活路は自分で切り開くもの
ホームセンターに現れたゾンビたち。
人間は協力し、ゾンビたちを撃退していく。
残ったゾンビもあとわずかだ。一気に追い詰めていく。
(以下、日本語で記してますが、本当はゾンビの言葉で話しています)
「先輩先輩先輩! ヤバいヤバいヤバい……完全に囲まれてますよ」
「見りゃ分かるよ。あぁー、調子乗ったー」
「人間たち、意外とやりますね。あの銃みたいな奴なんっすか?」
「釘打ち機だね。空気やモーターで釘を高速で打ち出すんだよ」
「あんなもんホームセンターで普通に売っていいんですか? 凶器ですよ!」
「工具の一部だからね」
「あ、右側を攻めてたゾンビたち、やられましたよ」
「マジか~。あの子たちとは前に人間を襲ったことあったんだよね。いい子たちだったんだけどなー」
「血も涙もない狂人どもですね!」
「違和感はあるけど、この状況の中では君と同意見だよ」
「いつまでもここで隠れていても、追い詰められるだけですよ。どうしますか?」
「絶対絶命か……ごめんね。ゾンビ君。僕が変な気を起こしたばっかりに」
「先輩、諦めるには早いですよ! 俺たちはまだ、生きてます!」
「もう死んでるけどね~。今は突っ込みにも力が入らないよ」
「こりゃぁ、俺たちも打って出るしかないですよ!」
「いや、もう僕らがここに隠れてることはバレてるし、飛び出してくるのを絶対に待ち構えてるよ」
「先輩。諦めるんっすか?」
「いや、諦めるとかそういう問題じゃなくて」
「ある偉大な先生がこんな言葉を残してます。『諦めたら、そこで試合終了だよ』……ってね!」
「ってね、じゃないよ!」
「じゃぁ、ある軍人のこんな言葉もありますよ。『わが軍の右翼は押されている。中央は崩れかけている。撤退は不可能だ。状況は最高、これより反撃する』」
「……」
「……カッコ良くないですか?」
「めちゃくちゃカッコいいよ! 魂が震えたわ!」
「自ら前に進んだ者だけが、活路を開けるんです」
「初めて君のポジティブが頼もしく見えてきた!」
「虎穴に入らずんば虎児を得ずっす」
「確かに、そうかもしれない」
「奴らの注意が逸れた瞬間に俺が合図するんで、全力で奴らのラインを突破してやりましょう!」
「よし! 乗せられてる気もするけど、今は考えないことにする」
「……今です。先輩!」
「任せろっ!」
「あ、間違えました」
「アガァっ! バッッキャローっ! ゾンビ、テメー。この野郎! ふざけんなよ!」
「いやー。すんません」
「何、笑ってんだよ!」
「いや、先輩。フツーにキレてるんで」
「当たり前だろ! 四方八方から集中砲火浴びせられたんだぞ! 死にかけたわ」
「ヘルメットしてて良かったっすね」
「奇跡だった」
「今度は大丈夫です。今のでタイミングも分かりました。準備はいいですか?」
「ちょっと待って。さっきは思考が止まってて気付かなかったけど、なんで僕一人に行かせようとしてるの?」
「いや、俺は安全に行こうかなと思いまして」
「クソ野郎じゃねぇか! お前も必死に虎児を得に来いよ!」
「分かりましたよ。一緒に出ますよ……」
「なんで不服そうな顔すんのよ」
「でも、こうして追い詰められてると『明日に向かって撃て』のラストを思い出しますよね」
「ごめん、知らない」
「えー。名作っすよ。主人公たち、アウトロー2人組がラストで警察隊に追い詰められて建物に逃げ込む。お互いに手負いの状況でも、生きて逃げ切ることを信じて疑わない。周囲を完全に取り囲まれた中、2人は建物から決死に飛び出していく」
「へぇ~。確かに今の状況っぽいね」
「でしょ! 好きなんっすよね~」
「で、2人はどうなんの?」
「映画はここまでですけど。まぁ、たぶん死んだでしょうね」
「ん? 飛び出して……」
「はい、あれは生き残れないでしょうね」
「その話、今する必要ある? 今から飛び出そうって時にさ!」
「いや、今言わなきゃ、もう言えないかもしれないんで」
「メンタル、超人かよ! 君は満足しても、こっちは盛り下がる一方だよ」
「どうせ1度は死んだ身じゃないですか」
「ああ、そうか。確かに……とはならないよ! 思考が振り切れ過ぎてて戻ってこないよ!」
「じゃぁ、先輩行きますよ! 『次はオーストラリアに行こうぜ!』」
「何言ってるの? ゾンビ君? ちょっと、待ってー!」
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