第13話 息子の冒険と武闘大会
ーー 息子キャノンの冒険
僕は、ライディン侯爵の長男キャノン9歳。
魔法に武術どれをとってもこの世界で並ぶ者がいないといわれる、父上カイト=ライディン。
いつまでも若々しく美しいエルメア母上。
賢く美少女の妹シャイン5歳。
僕には親友と言えるギンが居ます。
ギンは森で弱っているところを助けてからの付き合いだ、父上の魔力を吸収してすぐに大きくなった。
それからは僕を背に乗せて、森や街を散歩するのが日課になった。
今でもそれは変わらない。
今父上に魔法と剣術を習っているが、目標は大森林をギンと横断すること。
まだ見ぬドラゴンやワイバーンにサイクロプス、強い魔物を倒して僕も父上の様な強い男になるのだ。
「父上。転移魔法と収納魔法が使える様になりました。」
と伝えると、
「後は防御系魔法と回復系魔法を十全に使える様になって、剣術がアリスと互角になればどこでも行けるぞ。」
と言われた。もう少しの努力だと思いさらに努力をしたよ。
◇
10歳の誕生日を迎えた。
誕生日のお祝いにとアルマお姉さんが、武具をくれたが。
以前父とアリス姉さんが倒したと言うドラゴンの素材で作られた特別な武具と長剣。
剣にもイデア姉さんの付与魔法が施され魔剣と言われる類だ。
「父上、母上、アリス姉さん、イデア姉さん、アルマ姉さん皆んなありがとう。」
とお礼を言うと、
「自由に生きるためには、力が必要だ。自分がしたいだけの目的の為に強くなれ。」
と父上が応援してくれた。
早速次の日、イデア姉さんの下で魔法の訓練を始める。
それから3カ月で父上の課題をクリアする事ができた。
「母上、明日ギンと中央大森林に行ってきます。」
と言うと母上は
「分かった。早めに帰ってくるのよ。」
とその辺に散歩に行く様に声をかける母上の気持ちに感謝。
◇
「ギン行くぞ。」
と声をかけ、二人大森林の縁に転移する。
ここまではこの前、父上に連れて来てもらい、覚えた地点だ。
侯爵領にある森と違い、いかにも魔素が濃ゆい気がする。
ギンの背にまたがり、森に進みいる。
入って直ぐにオークの集落を見つける。
『父上の話では、外に魔物が溢れる場合は中央でドラゴンが暴れている可能性があると言う。』
『よし当たりだろう。』
と意気揚々に、オークの集落をギンと殲滅してゆく。
200ほどオークがいたが、そこまで苦戦することはなかった。
「ギン帰りにでも、冒険者ギルドに立ち寄って買い取ってもらおう。」
と言いながらさらに奥に向かう。
父上に聞いたワイバーンの巣がある付近だ、気配を探りながら慎重に進むと。
上空から接近する大きな存在。
「ギン上から来たぞ!」
ギンに声をかけながら僕は魔法の発動準備を完了して待つ。
『見えた!』その瞬間僕は魔法を放つ。
風の魔法で、薄くした風の刃を何重にも重ねて放つ僕の必殺技の一つだ。
細かく振動する様にワイバーンに襲いかかる風の刃。翼を切り刻まれて地面に落下するワイバーン。
その首筋にギンが喰らい付き喉を切り裂き終了だ。
その後3頭のワイバーンを仕留めて街に帰る僕ら。
ーー ライディンの街の冒険者ギルド
「お姉さん。冒険者登録に来ました。お願いします。」
キラキラした顔で一人の青年?がギルドに来て受付の私の前に来ると、そう言った。
「確認だけど君は歳はいくつ?」
の質問に少年は
「はい。10歳になりました。」
と元気に答えてくれた。
確かに10歳から登録ができる様に最近ルールが変更になったが、この子は見た目が16・7歳くらいに見えるほど大きな体を持っている。
「分かりました、これに必要事項を書いてね。」
と記入用紙を手渡すとスラスラと記入し始めた。
このライディンの街なら幼い子供でも読み書きができて当たりまえなのでそこまで驚かないが。
この子が提出した用紙を見て驚いた。
「名前、キャノン=ライディン10歳。・・・ライディン侯爵の・・ご子息。」
と呟くと少年は
「ああ、忘れていました。この子も登録してください。」
と地面に伏せていたがそれでも背が見える大きな犬?いやオオカミを指差して
