第12話 息子とそのペット
ーー 今度こそ自由をこの手に
ミセール王国に産まれて20年以上、始めが開拓村の貧しい家の子供。
両親が早世し12歳からは一人で生きてきた、15歳で冒険者になり自由を認めた。
努力と工夫でスキルと魔法をその手にし、富と地位を手にした。
貴族になり侯爵まで成り上がったが、自由だったのだろうか?
流された感もしていた、だが今なら私の行動を縛る者はいない。
今度こそ自由と言える、人生を謳歌しよう。
今不思議に思うのは、
・自分は歳をとるのか?いつまでも若々しいのだ。
・自分はどこまで強くなるのか?今でも敵らしい生き物はいない。
・家族は、普通と違うのか?私と同じく歳をとっていない感じがする。
と言うことだ。
寿命と言う縛りがないのであれば、長期の目標が達成できるだろうし。
自分の王国すら興す事が可能だろう。
この世界を昔生きていた地球の世界の様な便利で埋まる文化にしても良いし、魔法でそれに変わる世界にしても良いかもしれない。
こう言う規模の大きいことを挑戦できる事が、今の私にとっての自由という事なのかもしれない。
あれこれ考えながら、思い付くままに生きることにした。
ーー 子供と共に
息子を連れて、街を歩く。最近外を出歩くのがお気に入りになった息子キャノン。
「チチウエ。キョウハ・・ドコニイクノ・・デシュカ?」
舌足らずのキャノンが私の手を握りながら、ワクワクした目で話かける。
「今日は、お空を飛んで森を探索しようか。」
と言うと
「オショラデスカ?トリシャンノヨウニチチウエハトベルノデスカ?」
と驚いた様に聞き返した。
「そうだよ。努力すれば、キャノンもきっと出来るはずさ。」
と答えるとニコニコしながら
「キットボクモ、トンデミマス。」
と言い切った。
息子を抱き寄せ、風魔法と重力魔法を掛けわせてた飛行魔法で空に舞い上がる。
「スゴイデシュ。モウアンナニミンナガチイサクミエルデス。」
興奮して叫ぶ息子。
「チチウエ。ダレカノコエガ・・キコエマシュ。アソコカラ。」
とある一点を指差す。
そこを目指して降りてゆくと、大きな木の室が有った。
◇
「ココノナカカラ、コエガキコエマシュ。」
と息子が言うが、私には聞こえない。
息子を連れて木の室の中に足を踏み入れる。
10畳ほどの広さが有り、薄暗くてよく見えない。目に魔力を集める。
すると小さな生き物が丸まり震えるのが見えた、息子はそれが見える様に近づくとそっと抱きかかえた。
「チチウエ、コノイキモノガ・・ボクヲヨンデイタンデシュ。」
と言う。
外の出てそれを見ると子犬の様だった、怪我をしている。
「チチウエ、コノコノケガヲ・・ナオシテクダシャイ。」
子犬を受け取り、癒しと回復魔法をかけるとみるみる内に力を取り戻すが、かなりお腹が空いていた様だ。
収納から生肉を取り出し子犬の前に差し出すと。
迷っていた様だが肉にかぶりつく。
「オナカガスイテイタノデシュカ?」
息子が子犬に話しかけると、子犬がそれに答える様に
「オオン。」
と答える。
「チチウエ、イマコノコガ・・オイシイ。トイイマシタヨ。」
と教えてくれた、息子はこの子犬の言葉がわかるか念話をしている可能性がある。
ーー 息子がペットを飼いだしました。
その後そも子犬を息子が絶対に持って帰るんだと、珍しく駄々をこね根負けした私は、仕方なく連れて帰ることにしたのです。
この時まではこの子犬があんな化け物みたいになるとは、思ってもいなかったのだ。
その後息子の世話で、子犬はすくすくすくと育ちすぎた。
気づけば馬の様になった狼犬がそこにいた。
鑑定したら、「フェンリル」と表示された。
「フェンリルか・・・それならこの大きさも分かるか。」
と呟きながら、餌を与えると
『主人様ありがとうございます。』
と念話でお礼を言い出した。
「おお、私とも話ができたのか、息子をよろしく頼むよ。」
と言えば、
『お任せくだされ。この命に替えてもお守りいたします。』
と答えたた。
このフェンリルの名前はギンと言うのだが、これはシルバー色の毛並みを見た時私が
「銀色の毛か」
と呟いた言葉を息子が聞き
「それが良い。この子はギンだ。」
と名付けたのだ。
◇
10日後。
私の魔力と息子の世話ですくすく育った、ギンが子馬ほどに育った。
息子を背に乗せて散歩する姿は、微笑ましいが見る者皆驚く。
「チチウエ。ギン・・ガオソトニデタイトイッテマシュ。」
と自分も外に出たいと言っている。
「父が側で見ていいなら許そう。」
と言うと一人と1匹が飛びつく様に喜びを見せ、外に飛ぶ様に飛び出した。
大通りをギンの背に乗り進む息子を目にした領民達。驚きと共に微笑ましい顔で見送る。
