはふたりだけのお気に入りの場所がある。小高い丘の上、綺麗な芝生が敷き詰められている公園である。

家族連れやカップルが多く、学生服の男の子ふたりで来るのは目立つが、ふたりにとっては全く関係なかった。

「今日もいい天気だなー」

「あぁ、昼寝日和じゃね?」

「…なぁまぁやんよ。お前、本当に番長とかに興味ねぇんだよな?」

「龍、俺さ。人の上に立てるような人間じゃねぇんだ。ただたまたま、喧嘩が強かっただけで…それだけであんな人数まとめるなんて、そんな無責任な事できないわ」

まぁやんは遠くを見つめながら龍弥に本音を伝えた。

「随分と大人なご意見ですねー」

「うっせー!」

「まぁやん、もう一個聞いていいか?」

「…なんだよ…」

「紗奈さんとはどこまでいったんだー」

龍弥がまぁやんの上に馬乗りになり、脇などをこちょばした。

「や…やめ…だから…なんもねぇって…」

ケラケラ笑いながらまぁやんは答えた。

「何もない奴が、急にそんなに大人っぽくなるかねー」

「離せよ…はぁー…例え何かあってもだな…言わないと決めた事は墓場まで持っていくもんだ!」

「やっぱ怪しいなぁ。いつか暴露させてやる」

「上等だよ」

あの日以来、まぁやんは一切紗奈さんと連絡は取ってないし、居場所すらわからなかった。

もう一生会えなくなったかもしれない。

けどあの時の事は絶対誰にも言わないと誓った。

例えそれが龍弥であっても…


夏になった…

まぁやんと龍弥は、自転車を二人乗りして遊びに出ていた。

「あちー!龍弥。アイス食いたい…」

「食えばいいべや。てかさぁ、そろそろ運転変われよ」

「いや、無理」

「テメェ…俺だって暑いんだから」

「龍弥、そこのトンネル入ってみろよ」

そこは線路下の歩行者用の地下トンネルであった。

「また、野生の感が働いたか?」

「おうよ!アイス食えるかもしれないぞ」

トンネルを入っていくと、トンネル内の奥の通路から人の声が

「やめてください」「何もありません」

「早くだせよ!」

そんな声を聞いて、まぁやんと龍弥は

「ビンゴ!」

それは女子高生数名と男子高校生ひとりが、5人の不良グループにカツアゲされているところだった。

「弱いものいじめは良くないな、龍弥君」

「そうだね!助けよう」

不良グループが男子高校生を殴りつけている中に

「なーにやってんの?」

まぁやんと龍弥が割って入った。

「なんじゃお前ら!」当然相手は凄む。

「『なんじゃお前ら!』うわーこえー」

「ねぇねぇ、この人たち解放してあげたら?」

相手はまぁやんと龍弥を取り囲む。

その隙に、龍弥が女子高生たちに手で(逃げろ!)っと合図をする。

女子高生は殴られていた男子高校生を連れて逃げた。

「あ!待て!」

追おうとしたヤンキーをまぁやんが道を塞ぎ制止させる。

「おい…コイツ…中坊じゃね?」

ひとりのヤンキーが言った。

「そうだよ!中坊だよ」

龍弥が答える!

「俺らは狩高だぞ!」

相手はどうやら高校生のヤンキーグループみたいだ。

「へースゴイネ!スゴイネ!」

まぁやんが棒読みで手を叩きながら挑発する。

「テメェら…顔ぐちゃぐちゃにしてやる…」

「おー怖!じゃあ…俺らも手加減なしでいくぞ!龍!」

「よっしゃ!」

…しばらく乱戦が続いた。

龍弥は殴られながらもふたり相手に奮戦!

まぁやんの方は、ひとり倒してふたり目も浴びせ蹴りでのした!もうひとりは逃してしまった。

龍弥もなんとかふたり倒した!

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「龍、だからパンチ喰らう時は受け流せっていってんだろ?まともに食うなよ!」

「う…すまん…」

「でも、さすが高校生だな!丈夫さが違う!」

「だな!さてっと」

龍弥は倒した高校生の一人にまたがり

「さっきの高校生から巻き上げた金…出せよ」

「しっしらねぇよ…」

「ふーん」

すると倒れている高校生の顔めがけて、まぁやんがふみ潰そうと足を上げて、顔ギリギリの側面に踏み込んだ。

「ひっ」

「次の返答次第じゃあ、本当に踏んづけちゃうかも…」

「わ…わかった!」

高校生は財布を三つ出した。

「これで…全部?」

「はい…全部です」

「ほんとかなぁ。これ全部女の子の財布だよね?」

「うっ!」

龍弥がまぁやんに顎で合図をした。

まぁやんの足が高校生の顔の真上に。

「しゃー!」

「これです!」

ビタっ!

顔スレスレでまぁやんの足は止まった!

「最初から出せばいいのに」

他のやられた高校生は自分の財布を出して許しを請うたが、まぁやんたちは突っ返した。

「お前らのはした金なんていらねぇ!」

そして少し歩くと、先程襲われていた女子高生と男子高校生がいた。

「あの…助けてくれて…ありがとうございます…」

龍弥が財布を差し出して、

「はい!これでしょ?」

「そうです!あー良かったー」

「本当何から何まで…」

「何かお礼を…」

「じゃあさ!あそこのコンビニでアイス買って?」

「あっ!アイスぅ?」

「うん!今日暑いからねー」

「ふふ…面白い!」

「中学生に助けられちゃった。君たち強いねー」

「お姉さんたちがたくさんアイス買ってあげる」

女子高生に囲まれて…

「おい!龍!鼻の下伸びてる!」

「お前だって!」

「やだー可愛い!照れてるぅー」

いい匂いのお姉さんたち囲まれて。アイスを食べた夏の日であった…

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