第5話 強盗?
会社の人たちも事情を聞かれて、多分江田君の不倫相手の旦那が嫌がらせしてるんじゃないか、と誰かが言ったようだった。
「前に派遣の女性と交際なさってましたよね?」と、警察に尋ねられた。
でも、旦那はタクシーの運転手だからバレてないと思うと、俺は話した。
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会社では、あの派遣さんが殺されてるんじゃないか、とみんな盛り上がっていた。彼女は同性から嫌われてたらしい。本当に亡くなっているかもしれない、と俺は心配だった。目を閉じると彼女の裸が浮かんでくる。俺を大げさにほめてくれる明るい声色。愛はないけど、彼女のことが好きだった。
警察の人に怒られるかもしれないけど、彼女にメールを送ってみた。そしたら、すぐ返事が来た。
『今すぐ会いたい』って。
『無理だよ。会社にバレちゃってるし。減給とかになったら困るから』
俺は送った。
『愛してないの?』
『ごめん』
俺はそのまま仕事を続けた。後は警察が何とかしてくれる。
でも、仕事なんか手に着かなかった。書類の同じところを何分も見ていた。
警察から連絡来ないかな・・・俺は電話を待ち続けた。
***
夕方くらいに、会社のエントランスで女の人の悲鳴が聞こえた。
「ギャー!!!」
「警察呼んで!!!!」
多分、総務のおばさんだ。エントランスはセキュリティがあるから、応対に出て刺されたんだ。
声の調子から、尋常じゃない事態が起きていることがわかる。みんなで顔を見合わせたが、誰も出て行かない。隣の人が冷静に110通報していた。
「強盗です。今すぐお願いします!殺される!」
ドアの近くに座っている人が、オフィスのドアをキャビネットで塞いだ。
出て行ったらヤバイことはそこにいる全員が気付いたいた。
俺は咄嗟に机の下に隠れた。旦那がこれから部屋に入って来て、俺を探して歩き回る。それで、俺を見つけて刺すんだ。きっと殺される。俺は恐怖でそこから一歩も動けなかった。
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