3-2作品目 ニケがウザいキリムの話

Ⅵ組


「えー、ここにクラス分けの表貼っとくぞ。じゃ、俺は準備とかあるから10分後ぐらいに移動しとけ」


 ガラガラガラ……



 先生が去り、教室に静寂が戻った。


 クラスには入学してすぐだからなのか未だに緊張してる者や、話しかけたそうにしているが中々話しかけれない者、そして――



「キリムさん、キリムさん。あっし達、同じクラスですぜ。Ⅲ組ですです」



 ――こんな空気を気にせず、話しかけてくる者がいる。


「お前なぁ、周りが静かなのに話してたら目立つだろ?暇ならフィボナッチ数列でも作っとけ」


「目立ちたくないんですかい?それとフィボナッチ数列は飽きやした」


「そりゃ、何か凄いことをしてなんかじゃない、悪目立ちに近い形で目立つんだからな」


「にゃるほど。しかしあっしの真意に気づけないとはまだまだですね」


「流石とか言ったりまだまだと言ったり……忙しいやつだな」


「良いんですよ。それより、あっしがキリムさんに話しかけた本当の理由っす。フィボナッチ数列より凄いですよ」


「ほぅ?フィボナッチ数列より凄いのか」


「じゃあ、発表するっすよ。あっしの真意は……」


 周りの生徒も若干どんなことを言うのか気になっているのか、ニケの方を見ている。


「それは……」



「あっしらが積極的に話すことによって周りの人達も話しやすい空気を作りたかったのだ!!」



「意外と真っ当で優等生な理由!?」


 ニケは自分の椅子に立って、両手を挙げている。例えるならワ○ピースの第一巻のル○ィのポーズだ。


「でも結局ここにいる人たち別々のクラスになるんだろ?」


「別のクラスにコミュニティを作るのは悪いことではないはずですぜ」


「確かに俺も経験はある……同じクラスのやつとしか話してなかったせいで、友人の話についていけなくなったり……」


「あー俺もあるわ、それ」


「私も……」


「そもそも僕は同じクラスにすら友達いない陰キャ勢ですけどねwwwデュフwww」


「リアルでデュフって言ってるやつ初めてみた……面白いね、君」



 わいわいがやがや……



「……作戦通りっすね」


「だな」


 実はこの作戦、俺とニケはグルだったのだ!先程俺が述べたことは事実で、同じクラスでも、違うクラスでも、みんなには仲良くしてほしかったからな。


「で、どうせみんなに仲良くなってもらう以外の理由もあるでしょ?キリムさん」


「どうせとか言うなし……まぁ、あるぞ。俺も他のクラスの知り合いが欲しかったからこんなことをしたんだ。友人の話についていけなかったのは事実だしな」


「しかしながらキリムさん」


「みなまで言うなニケよ」


 そう、俺たちが先導して話すのは良かった。


 が、先導したことによって少し近寄りがたい感じになってしまい、誰にも話しかけられないのだ。


「……結局、俺は友達が居ないんだな」


「そんな顔しないでくだせぇ。笑ってしまいやす」


「殴られたいのかな?」


「いえ、慰めてるんです」


「人の落ち込んだ顔で笑っておいて慰めてるは無いだろ」


「いえいえ、ホントに慰める気はあるんっすよ?だってあっし達……」


「ニケ……お前って奴は……」


 ヤバい、少し泣きそう。こいつ、俺のこともうそんなに……


「出逢って数十分の仲でしょ?あ、今『友達だろ?』って言ってもらうの期待しやしたよね?ね?ね?」


「」

 

「人は怒ると周りが見えなくなるという。そして、我を忘れるほど怒ったものは自分が何をしたか覚えてないともいう。そう、俺は何も覚えていない。覚えているのはニケの死ぬほどムカつく笑顔(マフラーで口元は隠れているが)と、ニケの泣き顔だった。」


――――――――――――――――――――――

次回へ続く

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