第4話 ギフト

 仕事帰りに奥さんとラブホテルに行ったんだけど、俺もまんざらではなかった。とにかく明るくて、いっぱい褒めてくれる。めちゃくちゃ感度がいい。まるで、風俗に行ってる気分だった。やっぱり人妻はいいなと俺は思った。


 しかも、あっちがホテル代を払ってくれるから、3ヶ月くらい続いていたんじゃないかと思う。お互い完全な遊び。俺がそんな人と結婚するわけないし、あちらもそれはわかってる。


「何でタクシーの人と結婚したの?」

「元はサラリーマンだったけど、人間関係が嫌でやめちゃって」

「前は何やってたの?」

「〇〇って会社の営業」

「え!もったいない」

 その頃、業績がよくないと聞いていたけど、一応、大企業だった。

「タクシーの運転手って、時間不規則だし、体に悪そうだよね」

「でも、会社で働くのが嫌なんだって。そのうち、個人タクシーやりたいって」

「食ってけるの?」

「知らない」

「旦那好きなの?」よく別れないなと思った。俺から見ると夫婦って不思議だ。

「たまにはね」

「その人、結婚に向いてないね」 

 俺は正直に言った。


 会社では俺と派遣さんが不倫していると、噂になっていた。それで、女の方は契約を切られてしまった。仕事をやめた後も、彼女は俺に会いたがったけど、俺は会社の上司に怒られて断った。


 それからしばらくして、ある日、会社に俺宛の荷物が届いた。差し出し人の名前が書いてない。定形外郵便で、白いコピー用紙が周りに貼ってあった。一見して異様な荷物だった。肉が腐ったような変な匂いもしていた。


 恐る恐るカッターでセロハンテープを外していった。剃刀なんかが仕込まれているかもしれないからだ。


 そっと、箱を開けて見ると切り取られた指が一本入っていた。色は土色。腐敗して汁が出ていて、開けた瞬間、大きなハエが飛び去った。


「うぁわ!」

 俺は悲鳴をあげてしまった。


「江田君、どうしたの?」


 隣の席の人が尋ねた。中途で入った40くらいのおじさんだった。よく雑談していて仲が良かった人だ。


「いや、なんか変なものが届いて」


 その時は、何故そんなものが来るか分からなかったから、不安になって隣の人に言った。


「どれどれ・・・うわ!なんだこれ!指じゃないか。警察届けた方がいいよ」


 その人は野次馬根性丸出しで、110番通報した。警察がやってくるまで、俺の机の上には蛆の湧いた腐った指が置かれたままだった。小さなオフィスだったから、会社中の人たちが集まって来た。


「何だろうね?」

「あれじゃない、、、指切りげんまんってやつ」

「江戸時代の遊女が旦那に小指を送るってやつね」

「すごいじゃない、江田君」


 その指は警察が持って行ってくれた。

 でも、しばらくオフィスが臭かった。窓が開かない構造だったから最悪だった。


 俺は警察に事情を聞かれたけど、心当たりがないと答えた。その時は本当に思いつかなかったんだ。


 それから一週間後、俺宛にお菓子の箱が届いた。ヨックモックとかのよくある箱菓子だった思う。別に嬉しくはないけど、みんなに配ろうと思って箱を開けたら、また缶の中に指が入っていた。完全に腐敗して目に見えるほど大きな蛆虫が湧いていた。


 今度は、俺自身が110番通報した。


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