「ギンと言うの、フェンリルだよ。」
と言う言葉でまた驚き。神獣様だよ。
何とか登録したら今度は
「大森林に行って来たんだ。魔物を買い取ってほしんだけど・・どこで出せば良いの?」
と言う。
もう驚きはしないは。私は少年を裏に連れて行って
「ここが解体場よ。魔物を出してもらって良いかな。」
と軽く言うと、次から次にオークを取り出した。
「ちょっと待って、待って。何匹持ち込んだの?」
と聞くと
「ん〜と。オークが200でワイバーンが4頭で・・」
「ストップ!今日は後ワイバーンを2頭で終了よ。」
と言って取り出しを止めた。
少年が帰った後受付嬢のサリーは、ギルマスに報告を行った。
「先程ライディン侯爵のご子息キャノン様が、冒険者登録され魔物を買取に出されましたが。あまりの量に制限をさせてもらいました。」
と言うとギルマスは
「あの侯爵の息子だ、何があってもおかしく無いだろう。」
と言いながら
「次に来た時は冒険者ランクをCにしておけよ。」
と言った。
サリーは、ギルマスの部屋を出るとため息をつきながら
「本当なら家族は・・異常よね。」
と呟きながら周りを確認した。誰が聞いているかわからないからだ、それほど侯爵家の情報網は凄いのだ。
「でも規格外すぎるでしょう。10歳であの体格で、神獣を連れて大森林で狩り?・・・あの子大森林でて言ったわよね。もう想像できないわ。」
その日サリーは一日中ぼやいていた。
ーー 冒険者になった
キャノンは、狩から帰ると直ぐにギルドに登録に向かった。
受付で申請書に記入して登録が終了、忘れていたギンのことも慌てて登録した。
買取はごく一部しかできなかったが、次に出せば良いだけだ。
買い取ってもらったお金で、母上とシャノンそれと3人のお姉さん達にお土産を買って帰ったよ。
皆んな喜んでくれた。何故父上に無いかって。
それは父上には当然、ドラゴンの素材を渡す予定だからだ。
まだ力不足な僕だが近いうちにきっと。
そう言えばオークの集落を殲滅させた時に、お宝を見つけたがこれはギルドに出すのかな?
そう思いながらアリス姉さんに聞いたら
「見つけた者の物よ。」
と言われた、そうだったのか。
今度これも売りに行こう。
ーー アリス サイド
キャノンがギンを連れて大森林に狩りに向かった。
心配はしていないが、何が起こるかわからないのも大森林だ。
無事に帰って来てほんと安心したけど、聞いたら最初に
「オークの集落があって、200ぐらいだったかな。殲滅して後はワイバーン狩りになったよ。」
て平気で言ってたが、200のオークて言えばオークキングはまずいるはずなのに・・・。
父親以上かもしれないわ、末恐ろしい。
ーー 武術大会の開催と息子の出場
例年恒例になった、武術大会が今年も行われる。
毎年参加者が多くなり会場も二つになっての予選会だ。
今年はキャノンが10歳になったから、出場すると気合を入れていた。
組み合わせが発表された。
キャノンの名は第二会場にある。こっそりとアリスと覗きに行った。
ちょうど試合直前だ。相手は他国の参加者で、大きな盾を持った騎士だ。
なかなか強うそうな騎士だな、と思っていたが息子を見て違和感が。
「アイツまた大きくなってないか?」
隣のアリスに聞くと
「ああ確かに、お土産をもらった時に測ったら180cmあったよ。」
と何でも無い様に言う。
「180だって、俺以上に大きくなって。大森林に行ったためか。」
そう言いながら試合に目を向けた。
大盾で鉄壁な守りを見せたい騎士が、盾を構えるがキャノンは気にもせず殴りつけた。
「ボコーン」
大きな音が聞こえて、大盾が吹き飛んだ。騎士は慌てて構えるも次の日キャノンの蹴りに大きく吹き飛びあっけなく試合終了。
「おいアリス。アイツどこまでうでをあげたんだ。」
と聞くと
「今は私が辛うじて勝てるけど、そう長いことでは無いわ。貴方も父親の威厳を保ってね。」
とわざとらしい笑顔を見せた。
「10歳の子供だぞ。・・・まあ良いか。」
と呟く私の横でアリスが
