第3話 不倫相手

 今までで一番最悪だったのは、20代の頃知り合った女の旦那だ。奥さんは派遣で、旦那はタクシーの運転手だった。タクシーの運転手は早朝出勤して、日付が変わる深夜まで勤務することが多いらしい。それで、その日は休みというシフトが一般的だ。だから、奥さんは旦那が出勤中は暇で自由な時間がある。その人は子どももいなくて、暇を持て余していた。

 年齢は30代半ばで、旦那は不安定な仕事に就いていて、子どもはできないなどの事情が重なって、やけを起こしていたみたいだった。韓流ドラマにはまったり、バンドのおっかけをやったりしてたけど、若い男と不倫して羽目を外したかったみたいだ。


 会社で飲み会があった時に、その人が強引に俺の隣に座って来た。俺は20代の独身でモテてたから、俺の隣に座りたそうな女の子は他にもいた。

 でも、その人が隣だから仕方ない。俺は愛想よく接していた。その時、初めて色々なことを話したけど、旦那がタクシーの運転手だということや、夜、家に1人だということしか記憶に残っていない。地方出身で、短大卒。派遣社員だから友達があまりいなかったらしい。短大卒で自宅から通えない人はいい就職先にはありつけなかった。その人も、不本意な就職先が嫌になってやめてしまって、派遣で働いていたんだ。


 こんな人に惹かれる男はあまりいないだろうと思う。

 でも、わりときれいな人だった。華奢でスタイルがよくて、俺がいた小さな会社にはちょっともったいないくらいだった。一見すると不倫するような人には見えない。俺は決して乗り気ではなかったけど、ホテル代払うと言われたのでついて行くことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る