『ええ!誰も怖がっていないが、コイツ魔物だよ。』と心でツッコミを入れながら後ろをついて歩く。
そのまま街の門を潜り森の方に進むフェンリルと息子。
森の中に当然のように入り奥へと進む、この森は基本私が居るとそれを感じた魔物たちが物陰に隠れ出てこないので。
気配完全遮断を使い様子を見ると、侵入者に気付いた魔物達が息子らの前に飛び出す。
フェンリルの存在にそこで気づくも手遅れ、息子の指示を受けフェンリルがブレスを吐く。
まだ威力はそこまでもないが、この森の魔物なら防げる物はいない。
消し炭になり消え去る魔物の魔力をフェンリルと息子が吸収しているのが見える。
『あれ!フェンリルは分かるが・・息子まで魔力を吸収している・・・どうしてだ。』
不思議な感じを思いながらも、一人と1匹はしばらく森を歩き周る。
50匹ほどの魔物を狩終わると、屋敷がある街に戻り始める。
「父ウエ、キョウハとても面白かったデシュ。」
と言う息子、『少し喋りが上手くなっている?』それに背が伸びたような。
『そんな事があるのか?』と思いながらも、強く元気に育つ息子を頼もしく思っていた。
ーー 新たな家族
妻エルメアがその日の朝私に
「貴方。もう一人家族が増えそうえうわ。」
と言いだした。
『え!そうなのか。』
「そうか。今度は娘がいいかもしれんな。」
と口にすると、エルメアは
「多分、娘です。」
と答えた。
『ええ!もう分かるのか?それとも感か。』と思いながら朝食に現れた、息子に伝えると。
「本当ですか、母上。僕ももっと強く頼れる兄になります。」
と言いながら旺盛な食欲でご飯を食べていた。
『また言葉がしっかりしている。』
成長早すぎ。
◇
10月ケ後。
珠のような可愛い娘が生まれました。
「よし娘が生まれた記念に、今年の税は免除しよう。」
と言いながら執務室に駆け込み、領民への命令書を認めて布告した。
「ん!今まで税を納めさせた年があったかな?」
と呟きながら、めでたい事はいいことだと思った。
祭りの準備も始め、王国内に臨時の祭り開催の連絡を行った。
私はアスカ商会のケニーさんに
「娘が生まれた。祭りを開催するので、準備を頼む。」
と言うと金貨が詰まった袋を10ほど取り出し、
「好きなだけ使ってくれ。」
と言った。
娘が生まれた月は3月、春を告げる月で春祭りの時期だ。
「よし。3/3を雛祭りとして、大々的な行事を開催しよう。」
と思いつきを叫ぶと、ふともう一つが。
「息子が5月生まれだ。やっぱり5/5は、こどもの日だ。」
と思わず呟いた。
それならと思い、今回は時期は違うが。
・大通りの所々に雛人形ならぬ王女人形を作って並べよう。
・同じく王子人形も勇ましい姿で並べよう。
・これら子供の成長を祈る人形の山車を名物にしよう。
・空には鯉ならぬドラゴンを流そう。
この催し物は、貴族や豪商に流行し大いに人を呼ぶことになる。
◇
雛祭り当日。
街の広い広場に会場を設置し、国内中の踊り子や歌姫を呼び。
連日連夜その芸を披露させそれを観客が投票で評価する。
評価の多い者に奨励金を渡すと、次の年から更なる参加者と盛り上がりが違った。
王女、王子人形の山車も盛況で、専用の職人が現れるほどになり、後年は街・村別に自慢の山車を作りライディンの街を練り歩くようになった。
こうしてミセール王国内に次第に祭りや模様しものが文化として根付き、いつしかこの王国が文化発祥の中心と言われるようになる。
こうなると、アイデアは溢れ出る。
「リオのカーニバル」「阿波踊り」「ねぶた祭り」などなど
私は国王にこう進言する。
「王国各地で祭りを奨励し、王国民のストレスを発散させ国力を上げましょう。」
と。
最初の支度金の半分を私が供出し残りを領主と王国が補助する。
すると初めての年から、盛大な祭りが月毎に開催され始めた。
この祭り好きの王国の噂は世界に広がり、毎年ミセール王国に観光で訪れる人々が溢れ出す。
人が動けば経済が動く。ミセール王国の発展は、初期費用の何倍も返ってくる観光王国に変身したのだ。
私はこの好機を逃す事なく次の一手を繰り出す。
ーー 知識を求めて。
この世界のは、娯楽が少ないと以前言っていた私だが、もう一つ不満があった。
「この世界には教育が不足している。」だ。
貴族などが社交重視で通う学園が王都にあるが、ほとんどの庶民は教育らしいものを受けずに大人になる。
これが文化の発展を妨げているのだ。
だから私は、街々に学校を作り無償で教育を行ってきたし。
図書館という知識をまとめた本を閲覧できる施設を幾つか作って公開している。
