第15話 部活終わりは一緒に帰宅だよ?

「んぅ、李芳リーファン先輩。何?」

「うん、君に蔵書の整理を手伝っ欲しいのだが、邪魔しただろうか?」


先輩が俺の方をちらっと見て言う。

いえ、連れて行ってください。

そう言おうとする前に志緒理が言う。


「ん、綾斗の人探しを手伝う」

「ふむ、それは困ったな。今日の委員は君と私だけだからな……」


困った様に言うファン先輩。

いや、連れて行って良いですよ?

と、言う––––


「あ、あやと。いた」


––––前にアイリスが来た。

なんでさっきから俺が言う前に事が進まるのかなぁ?


「あなたは?」

「えと、アイリスと、いいます。きのう、てんこうして、きました」

「ん、噂の転校生か。綾斗に、何の用?」

「ふむ。神崎君の用事はこの子かな?」


うわぁ。こういう風に質問を受けると思ったから言いたくなかったんだよなー。


「あー、華神にはこの後街を案内しようかと。まだ引越したばかりですし、学校の周りを少々」

「なんで、綾斗?」

「まぁ、俺の家と華神の家近くてさ、それで」

「なるほど、そう言うことか」


嘘はついてない。一緒に帰るついでに街を案内するだけ。家は一緒に住んでるけど。

芳先輩は納得した様だが、志緒理は納得したけどしたくない、みたいな顔をしている。いや、どんな顔や。


「じゃぁ、そう言うことなので俺はこれで」

「えと、さよなら」

「あぁ、気をつけて」

「ねぇ、綾斗」


帰ろうとするとこを止められた。志緒理は側まで来ると耳に顔を寄せて言う。


「明日、事情聞く。お父さん絡みなのは分かったから、今日はもう言わない」

「えっと、拒否権を…」

「ない」

「えぇ……」


どうやら見抜かれていた様だ。

仕方ないと諦めてアイリスと帰路に着く綾斗であった。













「何の話をきていたんだい?」

「ん、何でも。強いて言うなら」

「言うなら?」

「綾斗に拒否権は無い。私の言うことは、絶対」

「……うん。君たち、仲良いね」

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