第3話 もう婚約が結ばれていたようで、泣きたいです。

 マジか、マジカマジカ……。

 どうしよう…。

 もう、婚約が結ばれていたとかホントに地獄なんですけど……。


 何を言っているのかって?

 うーん、思っていた以上に今の現状がやばかったんだよ。

 記憶が戻ったと少し噓ついて、家族や従業員をどうにか安定させて私の記憶と今の状況を擦り合わせるためにいろいろ質問したらわかったことがいくつかあった。


 まず一つ目、今私ーガレナは15歳であるということ。昨日6月16日がこの子の誕生日だったらしい。つまり、今日はエルドアン暦265年6月17日と……。

 あぁ、エルドアン暦というのは【ときロイ】の舞台であるリュズギャル王国で使われている暦である。エルドアンという初代国王が王国を作った時を基準として使われているものだ、つまり今年は建国265年ということになる。ガレナはエルドアン暦250年6月16日生まれなのだ。また、一年の始まりは建国当日となるわけで、お祭りが各地で大いに催される。簡単に言ったら前世の大晦日及び元旦を合わせたような感じである。


 そして二つ目、これは三つめにも関わって来るんだけど、明日開かれる皇族主催のパーティーに出席しないといけない羽目になってた……。

 まぁ、一応侯爵家のご令嬢だし?行かないとメンツがつぶれちゃうから行かないとねぇ……。ほんとは断固拒否して引きこもりたい。しかしながら、そうもいかないのだ。


 その理由にして、今一番問題なことが三つ目。

 もうほんとに嫌だけど、皇太子との婚約がもうされてたってこと……。



 だぁーーーーーっ!!!?

 何でもうなってんの⁉ 何でもうあんな奴の婚約者になっているの?

 この婚約のせいでガレナは、プレイヤーというかヒロインをいじめているとか言われて、ポコポコ殺されるはめに会うんだよ!


 といっても婚約者になったのは彼女が10歳の時らしい。

 よく五年間も律儀に婚約守ってたなぁ、ガレナ……。

 そう言えば彼女って『この結婚は侯爵家が皇族と仲良くなって、より力を得るためにすること』簡単に言ったら権力掌握のための政略結婚、と言われ続けてきたから、相手役の皇太子はいまいちどうでもいいって思っているんだっけか?

 そりゃあ、耐えられるか。彼女は家の威厳を守ることを大事にしてたから。

 自分が我慢さえしたら、家がいい方に転がるんならいくらでも我慢するな。



 でも、私は嫌だ。

 この婚約のせいでガレナ滅茶苦茶殺されるんだぞ!

 私は前でも書いたが殺されたくなんかない。

 だから、夕方にでも皇宮に押しかけて婚約破棄させてやる。

 そんでもって明日のパーティは婚約破棄記念パーティーとして大いに楽しみたい。

 ということで、ヒロインからしたら天使みたいだけど、悪女からしたら悪魔みたいな性格なバカドラ息子の面拝みに行ってやりましょう。

 本当は行きたくないけど、手紙とかだったら後回しにされそうだし。


「アリン!夕方に皇宮行くよー。」

「皇太子さまに会われるのですか?」とアリン少し驚き顔?ああ、そうか。予約してないからか。まぁ、いいや。

「うん、そうだけど?」分かっているうえでとぼけてみる。

「何でもありません!用意いたします!」

 うん、アリン最高!流石私の専属メイドさん。気が利くね。


 さて、準備して皇太子との婚約破棄してこよ~。

 あいつも、この子のこと鬱陶しがっているからすんなり破棄してくれるでしょ。


 そんな思惑に基づいた行動の結果が、思わぬ方向に行くのを彼女はまだ知らない。



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