祭りでこの国我が公爵領を訪れた者達が、この事実を国に帰ってから庶民に広める。
向上心のある庶民の中には、この国に勉強にために訪れる若者が増えだす。
「侯爵様。今月も30人ほどの聴講生が寄宿舎に入寮しました。」
という報告を受ける。
寄宿舎は、知を求める若者が無料で宿泊できる長屋の様なもので、一棟に50人入寮可能。
今では寄宿舎が10棟も建ち並び、学問の街とも言える規模になりつつある。
彼らの食事代は、写本の作業をこれに当てて本を増やすことと、知を増やすことを両立させている。
この試みは、領内の優秀な人材育成に大きく貢献することになり、その後。
「大学」という高等教育の施設を誕生させる土台となる。
ーー 5年の月日が経つ。
息子キャノン9歳。
娘 シャノン5歳。
二人ともすくすく以上に育ち、可愛く元気に育った。
キャノンは背が160cmガッリした体付きに、よく日に焼けた健康的なイケメンに。
シャインは背が130cm手足がスラリとした美少女に。
それぞれ育ち、同じ歳の子供らとはかなり成長が違う。
キャノンに至っては、ギンとよく森に行き狩りをしていたこともあって、動きに無駄がなく騎士団にも劣らぬ武を持つ。
「父上、10歳になったら武術大会に参加します。」
と言うほどだ。
娘シャインは、すでに化粧水を使うほど美意識が高く。
公爵領の新作ドレスや下着のモデルとしても、人気を妻と二分している。
私は自慢の息子娘を伴いよく外国に足を運ぶ。
当然転移魔法でだ。
今日もトラザール王国に遊びに来ている。
ーー トラザール王国 セラーズ王太子 サイド
最近美しい少女の話を耳にする事がある。
私も今年24歳になりそろそろ妻をと母からも言われ始めている。
その美しい少女は未だ12・3歳の年頃であるらしいいが、是非一目見て話をしてみたいと思っていた。
すると、街を巡回している者から報告が上がった。
3人の兄妹が街に現れたという報告だ。
その少女は兄二人とよくこの街に姿を見せるという。兄二人も美形で仲が良く着ている服が、この国では見かけぬ今流行りのミセール王国風だと聞いている。
ミセール王国と言うとかのライディン侯爵を思い出すが、そう度々この国に来てはいまい。
私は国王である母に内緒で城下に出る、今でも母は少しばかり過保護なのだ。
「あの子だ。間違いない。」
美しい少女を見かけ、思わず声をかけようとして足が止まった。
「あれは、ライディン侯爵。」
兄妹のように仲良く話をする男の一人が、ライディン侯爵だった。
するとあの男女は・・息子に娘なのか。
何時迄も若々しいライディン侯爵は、見た目17・8歳の青年だ。
『私の母も今では私の姉に見えるくらい若々しいが、ライディン侯爵は不老なのか?』
と思いつつ、娘ならまだ5歳ほどのはず・・まさか5歳はなかろう。
すると私の存在にライディン侯爵が気づいた。
「おおこれはまた珍しい。セラーズ王太子ではないか。ちょうど良い紹介しよう私の子供だ。」
と言うと二人を私の前に出した。
「初めまして、ライディン侯爵の息子キャノン9歳です。セラーズ王太子。」
「セラーズ王太子様、お初にお目にかかります。ライディンの娘シャノン5歳です。」
と挨拶をしてくれたが、
『9歳に5歳だと、いやそれなら私もあの秘薬を使えば10年待つことは特に問題でない。そうだ。』
と心で躍り上がるほど喜びをおさえて
「初めまして、トラザール王太子のセラーズです。お二人ともこれからは良き友としてお付き合いください。」
と言うと二人と握手を交わした。
その後は4人で街中を散策して楽しい時間を共に過ごしたがそこで強く感じた事があった。
二人とも、若いのに非常に博識で頭がいいのだ。これでは私が物足りなく見えてしまうと思い。
その後私は勉学に努め出すのだった。
ーー トラザール王国女帝 サイド
最近息子のセラーズ王太子が、非常に勉強熱心になり将来が楽しみになって来た。
その理由は分かっている、ライディン侯爵の子供達の影響だろう。
ライディン侯爵の子供達がよくこの国に遊びに来ている事は、ライディン侯爵からの話で聞いていたが。
二人の子供は非常に成長が早く、見た目で二倍の成長だと言われている。
体の成長だけではなく、頭や容姿も2倍以上と言われるほどで、セラーズも興味を持っているようだ。
ライディン侯爵の非常識さは、今の妾の見た目を見れば明らか。
セラーズの姉と言っても何の問題がないほど妾は若々しさを保っている。
出来れば、娘シャノン嬢を王妃に迎えられればと考えているほどだ。
「頑張れセラーズ。」
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