9-3作品目 勝った!第一章完!

(感謝しろよ。お前が死なないためにも俺が自ら助けるのだから。


人格侵入エクスチェンジ・ハート】)




『……ここは?』


『あ、キリムやっほー』


『おう、ガヴか。ってことは……』


『うん、上手くいったよ。ほら』


 ガヴが指さした方向にはモニターのようなものがあり、それは俺……いや、俺の体の視点になっていた。


「……っ!お前、ただの学生じゃないな!?」


「いや、ただの学生だぞ。少なくとも、この体は


 にしても、術の使い過ぎは体への負担が大きいな……。さっさと仕留めるか」


『……圧倒してんなー』


 一方的に魔術や体術で攻撃を続けるハーデス。単純作業をこなすかのように見える。


『体こそキリムのだけど、冥府の王だからね。あれくらいできないと務まらない立場でもあるんだよ』


『人が相手にするもんじゃないよなぁ……まぁ相手は学生よりもは強い人なんだろうけど相手が悪かったな!』


『さっきまで「俺が守る〜」的なこと言ってたのに恥ずかしくないのかなぁ』


 苦笑いしているガヴは俺を見つつ、そんなことを言う。


『正直恥ずかしいが、今の俺では絶対勝てないからな!諦めて次の敵には勝てるようになるさ!』


『熱血なんだか外道なんだか……あ、終わったっぽいよ』


『お、ホントだ』


「さて……戻るか」




「……あ、来た来た」


 テルがちゃんと通報してくれていたおかげで、女性店員さんも無事で、なおかつ安全にカイを引き渡すことができた。


「キリムくん……いや、逃げてもやられてたかもしれないけど、確かに君が勝ったから君の判断は正しいことになってはいるけど!自分の身を案じて行動しなさい!」


「うっ、はい……」


(なんかこれじゃあラノベというより少年誌の主人公だね〜。って、ハーデス寝てるし……)


(……ZZZ)


「あの子のことも心配させてるし……ほら、謝って来なさい」


 ポライトさんはテルを指さして言う。確かに、めちゃくちゃ心配させたもんな……。


「あ、終わったら事情聴取だからねー?」


「はーい」




「テル、勝手なことしてほんとにごめ……!?」


 謝ろうとしたら、テルが突然抱きついてきた。


「バカ……アホ……」


「……ごめん」


「もし死んでたらどうするんですか!マヌケ!」


「でもテルのことを守りたかったし……」


「でもも何もない!私を守りたいんなら、一緒に戦ったほうが勝てるかもしれないでしょ!このあんぽんたん!」


「言いたいことはわかってる。ほんとにごめん。困ったときはできるだけお前を頼……」


「絶対!できるだけじゃなくて、絶対!!」


「……絶対頼るようにする」


「……ん」


 そして、数秒が経った頃にテルがまた一言。


「……ありがとう、助けてくれて。カッコよかったよ」


「いや、カッコ悪いよ。俺はまだまだ弱いし。


 だから、今度またピンチになったときは絶対カッコつけて助けてやるからな!」


「ふふ、キリムらしいです」


 テルのその笑顔は、テルのことが好きなことを改めて認識させる……そんな笑顔だった。


――――――――――――――――――――――


第一章 完


次回へ続く

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