(6)吹雪の卒業式
今日は3月も終わりを間近に迎え、北海道も雪が解け、暖かい
空気に包まれ始めました。
そんな、春が待ち遠しい日。一人の男の子が、卒業の日を迎えようとしています……
競走馬の世界はとても厳しく、大人になる為には、
何度もお別れを経験します。
吹雪といずくも明日でお別れ、そんな2人はどんなお話をしているのでしょうか?今日も見守ってみましょう!
吹雪の卒業前日……
「吹雪、明日でお別れだず。色々世話になったず」
「いずく君、そんなの聞いてないぶ。僕たちはずっと一緒じゃないぶ?」
「仕方ないずよ、競走馬の世界は厳しいず、たぶん、俺達もう会えないず」
「やだー!いずく君とずっと一緒にいるぶー」
「わがまま言わないず、母ちゃん達も泣いちゃうずよ」
「そうだ、ママ元気かな~?」
「吹雪の母ちゃんは、たぶんずっと食べてるず」
「ぶぶぶ、いずのママはダヨーンしてるぶ?」
「うん、きっと今日も元気にダヨーンしてるず。そろそろ、弟か妹もできてるず」
「そうだ、お隣のダンスのお姉さんに、幼稚園のしーばぁちゃん、
また、みんなに会いたいぶー」
「そうだね!本当にいろんな人に支えてもらって、いっぱい恩返ししなきゃいけないず、だから吹雪も頑張るず?」
「うん、いずく君。ありがとう、いずく君がいなかったら、きっとくじけていたぶ
ありがとうだぶ、吹雪、頑張るぶ」
「いい子ダヨーン、さぁ明日は出発だし、今日はもう寝るず」
「ふふ、いずく君、今とてもダヨさんに似てたぶ」
「おやすみ、吹雪」
「おやすみ、いずく君」
そして、夜は明けてその日になりました。
お迎えの馬運車とみんなもやってきます。
その様子はとてもにぎやかな物でした。
そんな中……
「ふぶき……」
「いずく君、どうしたぶ?そろそろ行ってくるぶ」
「ふぶ、やっぱり別れたくないず。一人は寂しいず」
おやおや、いずく君。昨日までは自分が「お兄さん」をしなきゃと、とても頑張ってきたけど、やっぱりお別れは寂しいみたいですね。でも、時間は刻一刻と進んでいきます。
「いずく君、僕は大丈夫だからぶ?ぼく、思い出したぶ。ママから聞いた
お姉ちゃんとお兄ちゃん達の話を」
「吹雪の姉ちゃんと兄ちゃん?」
「そうだぶ、いずく君のお兄さんもいま、競馬場での駆けっこでとてもみんなの人気物ぶ。吹雪も、負けないように頑張るって決めたぶ!そうしてたら、また、そこでいずく君と会える気がするぶ、もちろん負けないぶ」
「吹雪、強くなったね。うん!おれも母ちゃんから聞いたず。競馬場で一緒に走るず、おれも負けないず!」
「あっ、記念写真撮るみたいぶ、並ぶぶ?」
スリスリ
「いず……くすぐったいず!みんながみてるぶ」
「吹雪、俺も、あとからだけど頑張るず。絶対、俺の事、
忘れちゃダメだからず!」
「忘れるわけないぶ、約束だぶ」
「うん、約束ず!」
「じゃあ、いってくるぶ」
「うん、頑張るダヨー!」
「じゃあね、いずく君!」
パカッパカッパカッ……
お兄さんに引かれ、馬運車に向かうその足音はとても、たくましくそして頼もしく聞こえました。
少しだけ春の足音が聞こえた気がします。
2人の物語は始まったばかりです、これからもずっと見守ってあげたいですね。
私も競馬場で待っているからね!吹雪おめでとう。そして、いずく頑張って!
こんな物語が今日も、色々な所で繰り広げられてるのでしょう。この世界の事
もっともっと見ていきたいですね。
つづく
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