第8話 夏目莉央との対面

 夏目莉央は、俺たちの対面の席へと座る。

隣に居るのはマネージャーだろう。

綺麗な女性の人だった。


 よく考えれば、このテーブルに男は俺しかいない状況なので、ちょっと肩身が狭い気がする。


「高森諒です」

「よろしくね」


 そう言って、莉央は右手を差し出す。


「よろしく」


 俺は、莉央の右手を軽く握り、握手を交わす。


「あなたのプレイ動画見たわ! スナイパーの腕はもう凄くて、それに索敵も……!」


 莉央は嬉々として話してくれる。


「ありがとう。俺も、莉央さんのプレイ動画見ましたよ。中距離のエイム力はすごいですよね」


 俺が得意とするのが長距離の狙撃だ。

もちろん、アサルトの中距離短距離もできるが、莉央は中距離の射撃が抜群に上手いと思った。


「え、ありがとう。世界一に褒められると嬉しいな」


 そう言って、莉央が優しい笑みを浮かべる。

この笑顔を向けられて惚れない男がこの世にいるのだろうか。


「俺も、是非、莉央さんと一緒にプロホプルをプレイしたい。あまりデュオはやらないから、足引っ張るかもだけど」

「いやいやいや、私の方こそ、まさかオッケーしてもらえるとは思えなかったし、逆に私が足を引っ張るかも……」


 莉央は少し俯いて口にする。


「まあ、ゲームは楽しんでやるものだと思うし、一緒に楽しくゲームしよう」

「はい、頑張ります!」


 莉央の仕草の全てが可愛い。

こういうの、男心をくすぐるんだよな。


 綺麗系の顔立ちをしていることから、ギャップもあって、人気の訳が伺える。


「私たちは、お邪魔かな? あとは二人で楽んでねー」


 隣に居た白瀬さんはニヤっとした笑みを浮かべている。

それは、悪戯が成功した子供のように。


 白瀬さんと莉央のマネージャーさんは同じような笑みを浮かべながら、喫茶店を後にした。


「高森くんのマネージャーさん、綺麗な人だね」

「まあ、そうだね。ああ、いつもあんな感じだから気にしないで」

「うん、それは大丈夫。うちのマネージャーも似たような感じだから」


 俺はアイスコーヒーを、莉央はカフェラテを一口飲む。


「コラボの日程どうする?」


 俺は今回の本題へと入る。


「そうだね、みんな翌日休みの方が見やすいのかな?」

「だね。金曜とか土曜がいいかもね」

「じゃあ、来週の金曜は?」

「うん、夜ならできるよ」


 金曜日は毎週ではないが、俺も配信をしていることが多い。


「じゃあ、そこでやろ!」

「了解! 楽しみだよ。一緒にゲームできるのが」


 そして、一緒にゲーム配信をする日程が決定した。

莉央とは、初めて会った訳だが、同じ趣味を持ち、同じプロゲーマーで年齢も近いということから、すぐに距離が縮まった気がする。


「私も楽しみ! いっぱい練習して上手くならなきゃだね」

「もう、十分上手いけどね」


 こうして、日本一と世界一は出会うべくして出会ったのであった。

 

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