ゾンビには、戦わなければいけない時がある

 ショッピングモールで人間の反撃を受けたゾンビたち。

 人間たちに追われて逃げる羽目に……



(以下、日本語で記されますが、本当はゾンビの言葉で話しています)


「俺、許せねぇっす!」


「ゾンビ君。どうしたの?」


「許せねぇっす!」


「いや、だから何が?」


「後から入ってきた奴らですよ。無慈悲にゾンビを一掃してましたよ」


「あぁ、機動部隊だね」


「まだ接近戦の武器は許せますよ。ギリで鉄砲もいいですよ。でも、マシンガンはないでしょ!」


「アサルトライフルだけどね」


「どっちでもいいですよ! こちとらステゴロで向かってるのに、あれはないですよ。卑怯です」


「成す術、無いからね」


「人間だった頃は、カッコいいなーって思ってましたけど、あれはないっすわー。俺たちには、対抗する権利もないんですか?」


「いや、君はゾンビに何を求めてるのよ?」


「俺たちだって、生きてるんですよ!」


「死んでるよ。ゾンビだからね」


「それを何の躊躇いもなく撃ち殺していく。人間達こそ、本物の化け物ですよっ!」


「君のその熱いテンションはどっから来るの? 君、ほんの数十分前までは人間だからね」


「いつなったかは関係ないです。ゾンビとして何を思うかが大事なんです」


「君の思考能力ヤバいよ! ゾンビの僕が言うのも変だけどさー」


「先輩、何とかなんないんですかね?」


「もう数で攻めるか、逃げるかだろうねー」


「飛び道具なー」


「なら、君も銃とか持てば?」


「そりゃ、ダメっすよ。ゾンビは飛び道具持っちゃダメって古今東西決まってますから」


「決まってないよ」


「そんな腰抜けは、ゾンビの風上にも置けない奴です」


「君は、どーしてそこまでゾンビ代表みたいな感じで言えるんだい?」


「あ、先輩。機動部隊ですよ。見てたらムカついてきたんで、俺、ヤっちゃってきますね」


「ちょちょちょちょいちょいちょいちょい! ゾンビ君。いきなりどーしたー?

ビックリしたわー。さっきの話聞いてた? なーんで1人で向かおうとするー?」


「いや、なんか。いけそうな気がして」


「自身のポテンシャルよー。なぜそんなにも澄んだ瞳で信じられるー?」


「俺、ゾンビですから!」


「言いたくないが、ゾンビはそんなに強くないよ!」


「奴ら子供(ゾンビ)を襲う気ですよ! あの野郎ー!」


「だから、なんで1人で? もはや無謀を通り越して、傲慢とすら感じるよ」


「いや、先輩もいましす」


「わぉ! 完全な道連れ」


「死ぬ時は一緒ですよ!」


「もう、死んでんだよ。あと、それを言うなら僕のセリフね」


「先輩。子供を見捨てて、のうのうと生き延びれるほど……俺、器用じゃないんで」


「うるせーわ! こっちはその影響で道連れにされかけてるんだよ!」


「ゾンビには、戦わなければいけない時があるとずっと思ってました。それがいつなのか分かりました。今です!」


「怖いわー。僕、君が怖いわー。あーぁ、ホントに行っちゃったよー」

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