第9話 日本一と世界一
コラボ日程が、決定すると、そこからは雑談の時間だった。
「高森さんは、顔出しとかしていないですよね?」
「うん、配信とかでは顔は出してないね」
俺の配信では、ゲーム画面と声しか出して居ない。
SNS上でも顔を出すということはしていなかった。
世界大会で優勝しているので、検索をすれば顔は出てしまうだろうが、わざわざ調べる人も少ない。
一方で、莉央は顔をメディアに全面に押し出している。
まあ、莉央のようなルックスだと、そういう売り方をした方がいいのだろう。
美人でプロゲーマー、このギャップが刺さると思う。
「顔出し、しないんですか?」
「まあ、してもいいけど、俺はイケメンでもないし、顔出しした所で需要ないでしょ」
俺がそう言うと、莉緒は俺の顔をじっと見つめてくる。
「ん? 俺の顔に何かついてる?」
「いや、高森さんの顔、整っていると思って」
「そ、そうか?」
「うん、髪型とかちゃんとやれば結構いいと思う」
今日も特に髪型はセットしていなかった。
寝癖を直したくらいだ。
「それと、俺のことは諒でいいぞ」
「分かった。じゃあ、私も莉央でいい」
そう言って、莉央は嬉しそうに微笑む。
「改めてよろしくな、莉央さん」
「こちらこそ、諒さん」
二人の間に合った距離が更に縮まったのを感じた。
「でも、すぐにって訳じゃなくていいけど、私とコラボする時は顔出しもやって欲しいな。私も協力するし」
「そこまで言うなら、分かったよ」
もう、調べれば分かる顔なので、顔を出すこと自体にそこまで抵抗がある訳じゃない。
「やった。ねえ、連絡先教えてよ。相互フォローだけど、ダイレクトメッセージじゃなんか味気ないし」
「そうだな。その方が便利そうだしな」
俺はメッセージアプリのQRコードを出した。
「ん、ありがとう」
「せっかくなら、こっちも交換しとくか」
それは、俺がたまにネット上の友人とゲームをする時に使っている通話アプリだ。
元々、ゲーム用で作られているので、他のメッセージアプリよりも軽く作られている。
「それ、忘れる所だったよ。一緒にゲームするなら絶対に必要だね」
「そうだろ?」
FPSを二人でプレイするから場合、連携が重要になって来る。
通話しながらプレイするのが最もやりやすいのである。
俺たちは二つの連絡先を交換した。
「金曜の配信はプロホプルでいいのか?」
「初コラボだし、それがいいと思う」
お互いにプロホプルではかなりの有名プレイヤーである。
より、話題性を強く持たせるためにもプロホプルの方がいいだろう。
「でも、もし今回のコラボが好評だったら、他のゲームを一緒にやるのも楽そうだよね」
「確かにな。定期的にやってくか」
年も近いし、同じプロゲーマーで配信者だ。
こんなに、話していて楽しいと思ったのは本当に久しぶりだった。
「お互いのSNSで事前告知した方がいいよね?」
「そうだね。今やっちゃうか」
俺たちはスマホを操作して、莉央とTakamoriがコラボ配信をするという旨の告知をした。
その反響は凄まじかった。
『お、待ってました!』
『日本一と世界一のコラボは熱い!』
『高校生プロゲーマーデュオとか見るしかないでしょ!』
次々にコメントが寄せられた。
「なんか、反響は良さそうだね」
「ええ、そうね」
莉央と一時間近く話ただろうか。
そろそろ、喫茶店を出ることにした。
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