第83話 アジア大会③

 安全エリアが最終収縮する。

こうなったら、もうどこで敵と出会ってもいい状況だ。


「あと5人……」


 画面の左上には残り人数が表示されている。

ようやく終わりが見えてきた。


 まだ、前回アジア大会を優勝したペアや俺たちと同じの本大会を勝ち抜いた如月兄妹は残っているようである。


 最終のエリア収縮が開始される。

そろそろ、あと1組は落としておきたいといった感じだ。


「撃たれた! 南東方面」


 移動中に俺が撃たれた。

俺はすぐに撃たれた方向を確認して莉央と共有する。


「俺、一旦回復入れるわ」


 幸い、当たったのは頭ではなく胴体だったので、ダメージは3分の1くらいしか減ってなかった。

すぐに回復を入れたら十分に間に合う。


「了解です!」


 莉央も射線を切って、様子を伺っている。


「見つけたけど撃っていい?」

「おっけ。援護するわ」


 俺の回復の方はすでに終わって状況を立て直している。

その後まもなくして莉央が放った銃声が聞こえてくる。


「1人やった」

「ナイスー!」


 俺はすぐにアサルトからスナイパーへと切り替える。

スコープを覗いてすぐに、銃弾を発射させる。


「俺、もう1人の方やった」

「ナイスー!」

「あれ、如月兄弟だったな」


 俺たちのキルログには、如月の名前が表示されていた。


「さて、残り1組だな」


 最終のエリア収縮が収縮して残りは1組になった。


「最後は前回大会で優勝した二人ですかね?」

「そうだろうな」

 

 前回大会で優勝した二人のキルログは見ていない。

それにここまで残っている実力者となればおのずと絞られてくる。


「正直、正面切ってやりあいたくは無いね」

「そうだね。できれば奇襲でやりたいね」


 あの二人を相手にして正面からやりあったら勝てる可能性は五分五分。

何か一手間違えれば確実にやられる。

過去のプレイ動画をみたが、それだけ注意しなければいけない相手だと思う。


「ここ、エリア内だね」


 エリア内の家でに入って、クリアリングする。


「あの家、居ると思う」

「どこ?」

「320の家の2階」


 相手も警戒しているのだろう。

一瞬だったが、クリアリングする影が見えた。


「多分そこに二人いるね」

「突っ込む?」

「そうだな。とりあえず投げ物投げるわ」


 俺はここからの立ち回りを考える。

ここで下手に動けば、こちらの場所を相手に知らせることになってしまうからだ。


「手榴弾投げまくるね」

「私、爆発収まったら突っ込むね」

「了解! それで行こう」


 俺はアサルトから手榴弾に切り替える。

持ってる手榴弾を次々に投げ込んでいく。


「5個投げた」

「了解」


 数回爆発音が鳴り響く。


「1人ダウン」


 キルログに一人倒したことが表示される。


「私、突っ込むね」

「おっけ、フォローする」


 突入すると、一人は気絶状態。

もう一人方はダメージを最小限に落とし、俺たちを待ち構えていた。

しかし接近戦では莉央の方が上手だったようだ。。


 最終的には莉央もダメージを喰らいながらも撃ち勝った。


《champion》


 俺たちのモニターにそう表示される。


「よっっしゃー!!」

「ナイス!!!!」


 そう言って俺たちはハイタッチする。

約一時間の激戦を制した。


 俺と莉央はアジア大会の優勝者となって世界への切符を手にしたのであった。

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