2-1作品目 ガヴリエル様(とハーデス)は見ている

モブ「今北産業」

俺氏「走った

   遅刻した

   2行で十分だった」



 モール先生と話してるうちにⅥ組についた。

ガラガラガラ……


「全員揃ったし、移動するぞ。番号順2列だ」


 俺は皆にジロジロ見られながら並んだ。初日から遅刻した俺を不良とでも思ってるのかもしれん……


「ん、あっしの隣は不良さんですかい…」


「不良じゃぁないぞ」


 隣を確認するとそこには、ロップイヤーのような癖がついているピンクの髪、タレていて少し幼さを感じるエメラルドグリーンの瞳…そして何よりも目立つのは……


「あのさ……」


「なんですかい?」



「何でマフラーをそんなに深く巻いてるんだ?寒いのか?」



「いえ、あっしはマフラーで口を隠さないと落ち着かないんです」


「そ、そうなのか……なんか忍者みたいだな。見た目とか、喋り方とか」


「よく言われやす。能力名も《忍術》ですしねー。

 なんかうちの家系能力が《忍術》な人が多いんっすよ。だから、小さい頃から忍者として教育されてこんな喋り方ななったんすよ」


「……なんか大変そうだな」


「忍者修行はキツかったけど楽しかったし、そんなに大変ではないかもですねー」


「そういうもんなのか……」


「ええ。……さて、そろそろ名乗らせていただきやす」


 どうやら俺は自己紹介より先に会話をするタイプの様だ。今初めて気付いた。



「あっしの名はニケ・ルミナス・ハルモール・カ・カリフ。気軽にニケと呼んでくだせぇ」



「キリム・レイターナだ。宜しく」


「こっちこそ、宜しく」


これが俺とニケのファーストコンタクトだった。





「えー、只今より……………」


 入学式が始まった。正直どうでもいいと思うから割愛してもいいが、どうせならこの時間を『何故俺が主人公なのか』の説明に使うとしよう(俺も考えが整理できるから一石二鳥だな)。


 ということで、回想の始まり始まり〜。





「……ここは?」


 俺は森にいた。例えるならゼ○ダの迷いの森の様な森だ。


 静かな風が吹いている。少し冷えているが、気温や木洩れ日も相まって心地よい。……ん?


「もう朝なのか? にしては木洩れ日の向きが……」


 どうなっているんだ? これは夢なのか? にしてはリアル過ぎるが……


(何もわからないし、周りを探索しよう……)

 

 辺りを探索して色々と見つけることができた。まず、獣道ではない、人工の道の様なものがあった。その道を進んでいくと街のようなところがあったので、行こうとしたのだが……


 謎の透明な壁に阻まれた。


 なぜ壁があるのか、どのくらいの高さで、登れたりするのかなど、色々と気になることもあったが、取り敢えず来た道を戻り、反対側の道を進むことにした。


 進んでいくと、石盤のようなものがあった。そして今に至る。


「これは……何々? 『大天使ガヴリエル、冥王ハーデス、ここに眠る』……。


 何で大天使と冥王を同じ墓に入れてんのさ!? どんな神経してんだよ、これ造ったやつ!!しかも宗教違うじゃねぇか!!どうなってんだこれ!!」


「うるさいなぁ……。ちゃんと理由があるんだよ……」


「っ!? 誰だ!!」


 ……返事がない。今のは一体? 女性の声のようだが……


「いるなら返事をしてくれ。お願いします」


「イナイヨー」


「いるじゃねぇか!!」


「……」


「あっ、また黙った……まぁ、いるのはわかったか。じゃあ、ここは何処かわかりますか?」


「迷いの森」


「嘘だッ!」


 意外とこの人ノリが良い……。ふむ……それなら。


「キサマっ!キサマの名を教えるのだ!さもなくばこのキリムの侮蔑を免れぬと思えッ!」


「フフフ……貴殿に聞かれたなら答えるしかあるまい……」


 そう言うと同時に、目の前に光が生じた。それと共に白い羽が舞う。その光はだんだん人の形となり、遂には完全な人となった。


 黄金のようなロングヘアー、全てを見通しているかのような碧眼、そして……純白の翼。


「ここに居て、翼が生えている……まさかお前……」


「ちょっと待って、私の正体がわかったのにお前呼びって……最近の若者は全員こんな感じなの?」


「あ、えっと……すみません?」


 取り敢えず謝ってみた。


(確かにお前呼びは良くなかったな、うん。だが、この程度で許してもらえるか……)


「ん?別に謝らなくても良かったけど……まぁ、許そうではないか。これからもお前呼びでも良いぞ!」ドヤァ


「ウゼェ」


「!? お前本当に私の正体わかってるの!?」


「え、どうせガヴリエルとかでしょ?」


「な、何なんだこいつは……神経が図太いとい

うか、舐め腐ってるというか……」


「いや、たとえガヴリエルだったとしても今のドヤァはウザい。ガヴリエルさまじゃなかったら殴ってたわ」


「そのレベルだったか……すみませんでした?」


「よろしい。じゃ、またな」


「うん、またねー」


 こうして俺は元の場所に戻った。



「いや戻れないぞ。というか何をしてるのだ、ガヴリエルよ」



 少しピリついた男性の声。真上から聞こえたので、そちらを見てみる。


「いやー、ごめんごめん。ここに人が来るのは珍しいし、ノリが良い子だったからついテンションが上がって……」


「……フン」


 俺の上で1人の青年が浮いていた。純黒の髪と金色の髪飾り、漆黒の瞳、蝙蝠の様な暗黒の翼……


「今度はハーデスさまが出てくるのか。よくよく考えたら凄い状況だな。伝説上の人達?に会えるなんて」


「でしょでしょ? この出会いを記念してアン○ンマングミでもやろう」


「ありがとうございます」


「話が脱線し過ぎだ。本題に入るぞ」


「おっと、そうだったね」


 この後、二人のおかげで助かることもたくさんあったが、感謝したくない程にひどい二人だった……

――――――――――――――――――――――

次回へ続く

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