第13話 誤解は解けたので?

「助けていただきありがとうございます」

「いや、気にするは事はないよ」


部長の一言で撃墜された先輩達は、魂が抜けた様な顔をしながら準備に取り掛かりに行った。後で誤解を解かなくてはと思いつつ部長に礼を言うと、大した事ないとばかりに手を振って準備に取り掛かかる。

追求されないのはありがたい。

………勘違い、してないよな?



§



「開始は40分から」

「はい」「はーい」「うーい」……


礼拝を終えて、俺は練習の準備に取り掛かる。その前に––––


「おい」

「あ、神崎君。無事だったんだね。良かったよ」

「良かったよ、じゃねーよ。見捨てただろ」

「そんな事はないよー?」


薙亜を捕まえる。そして尋問だ。こいつ俺が囲まれた後、何でもないかの様に着替えていやがった。


「それよりさ、ほら。先輩方の誤解、解かなくて良いの?」

「分かってる。射殺さんばかりの視線がさっきから向けられてて、ちょっと怖い。だからお前も手伝え」

「え?僕も死地に行くの?やだよ?」

「うるせぇ。俺だけ追いやるんじゃねぇよ」


などと言い合っていると、見かねたのか、それともうるさかったのか、先輩が近づいて来た。


「ソロソロ、シズカニシテクレ。オレハ、キニシテナイシ、ホカノヤツモ、オナジダトオモウゾ」


そう言って来たのは、背が高い中国人の男子生徒だった。名前は張偉ジャンウェイ

片言の日本語だが、なぜか聞き取りやすい。謎なり……。


「あ、すみません。……いや、皆さん疑ってません?」

「ム、ソレハシカタガナイトオモウゾ。オレモ、キイタトキオドロイタカラナ」

「うーん、それは先輩だけでは?」

「ソウカ?」

「張先輩だもんねー。他の先輩方とは違いますね」

「おいおい、まるで俺たちが悪いみたいじゃないか」


そう抗議してきたのは、アーダルベント・エンデ先輩。ドイツからの留学生だが、親戚に日本人がいるらしく、日本語はペラペラだ。


「まるで、ではないかと」

「そんなことはないぞ!俺たちはただ純粋に天使様が気になっているだけだ」

「俺を囲んだ理由は?」

「それは、お前が天使様と話してるのが羨ましいからとかじゃないぞ………?」

「先輩、俺の目を見て言ってください」

「先輩、張先輩の言葉が台無しですよ………」


思いっきり目を逸らしながら言う。

なんか薙亜が肩落としてるけど、エンデ先輩が張先輩と似たような性格な訳ないじゃん。張先輩以外の先輩の誤解を解く作業は続くよ?

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