番外編・たかおと芦毛のお姉さん

僕の名前はたかお。秋からこの牧場に風子ちゃんとお世話になっていて

吹雪君やいずく君と仲良しになって、毎日楽しく遊んでいたのだけど……


ボク、はしゃいじゃったり、みんなと遊びたくてテンション上がっちゃうから

今はずっと、このサンシャインパドックにひとりでいるんだ……


近くにお友達は見えるのだけど、無理をしたらいけないからこの狭い柵の中にひとりぼっち。するとなんだか寂しくなって……


「ピエーーーン」


どうしても、泣きたくなっちゃうの

やっぱり一人は寂しいよ……


「ピエーーーン」


今日もみんなに気づいてほしくて、一生懸命鳴いていると……


「うるさいでちね、ちょっと静かにならないでちか?」


お隣のパドックに、灰色が綺麗でまるで銀色の髪の色のお姉さんから

そう声を掛けれたんだ。


「あ、はじめまして、ボクたかおです」


ボクはそう勇気を振り絞って返事をすると……


「まだちっこいでち?あたちはクールフォルテっていうでち。この牧場に最近、帰ってきたでちよ」


「くーるふぉるて?」


ボクはかっこいいけど、あまり聞きなれない名前に思わず、聞き返すと

お姉さんは少し呆れた顔をしてこう言ったの。


「競走馬としての名前でち、みんながいっぱい考えてつけてくれたでちよ。

君は、まだ0歳でちから、ついてないと思うでちけど、そのうちつくと思うでち」


「きょうそうば?それってどうやってなるんですか?

ボク、なにも知らなくて……」


「何もしらないでちね?仕方ないでち、くーるお姉さんが教えてあげるでち」


僕はお姉さんから、僕たちサラブレットは大人になったら、みんな競走馬を目指す事、そしてその世界はとても厳して、お姉さんもたいへんだった事や頑張ったことをいっぱい教えてくれたよ。


「す、すごいですお姉さん。僕も大きくなったらなれますか?」


「うーん、まずはその泣き虫を直さなきゃでちね、勝負は気合でち!」


「そ、そうなんですか……」


そして、しばらくお話をしていると、お迎えがきてお姉さんは先におうちに帰っていったんだ。

僕も迎えが来て、今日はとても楽しかったから時間がとても早く感じたよ!



「ピエーーーン」


次の日、お姉さんがいなかったので、また寂しくて鳴いていたんだ。

すると、お隣から声がして。


「また鳴いてるでちか?そんなんじゃ一人前の競走馬になれないでちよ?」


「あ、くーる?なお姉さん、今日も来たんですね!」


「わたちの事はくぅ姉さんと呼ぶでち、みんなくぅってわたちを呼んでるでち」


「はい、わかりました!くぅ姉さん!」


なんだか、お姉さんができたみたいで嬉しくて、僕は元気に返事をしたよ!



それから、くぅ姉さんは小さい時の事や、幼なじみの男の子の事、あと、隣の放牧地にいるお母さんのお話をしてくれて、少しだけ羨ましく思った。


僕もお母さんに会いたいな……


ふと、産まれた本場の事を思い出して、また少し悲しくなって

そんな顔をしていたら、くぅ姉さんがこう言ったの。


「どうしたでちか?元気をだすでち、ここの人間さんはみんな優しいでち。それに、とても居心地がいいでちから、たかおも元気だすでち?」


今まで、ちょっと怖そうに思ったくぅ姉さんが優しく言ってくれたので寂しさと、嬉しさで思わず、また泣きそうになったけど……


「鳴いちゃダメでちよ、くぅ姉さんが見てるでちからね?」


くぅ姉さんにそう言われて、僕は泣くのをぐっと我慢したんだ。


気が付くと今日も、くぅお姉さんは帰る時間になって、僕は笑顔で見送った。ボク、ちょっと強くなったかな?



それから、しばらくして、季節は冬になって、今日もくぅ姉さんと話していると、


「寒いでちね、今日は雪が降りそうでち」


「ゆき?それってなんですか?僕、知らないです」


「寒くなると、雨が凍って白くなって、落ちてくるでちよ

ほんと、たかおはなにも知らないでちね」


「うん…… そういえば僕のお友達に、雪のついたお名前で吹雪君って子がいるんですよ!この間まで、あそこの厩舎に一緒にいました」


嬉しくなって僕がそう言うと、くぅ姉さんは少し驚いて


「吹雪でちか?それは、あたちの弟でち。たかお、吹雪の友達だったでちか?」


と言ったので、僕は、お隣の放牧地に吹雪君がいる事を教えてあげたんだ。


すると吹雪君も気づいたのか、こっちを見て


「くぅお姉ちゃん帰ってたぶ?初めましてだぶー」


と吹雪君もいずくくんも一緒に喜んで返事をしてくれていたよ。


そして、くぅお姉さんはとても、嬉しそうな顔をして、こう言ったの。

「りくの弟でちね、吹雪がいつも世話になってるでち」


いずくくんの事も知ってるみたいで、ぼくたち4人は少し遠いけど、この後いっぱいお話してとても楽しかったな。


でも、そんな嬉しい時間はすぐに過ぎて、お日様も傾いて今日もお別れの時間が近づいていると、くぅ姉さんの言っていた、雪が降ってきたんだ!


それはとても綺麗で僕も感動して、思わずまた、泣きそうになったけどここは、我慢!泣いたら、またくぅお姉さんに怒られるもんね。


「ほら、これが雪でちよ。吹雪ったら、雪に喜んであんなにはしゃいでいるでち、まだまだお子ちゃまでちね」


くぅ姉さんも、吹雪君たちを優しい目で見つめていて

お姉さんなんだなって思ったよ。そして、僕も早くみんなと遊びたいなって、

そんなことを考えていると今日も、優しいお兄さんたちが、僕を迎えに来てくれて

くぅお姉さんに「また明日!」って元気に挨拶できたんだ!


そして、僕はおうちに帰るとお母さんに久しぶりに手紙を書いてみたよ。


「お母さんへ。僕ずっとひとりぼっちだったから、寂しかったけど、

今はくぅお姉さんとお友達が、側にいてくれて、また明日お話したいなって、思えるようになって、この頃毎日が楽しいよ!


そして、僕もいつか、くぅ姉さんみたいな、強い競走馬になってみんなが応援してくれるようなお馬になりたいって、目標もできたよ。


そうそう、くぅお姉さんが、もうすぐクリスマスっていう、サンタさんがプレゼントをくれる日が来るって教えてくれたの。


僕はサンタさんに弱虫じゃなくなる「強い心」をくださいってお願いしようと思ってお手紙を書いているよ。


明日はくぅ姉さんとどんなお話をしようかな?

お母さんも元気でね。」



つづく

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