語り方① 硬い文体、柔らかい文体
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「だいじなのは、お話の裏にこめられた意味なんだよ、ドローヴ少年。お話ってのはある目的があって語られるもので、その語られかたにもやっぱり目的がある」
(M・コーニイ、『ハローサマー、グッドバイ』、山岸真訳、河出文庫、p.36)
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この
ですが、あえて確認しておきましょう。
物語を書くときには、語る内容だけでなく、その語り方にも意味があるのだ、と。
日本語として美しく、分かりやすく、読みやすいことは、言ってみれば小説として基本中の基本です。
この小論は、皆さんがそこを整えるためのチェックポイントについてあれこれ書いてきました。
主語と述語の関係を基軸に、情報を伝わりやすい順番に整理し、接続詞で文と文を的確かつ効果的につないでいくとすれば、この時点で、意味不明な文章からは遠く離れ、情報の過不足についてもそれなりに整理できてくると思います。
文章を構造の観点から分析的に捉えられるようになれば、自分でチェックする際にも余分なエネルギーを使わずに済みますし、誤字脱字や変換ミスにも気付きやすくなるはずです。
ということで、次のステップとして、語り方のお話も始めていきたいと思います。
川端康成『伊豆の踊子』を例に挙げたときにちらりと書いたことですが、小説は何らかの読者層、あるいは何らかの需要を想定して書かれるものであり、その想定ごとに適した語り方があります。
語尾に「にゃ」を付ける女の子がメインヒロインのラブコメ作品で夏目漱石を真似ても仕方ありませんし、大人向けの恋愛小説を書くのに語彙が小学生並みでは雰囲気ぶち壊しというわけです。
Web小説を書いている途中で文体が
自分の文体の特徴を掴めば、それを維持することも、変更を加えることも比較的容易になるはずです。
まずは基本的なことから見ていきましょう。
(1)書き言葉(文語)を多用すると硬い文体、話し言葉(口語)を多用すると柔らかい文体になります。
「彼は騎士だが、体が小さい」(硬い)
「彼は騎士だけど、体が小さい」(柔らかい)
一般的に言って、地の文が三人称の小説は、書き言葉で書かれています。
そのため、一人称の語りであっても、地の文を話し言葉にすると、単にフラットな印象ではなく、かなりくだけた印象になります。
語り手が大学生くらいまでなら何の問題もありませんが、主人公の精神年齢を大人に設定しているなら、ひとまず書き言葉で書くのが無難でしょう。
逆に言えば、主人公が精神的に未熟だったり、
「彼が殺人犯だなんて、そんなことがあるだろうか」(硬い)
「あいつが殺人犯とか、あり得ねぇよ」(柔らかい)
(2)漢語(音読みの漢字による熟語)を多用すると硬い文体、和語を多用すると柔らかい文体になります。
「頭上に何か落下してきた」(硬い)
「頭の上に何か落ちてきた」(柔らかい)
(3)名詞形の言葉を多用すると硬い文体、そうでない語を多用すると柔らかい文体になります。
「太陽を背にして
「太陽を背にして
(4)
「ご理解いただけましたか」(硬い)
「分かりましたか?」(柔らかい)
「分かった?」(さらに柔らかい)
他にもあると思いますが、ひとまずはこんなところで。
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