第54話 白瀬雪乃

 しばらくして、インターホンが鳴った。

画面を確認すると、そこには白瀬さんが映っている。


 エントランスの扉を開け、白瀬さんが到着すると玄関を開けた。


「こんにちは」

「白瀬さん、どうぞ上がってください」

「お邪魔します」


 白瀬さんは靴を脱いでスリッパに履き替える。

今日の白瀬さんはスーツ姿だった。


 美人というのは何を着ても似合うのだと痛感する。


「どうぞどうぞ」


 俺は白瀬さんをリビングに案内する。


「親父と柚月には紹介するね。俺のマネージャーの白瀬雪乃さん」

「白瀬と申します。この度は息子さんの優勝おめでとうございます」


 そう言って、ぺこりと頭を下げる。


「父の義英です。こちらこそ、息子がいつもお世話になっています」

「妹の柚月です。今日はお兄たちの祝勝会なのでジャンジャン食べて飲んでください!」

「ありがとうございます。いただきます」


 白瀬さんを開いている席に座ってもらう。


「白瀬さんはお酒は? ハイボールとレモンサワーならありますよ」

「では、せっかくなのでレモンサワーをいただきます」


 柚月が冷蔵庫の中から冷えたレモンサワーを持ってくる。


「じゃあ、改めて、乾杯!」


 白瀬さんを交えて、再び乾杯する。


「莉央さんも優勝おめでとう。次はアジア大会ね」

「はい! ありがとうございます」


 食事を進めているうちに料理はほとんど無くなっていた。

親父はもう、使い物にならないくらいには酔っ払っている。


「いやぁ、白瀬さんはお綺麗ですね」

「あ、ありがとうございます」


 もう、酔っ払い親父の絡み方をしている。


「親父、それセクハラだから」

「綺麗な人に綺麗って言って何が悪いんだよ!」


 だめだこりゃ。完全に出来上がっている。

とても、警視庁でバリバリやっている管理官には見えない。

これでも、警察では捜一の鬼とか警視庁の魔物なんて呼ばれているらしい。


「すみません。親父がこんなんで」

「いえいえ、息子さんの活躍がよっぽど嬉しかったんでしょうね」


 白瀬さんはニコニコしている。

それでも、白瀬さんも結構飲んでいる気がする。

顔が赤くなっている。


「白瀬さん、飲み過ぎじゃないですか?」

「大丈夫ですよぅ」


 若干、呂律も怪しくなってきている。

もしかして、そんなにお酒強くない?


「ねぇ、高森さん」


 色っぽい声を出してグッと顔を近づけてくる。

そして、俺の首に手を回す。


「頑張ったご褒美にチューしてあげましょうか?」


 耳元で言われた。


「は!?」


 そう言われた瞬間、白瀬さんの体重がこちらにかかってくる。

そして、スースーという息が聞こえてくる。

どうやら寝落ちしてしまったみたいだ。


「寝ちゃったみたい」


 そういうと、莉央が俺を睨んでいる。


「へー、諒は年上のお姉さんがいいんだー! そっかぁ!」


 え、何怒ってんの?


「てか、いつまでくっついてんのよ!

「ちょっと、莉央落ち着いて」


 俺は白瀬さんをソファーに寝かせる。


「じゃ、じゃあ、私も白瀬さんみたいにお姫様抱っこしてよ」

「な、なんで」

 

 確かに、白瀬さんをソファーに運ぶのにお姫様抱っこしたけど。


「私には出来ないの?」

「やります」


 莉央の圧に負けて莉央のこともお姫様抱っこする。

すると、莉央は満足したようだ。


「これでいいか?」

「うん……思ったより、恥ずかしかった……」


 莉央は顔を赤くしていた。

女の子というのはよく分からない。


「お兄、モテモテだねぇ」


 柚月が茶々を入れる。

親父は机に突っ伏してダウンしていた。


 親父見られてなくてよかった。

見られてたら、どうなっていたことか。


「さて、この酔っ払い2人をどうしますかね」


 ここにいる大人2人は完全にダウンしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る