第11話 部活に行く前に、ですか?

ちょうど目が合った。すぐに逸らされた。

聞いてみるしかないか。その前に。


「なんでもない。先行っててくれ」

「そうかい?じゃあ、後でじっくりと聞かせてもらうよ」


そう言って薙亜は鞄を持って教室から出て行った。


「何話してたんだ?」

「いや、何でもねーよ」

「ほんとかなー?」

「疑うな疑うな」


予想通り聞いて来るか。いい加減行ってほしい。じゃないと、聞けないだろうが。


「ま、これ以上聞いても何も言わんと思うし、行くかー」

「そだねー。じゃ、私たちも部活行くね」

「んじゃなー」

「また明日」

「あぁ、また明日」


グランと美空も教室を完全に出て行くのを確認してから、なにやらまたこちらを盗み見ている隣の天使様に話しかける。


「で、何か用でもあるのか?」


そう聞くと、慌てて居住まいを正してこちらを見上げてくる。


「えっと……、ほうかごって、なにか、ようじ、ある?」

「あぁ、部活があるな」

「………そう」


質問に答えると、隣の席のテンションが急降下していった。


「どこか案内して欲しいとこでもあるのか?」

「あんない、という、より、も、その……」


「I wanted to go home to you 」

 (一緒に帰りたかった)


––– –––……危なかった。危うく叫んでしまうとこだった。なんなら転がり回るとこだった。


「んぁー、その、なんだ。終わるのは18時だから、図書館で待ってるか?それが嫌なら–––」

「!!いっしょに、かえる」

「………………了解」


くそ、可愛すぎるだろ……。提案した途端明るい顔になり、嬉しそうに笑いながら言う。


「じゃ、連絡先交換しとくか?遅れそうになった時に伝えれるように」

「ん、わかった」


互いの連絡先を交換すると、『よろしくお願いします』とお辞儀している猫のスタンプが送られてきた。可愛いと思いつつ、俺も挨拶しているゲームのキャラクターのスタンプを返した。


「じゃ、また後で」

「うん、がんばっ、てっ!」


鞄を持ち部活に行く。その前に。


「あ、そだ。もし誰かに誰と待ち合わせしてるのか聞かれても、俺の名前出すなよ」

「ん、なんで?」

「なんでって……。そりゃ変な勘ぐりしてくる奴が出てくるからだよ」

「?」


説明しても、よく分かってないのか首を傾げている。また詳しく説明する必要ありそうだな。


「まぁ、頼んだぞ」

「ん、まかせて」


俺は教室を出て、今後教えておかないといけないことを頭の中で考えながら、部活に行った。

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