6-3作品目 兎人 ~カフェの店員~
「「ごちそうさまでした 」」
俺とテルはほぼ同時に食べ終わる。その声を聞いてか、イムナさんがこっちに来て「また来てね!」と元気に言った。
「イムナさん、洗い物もしてくださいね?」
「わかってるって。だからそんな目で見ないで!」
聞く限り、洗い物をしないことがあるっぽいな。カフェの店員ってのになんなんだあのイムナさんって人は……。
「合計で1080マテルです」
「じゃあキリム……」
「言っとくけど、割り勘だぞ?」
「チッ」
「今舌打ちしなかった?ねぇ?」
俺はテルをそんな子に育てた覚えはありません!……育ててもいません!
そんなことを考えつつ、きっちり540マテル出す俺。あ、1マテル1円って考えていいぞ。
「はい、ピッタリもらったよ。また来てね」
「「また来ます」」
キッチンから「絶対だよー」と聞こえたので返事をしようとしたが、シルラさんがキッチンへ向かったので、任せることにした。
食べ終わったらもちろん店から出る。それは当たり前。しかし、店の出入り口で樽を抱えた男性がいたら出れないよな。
「おっと、すみませんお客様」
礼儀正しく謝罪しているこの男性……
顔 イケメン
髪型 アホ毛
腕力 凄そう
……。この人ラブコメの主人公か何かかな?
「いえ、良かったら手伝いましょうか?」
「そんな!お客様にそんなことさせるわけには……」
「あ!カラおかえり!手伝う手伝うー!」
「ちょっ、イムナさん!って、カラさんおつかいありがとうございます」
「いやいや、俺の店のためだからねー」
ふむ、何やら優しそうでもある。イケメンなんて外側だけが良いと思ってたのに……こんな人もいるんだな。
樽も退け終わり、俺達はこの店を後にしようとした。すると、テルが振り返り……
「店長さん、美味しかったです。ごちそうさまでした」
ペコリと頭を下げた。この人が店長だったのか?……あっ!俺の店って言ってるじゃん!
「わざわざ丁寧にどうも〜。是非またウチに来てください」
「はい!」
テルの元気な返事が聞こえる。店長さんもその声に「おお……」と謎の驚きを見せていた。
「それじゃ、今度こそ行「ちょっと待ってください」
今度は何だ?そう思い振り返ると、シルラさんが月のワッペンを手渡してきた。
「これを彼女に渡してください。貴方からのプレゼントとして」
「……何故、ですか?」
「彼女が危ないかもしれないから……でも、私が渡してもアレだし、貴方にお願いしたい」
「よくわからん……が、わかった」
「キリムー、早く行きましょー」
後ろからテルが話しかけてくる。まだ聞きたいことあったんだがな……。
「詳しいこと聞きたいなら、また今度店に来て」
「……あぁ、わかった」
俺は急いでテルの元へと向かう。
「じゃ、行くか」
不穏な雰囲気を醸し出しながらデートは続く
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次回へ続く
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