3-3作品目 ロリ、襲来


ガラガラガラ………


「そろそろ移動しろよー。お、もう仲良くなってるのか。最近の若いのは打ち解けるのが早ぇな……ん?そこのマフラー、どうした?泣いてるのか?」


「せ、先生……何でもありやせん。全部自分が悪いです。キリムさんは一ミリも悪くありやせんから。あとマフラーはやめてくだせぇ」


「待て、俺はお前にからかわれたあと殴り飛ばそうとはしたが我を忘れた覚えはないぞ。勝手にナレーション的なこと挟むな。厨二病なのか、お前は」


「んー、良く言われやす」


「なるほど」


 ナレーションを挟まれて一瞬俺が主人公とバレてるのかと思ったが、どうやら杞憂だったらしい。


「よし、じゃあ移動始めろー。俺はこのクラスの担任だからな。後はお前らのクラスの担任に従え」


 ガラガラガラ……


 次々と生徒たちが廊下に出る。出る量には劣るが、人も少しずつ入ってきている。Ⅵ組の生徒のようだ。


「移動しやすよ、さっさとして下せぇ」


「はいはい……」


 どうやら、Ⅲ組にはがいるっぽいな。遅刻したりで待ち合わせもすっぽかしたからな……お怒り案件だ。


 殺されそう……。




「ここがⅢ組か」


「いちいち声に出さなくて良いっすよ。なんですか、思ったこと声に出す厨二病ですか」


「違ぇよ」


 多分ここにはがいる……おこられる……ヤバい、ガヴリエルに威圧されたとき並に身体が震えてるよ……。


「いやいや!教室はいるだけでそんなに緊張しやすか!?」


「大丈夫だ、ニケ。ここを開けたらちょっと死ぬだけだ」


「そうですかい。なら安心でき……やせんよ! 何で教室入るだけで死ぬんですかい!?阿呆?キリムさん阿呆?」


「そんなに阿呆阿呆言うなよ……弱く見えるぞ」


「何でそんな震えてる人が藍染○右介のマネしようとしてるんっすか!やっぱり阿呆っすよ!ほら、さっさと入りやすよー」


「あっ!ちょ」


ガラガラガラ……


 俺はアイツに見つからないようにまずしゃがんだ。その後、顔を確認されないよう腕で顔を隠し、ニケの後ろに隠れる……完璧だ!!


「あ、キリム。来てたんですね。待ち合わせには来なかったのに」


………ただし、後ろからの呼びかけへの対策はゼロである。



 テルメラン・オプタクス。


 俺と同い年で隣の家に住んでいる、俺の幼馴染み。雪のような白い髪、空を思わせる瞳。年齢と身長が全くそぐわない、ロリっ娘でもある。


 また、彼女は喋り方が少し変わっていて、話している時時々敬語が混ざるときがある。


 そして彼女の能力なのだが……



「何で集合場所に来なかったの?」


「……寝坊したからです」


「嘘はついてないようですね。まぁ、今回は許すよ」


「あ、ありがたき幸せ」


 彼女の能力、それは―――――《神眼セイクリッド・アイズ》。


 眼系能力のトップで、持ち主の適性や実力にもよるが、理論上眼系能力の全てを使えるという、チート能力。俺が彼女を恐れる一番の理由。


 普通、主人公がそういう能力を持つはずなんだが……


 今、テルメラン……テルが使っていたのは《真偽眼サード・アイ》。嘘を見抜く眼だ。今回は怒られずに済んだが、本気で怒ったテルは無心で能力を使ってくる……よく俺生きてるな、ホント。


「ふむ……可愛い。この娘はキリムさんの彼女ですかい?」


「そそ、そんなんじゃねぇよ」


「そうです!違いますっ!」


「ふーん」


 マフラーをしてるにも関わらず、ニヤけてるのがバレバレなニケ。非常にムカつく。


「あ、自己紹介がまだでしたね。あっし、ニケ・ルミナス(以下略)っす。気軽にニケ呼びで宜しくっす」


「テルメラン・オプタクスよ。宜しくね、ニケ。私のことも気軽にテルって呼んでね」


 優しい空気だ。こうやって知り合いが増えていく、これが幸せなのかな?俺みたいな奴が言ったらただの厨二病だけど。


「平和だな」


「平和ですな」


「…」


 横を見る。隣には笑顔のエルミ。何故こうもムカつく顔が上手な奴が周りによく集まるのか……


 エルミは俺を一瞥いちべつし、そのまま教卓の前に立った。


「さて、そろそろ全員揃ったかな?……うん、揃ってるね。それじゃあ、大事なプリントとか配ってくよー。……え?自己紹介とか?んー、明日ね。今日は皆疲れてるだろうし……考えてない人もいるかもだしね」



 こうして。高校初日は幕を閉じた。


 これからきっといろんな奴らに出会うんだろう……



「俺たちの物語は、ここからだ!」


――――――――――――――――――――――

序章 ~入学式篇~ 完


次回へ続く

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