接続詞④ 「なぜなら」の注意点

 今回は、理由の接続詞「なぜなら」「というのも」を使う際の注意点を、3つお話します。



 1つ目は、仮定の話と同じく、理由を説明する場合も、始まりと終わりの対応関係があるということです。

 文頭が「なぜなら」「というのも」なら、文末は「……だからだ」です。


 たまに、

「AがB。なぜならCがDだからであり、(これによって)EがF」

 という文を見かけますが、「なぜなら」という接続詞で話を始めたからには、「CがDだからだ」で一旦区切るのが望ましいと思います。



 2つ目は、これも仮定の話と同様に、文字数を減らした方がシャープな印象になるということです。


――――

 何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。

 なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。

(森見登美彦『太陽の塔』、冒頭)

――――


 仮定の話がふわっとしていると何も伝わりませんが、「なぜなら」の直後は少々説明不足であっても大丈夫です。

 この例文が示している通り、むしろそれによって読者の興味を引き立てられる場合があります。

 この手法はWeb小説ではあまり見かけない気がしますが、その場面に至るまでの経緯を後から説明する際、前置きなく過去の話を始めたり、唐突に回想シーンに飛んだりするよりは、読みやすい文章になるはずです。



 最後の注意点は、以前にもお話したことではあるのですが、理由の説明を短い間隔かんかくで連続させたり、因果関係の説明が前後でごちゃごちゃしたりしないようにするということです。


「どのような事情があれ、殺人は許されない。

 なぜなら、日本は法治国家だからだ。

 殺人は法治国家の原則を脅かす。

 ただし、死刑はその限りではない。

 なぜなら、その殺人は個人の判断ではなく、国家の判断だからだ」


 ……読みづらいですね。

 文の重心がどこに置かれているのか見えず、何を言いたいのか分からないので、修正案を考えることもできません。


「学生時代のXさんは友達が少なく、勉強もスポーツも苦手だった。

 だから、日々の楽しみは自由帳に絵を描くことだけだった。

 なぜなら、絵を描くのに友達は要らなかったからだ」


 例文で見た皆さんは、「私は絶対にこんな書き方はしない」「こんな書き方をする人なんて実際にはいないだろ」と思われるかもしれません。

 ですが、因果関係や時系列が整理されておらず、同じ内容を繰り返している文章は、割とよく見かけます。

 先ほどの例文もそうですが、情報が整理されていないと、何を言いたいのか分からない文章になりますし、文法的にミスはなくても読みづらくなります。

 勢いに任せて小説を書くタイプの方には、ぜひこの点にご注意いただきたいと思います。

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