第二章 3
「っ!」
(◯リー・ポッターの世界……!)
私は心の中で叫んだ。
部屋中があらゆる魔法具や武器、さらに何でコレが??みたいなあらゆる物(ティアラとかでっかい石のついたネックレスとか、果ては手鏡に櫛とかまである)で満たされていた。
それこそ高くて見通せない高い場所まで、うず高く積まれていた。
(うんうん、生き残った男の子が終盤髪飾りだかを探しまわった部屋、こんな感じだったよね……!)
そんな場合じゃないのだが、そんな感想を抱いて見渡してしまった。
「とりあえず、使えそうなものあったら好きに取って?」
はい?
「ここ、王室の保管庫ではあるんだけど、実際貴重な遺物とかもあるけど。殆どが今では用途不明、使用不可能なもの、外部に洩れたらいけないものなんかが集められた部屋なんだ__けど持つべき者が持てば役立つものも確かにある。だから、君の勘で好きなもの持っていくと良いよ」
「勘、ですか?」
「罪には問われないから安心して?数の制限もしないよ。君に委せる」
「っおい、アルフレッド……!」
「アッシュは黙ってて。他の皆もね」
「………」
(なんだろうこの雰囲気)
アリスティアは何故だか背中がぞわぞわする。
「ほら、固まってないで僕たちも!役に立ちそうなもの持ってくよ?!被害は最小限に防がないといけないんだからね!」
アルフレッドの言葉に私の動向を見張るようだった彼等が部屋のあちこちに散って行く。
私も息を吐いて物色し始めた。
とりあえず役に立ちそうなもの持ってけば良いのよね?
私は大きい割には軽い弓と、あのキメラに投げ付けたのと似たような魔法玉を持った。
あと一つ、妙に気になったのは対になった鏡と櫛だ。
何故か手鏡の裏に文字が書いてあるのだ。
〝Through me〟と。
〝私をスルーして〟て、なんかおかしい。
普通、鏡は手に取って見るものだ。
それを〝スルーして〟って……逆に気になる。
何だか前世で読んだ物語を思い出し、手に取った。
持っていくつもりはないがこれも魔法具には違いない筈だから、試してみても__いいよね?
と既に皆が扉に向かっていてこちらを見ていない事を確認した上で、す、と鏡を手に髪に軽く櫛を通してみる。
と、
信じられない事が起こった。
瞬間、仄かな熱を手の平に感じて目を移すと私の手に持っていた櫛が小さな薔薇が閉じ込められたクリスタルに変わっていた。
私が出て来ないのを不審に思ったアルフレッドが戻ってきた時には私はそれを魔法玉と同じく制服のポケットに滑り込ませていた。
なんとなく、そうするべきな気がしたからだ。
だって、説明しようがない。
あの櫛で髪を梳いた途端、手に持っていた櫛が何故かクリスタルに変わりました、なんて。
今は説明している時間も惜しいし仕方ない。
私達は地上へ急ぐ。
既に敷地外は騎士団が対応している筈だが、敷地内は王太子達生徒会に任されているらしい。
まあ、こんなに一気にわいて出てこられたら数が足りなくても無理はないが。
因みに生徒達が避難している場所は先生がたはもちろん、結界魔法が得意な生徒達が何重にも結界を貼り巡らせ何とかなっているようだ。
私達は地上に出て、まず一体目のドラゴンと対峙した。
既に王宮付きの魔導師団が対応していたのでこれはすぐに殲滅出来た。
二体目は一体目より小さかったので、これも双子王子の攻撃に
まず、魔導師団長を含む隊が吹っ飛ばされた。
次いでギルバートの隊が薙ぎ払われた。
ギルバート本人は一度合間みえてるせいか上手くやり過ごし無事だが、残る騎士は数人、無傷なのは私達だけという状態になるまでがあっという間だった。
ある程度近付かなければ攻撃が届かない。
だが、近付くのは危険過ぎる。
私は先程手にした魔法玉を取り出す。
「これを、風魔法で奴に飛ばして貰えますか?」
「出来るがそれでどうする?」
アッシュバルトが訝る。
「これが奴の頭上に到達すると同時にこの玉に向かって総攻撃して下さい。そこに、」
「
これも狙い通りに攻撃が当たり、皆が息をつく。
ホッとした空気が流れたところへ「殿下がた!」と今にも泡をふきそうな伝令が駆け込んできた。
「どうした?!」
ギルバートが伝令を支えながら訊ねる。
「じょ、城下に、ドラゴンが……!」
「何だとっ?!」
ギルバートが叫びかえすと同時にあちこちから〝伝魔法〟が飛んで来る。
「殿下!東の〜〜町にドラゴンが!」
「◯◯の所領地に複数の竜影が確認されたと報告が」
「△△候より領地にドラゴンが出現し、至急救援を求むと!」
__ひと息つく間もなくカオスになった。
慌てて再度各所と報告や指揮を始める彼等を横目に、
(各地にドラゴンって……それ 普通に私達に対応出来るものなの?)
そう思って足下に視線を移すとやはり脈うっているのが感じられる。
まるで何かが息をするように。
(これって__)
確かめる為に地面にしゃがみ込んで大地に手を這わせる私を、絶望感に苛まれていると勘違いした彼等に痛ましい視線を向けられたのは気付かずに、私は全身で大地の鳴動を感じとろうとした__その時。
ポケットの中に淡い光が灯った。
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