第53話 祝勝会

 いつものリビングは、パーティー用に飾りつけられていた。

いや、これもう、俺たちが勝つことを前提に作られてないか?

そんな疑問が浮かんで来る。


「ありがとう」

「ありがとうございます」


 サプライズで出迎えられるのも悪くは無い。

大会の様子は生配信されていたので、それをずっと見ていたのだろう。


「おにいと莉央さんなら優勝出来るって信じていたよ」

「諒、よくやった! お前は高森家の誇りだ!」


 親父が俺の肩をバシバシと叩いている。


「莉央さんも、優勝おめでとう。こいつと一緒に大会に出てくれてありがとう」

「いえ、私は諒さんのフォローがあったから優勝できたようなもので」

「いやいや、莉央だって十分な実力者だよ。今回はお互いのカバーがうまくいったから優勝できたんだ」


 デュオはただ1人が強ければいいという問題では無い。

何度も言うが、デュオは2人の連携力が大切なのだ。


「はいはい、2人とも反省会は後にして、ご飯を食べましょう!」


 柚月が手を叩きながら言った。

テーブルには、いつも以上に豪華な料理が並んでいる。


「今日はご馳走なんだな」

「もちろん! おにいと莉央さんの優勝パーティーだからね! 気合い入れて作ったよ」


 唐揚げにポテトフライといった、男の子が好きそうなものから、サラダやフルーツといった莉央も喜びそうなものまで並んでいる。


「柚月ちゃんありがとう」

「いえいえ、食後のケーキもありますからねー。何飲みます?」


 ペットボトルのジュースと、親父用のハイボールが用意されている。


「俺はオレンジジュース」

「じゃあ、私も」

「了解です!」


 グラスにオレンジジュースが注がれる。

親父はすでにハイボールを作り終えていた。


「じゃあ、お父さん乾杯の挨拶をお願いします」

「え、諒じゃなくて俺!?」

「こういうのは年長者の役割です」

「わかったよ。じゃあ、諒と莉央さんの日本大会優勝を祝しまして、乾杯!」

「「「乾杯!!」」」


 テーブルの上グラスがぶつかった。

早速、唐揚げを口の中に放り込む。


「柚月、めっちゃ美味いぞ。また腕上げたか?」

「このサラダなんでこんなに美味しいの!?」

「まあ、それは企業秘密なんで」


 柚月は嬉しそうにニヤッと笑った。


「てか、親父は仕事大丈夫なのかよ」

「気にするな。息子とその大切な相方のお祝いだ。仕事なんてしてる場合か!」


 そういって、親父は一気にハイボールを煽る。

その時、俺のスマホが振動した。


「ちょっとごめん」


 画面には白瀬雪乃と表示されていた。


「はい、高森です」

『高森さん、優勝おめでとうございます!! すごいですよ!! さすがです!!』


 電話越しでも白瀬さんの興奮が伝わって来る。


「ありがとうございます」

『会場についていけなくてすみません』

「いえ、白瀬さんの事情は把握してますから」

『ありがとうございます。でも、すごい量の仕事の依頼や問い合わせが来てますよ!』

「ああ、やっぱりですか」


 大会優勝という目立ったことをすると、大量の仕事が来るのはいつも通りである。


「そういえば、白瀬さん今、何やってます?」

『今、会社を出て帰る所ですけど』

「じゃあ、俺の家に来ません? 莉央と家族で祝勝会やってるんですけど」

『それって、私もお邪魔しちゃってもいいやつなんですか?』

「当然ですよ。白瀬さんにはいつもお世話になってますし」


 正直、白瀬さんのサポートが無かったらここまで来れて無かったと思う。

白瀬さんがいつも万全の体制でサポートしてくれていたから今の俺があるのだ。


『じゃあ、少しだけお邪魔します』

「ありがとうございます。住所、送っておきます」


 俺は白瀬さんとの通話を終了すると、メッセージで住所を送った。

会社のある最寄駅からは20分とかからないだろう。


 俺は、リビングに戻る。


「俺のマネージャーの白瀬さんも呼んじゃったんだけどよかった?」

「もちろん!」

「ちゃんと挨拶しなきゃな」


 そう言いつつ、親父は八割くらいは酔っ払っている。


「料理もグラスもお酒もあるから全然大丈夫だよ!」

「ありがとう」


 俺たちは喋りながら、白瀬さんが到着するのを待った。

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