第3話 Champion

「あれ、手榴弾でやれそうだな」


 そう言うと、俺はアサルトライフルから、手榴弾を構える。

そのまま、敵が居る家の中に手榴弾を投げ込んだ。


 数秒して、手榴弾が爆発する音が聞こえてくる。

それと当時に、俺の画面にキルログが表示された。


「よし、詰めるか」

 

 自分がキルしたことを確認すると、俺はその家の中に入って、物資を漁る。

画面の左上には《残り三人》と表示されている。


「あと三人か」


 このゲームには安全エリアといわれるものがあり、時間経過と共にその範囲は縮小されて行く。

安地外にいると、何もしなくてもダメージを受けるという寸法だ。


「そろそろ移動だな」


 画面には安全エリア縮小の15秒前と表示されている。

俺は、安全エリアに入るための移動を始める。


「回って行った方が良さそうだな」


 少し遠回りをしながらも、俺は安全エリアのギリギリの所に入る。


「見つけた」


 俺の正面の岩の裏に動く人影が見えた。

相手は俺の存在に気づいてはいない。


「やれるな」


 アサルトライフルから、スナイパーへと切り替える。

そして、スコープを覗き込むのと同時に銃弾を発射させる。


 その銃弾は敵の頭に直撃して、即死だった。


「よし!」


 俺は誰も見ていない部屋の中で、小さくガッツポーズをする。


 画面には《champion》と表示されている。

この試合で優勝したということである。


 そのタイミングでコメントは一気に流れて行く。


『Takamoriさんのスナイパー上手すぎ』

『てかまず、索敵が上手い』

『これが世界一の実力か!』

『まだ高校生なんでしょ?』

『リオちゃんとコラボまだですか?』


 スパチャと呼ばれる投げ銭もかなりの額が入っている。


「みんなありがとう。リオちゃんって美少女プロゲーマーのことかな?」


 俺は気になったコメントを読み上げて行く。


『そうです! 高校生デュオやってほしい!』

「まあ、向こうは人気配信者でもあるし、ちょっと難しいかもね」


 今、俺がプレイしているのはソロモードだが、このゲームには二人一組でプレイするデュオモードも存在する。

俺は、基本的に配信ではソロモードしかやって居なかった。

コラボするような相手も居ないからというのが大きな要因だ。


「じゃあ、今日はこれで終わりにしようかな。また、近いうちに配信しますね。その時はSNSで告知するんでそっちのフォローもお願いします」


『お疲れ様でした』

『お疲れ様です』

『次回も楽しみにしてます』


「ありがとう。じゃあ、またね」


 一通りコメントに反応すると、俺は配信を切った。


 この時、考えても居ないことが既に動きはじめていたのだが、そんなことは知る由もない。

そして、思ったよりも早く夏目莉央と接点を持つことになるのであった。

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