第1話 2頁

 家に帰ってから、弥生は学校で話のあった三者面談の用紙を手にしていた。

 適役は影近だが、何せ、いつどこにいるかわからないのに頼めない。爺さん。いやだめだ。勝と穣も論外だった。残すは兄だが、弥生はため息を付いた。

 神無兄さんは、学校あるし、そもそもあんな感じだ。

 もう一人は、俺に興味ないしな。 

 弥生は、皐月の事は最初から除外していた。


「あー、もう!めんどくせぇ。」


 弥生は更に不機嫌になった。お腹が空いている事に気付いた。すると、丁度下の台所から、夕飯の支度がされている様で、いい匂いがしてきた。作っているのは、あの台所係だ。

 弥生は尚更に不機嫌になった。

 一階に下りて、冷蔵庫は台所の入ってすぐにあった。

 弥生は入ろうかどうか迷って中を窺う。中では、やはりかなめが料理中だった。

 いつもいつも、よく料理なんて出来るな。時間の無駄だろ。買ってくりゃ、もっと上手いし、楽だろ。

 弥生が呆れたように見ていると、相手が先に気が付いた。


「・・・?もう少し待ってね。今出来るから。」


「別に待ってない。」


 しれっと台所へ入って冷蔵庫を開け、すぐ食べられそうな物を探した。が、弥生が望むような物は特になかった。またイライラした。


「今度から、ぱんとか買っといて。」


「ぱん?菓子パン?」


「いいから、ぱん買っといて。」


 そう言って台所を出て、部屋に戻ろうとする。


「夕飯、もう出来るよ?」


「いらない!」


 イライラする事が重なって、意地になった弥生は言い捨てた。かなめは、きょとんとして、やりかけの鍋の方に注意を戻した。

 弥生に対して、一回り以上年齢も違うため、普段からのあの態度は、あまり気にしていなかった。


「今日は一段と、尖ってるな~。」


 かなめは味見をしながら、うん、と頷く。味付けが上手く出来たらしい。

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