「似たもの親子よ。」
と呟いた。
◇
武術大会の予選を難なく通過した僕は、決勝戦に向けて他の参加者を見ていた。
特に注目した選手は
・この辺りでは珍しい獣人族の男性戦士
・全身黄金のフルプレートの戦士
・ドラゴーニュと言われる鱗と尻尾を持つ戦士
・今聖剣と呼び声の高いセガール王国の剣術指南役
の4人とタイトルホルダーのアリス姉さんだ。
第二会場での決勝が始まった。
僕の次の相手はトーラル王国から来た旅の武芸者だ。
槍を使うようで、長さ3mの黒槍を扱きながら登場してきた。
5mの間合いで正対し試合開始。
直ぐに鋭い突きが僕の胸元に浴びせられる、それを剣で丁寧に捌きながら歩を進める。
間合いが2mに迫ったところで、相手が両手を挙げた。
「参った。ここまで懐に入られてはなす術がない。」
と言うと会場を後にした。
僕はその時不信感を覚えていた。
『何か目的があってこの大会の来たみたいだ。』と。
◇
次の試合は、目をつけていた獣人の戦士だ。
「お前若い割には良い動きをしてるな。力の限り良い試合をしようぜ。」
と言いながら戦士は低い体勢で身構えた。
僕は相手を格上と想定して、ワイバーンの体当たりで見せた防御姿勢を取る。
足を少し開き腕を顔の前でクロスし顎を引くだけの体制だ。
試合開始の合図と共に、獣人が飛び出す。
前の試合でもそれで相手が吹き飛ばされて終わりだった。
「ドオーン」
と言う音と砂煙が舞い上がる。
晴れると、そこにはぶつかり合ったままの二人の姿が。
「おおおおおー」
歓声が上がる。
今度は僕が下がり始める、戦士はその場で身構える
僕が突っ込む。
「ドン」
と言う低い音と共に空高く獣人戦士が舞い上がる。
そして落下、僕はすかさず落下地点で戦士を受け止める。
戦士は気絶しているようだ、その様子を見た審判が僕の手をあげ。
「勝者キャノン。」
と勝名乗りを挙げる、湧き上がる歓声。
『気持ちいいな』と思いながら歓声に答えて退場する。
次は決勝の会場第一会場だ。
◇
第一会場の決勝に勝ち残ったのは
・全身フルプレートの騎士
・ドラゴーニュの戦士
他3人
第二会場からは
・今剣聖の剣士
それと僕他3人
僕は第二試合からだ、見学しながらそれぞれの試合を見る。
・フルプレートは、巧みな剣術と硬い守りの試合運び。
・ドラゴーニュは、力の攻撃と突破力。
・今剣聖は、流石に見事な剣捌き。
その他の選手はそこまで参考にならなかった。
大二試合は、
・僕と他3名で1名のみが残るが、直ぐに決着がついた。
結局僕で決まり
第三試合に残ったのは
・フルプレート
・ドラゴーニュ
・今剣聖
・僕
◇
準決勝。
フルプレート対ドラゴーニュと今剣聖対僕
第一試合。
ドラゴーニュ選手が力押しで連続攻撃を加えており、見た感じ押している様に見えるが違うと感じた。
ドラゴーニュ選手が一息入れた瞬間、試合が動いた。
切り返す様にフルプレート選手が攻勢に出た。ドラゴーニュ選手はそれを強引に捌こうとするが、巧みな剣裁きのフルプレート選手の技に後退して行く。
もう少しで後がないと言うところで、攻撃が弱まった。
「誘いだ。」
ドラゴーニュ選手はこれが最後のチャンスとばかりに、大技を繰り出そうとして胴がガラ空きになる。
そこにフルプレート選手の剣が食い込む、意識を失い倒れるドラゴーニュ選手。
大きな歓声が上がる。
第二試合は、僕と今剣聖の試合。
「お若いのどなたに剣を習ったかお教え願えないか。」
と今剣聖が聞いてきたので僕は、
「剣の師は、父ライディンと姉アリスです。」
と答えると。
「おお!タイトルホルダーのアリス殿と最強のライディン殿か。相分かった。」
そう言うと剣を抜き構えた。
流石に構に隙がない。僕は今大会初めて身体強化を使う。
お互いの姿が消える様にブレる。
鋭い金属音と飛び散る火花。
観客が総立ちになって固唾を飲む。
どのくらい時間が経過したであろうか、僕はタイミングを外された打ち込みに大きく身体を動かしてしまった。
「しまった。」
そう思ったが遅かった。
次の瞬間咽喉元に剣が突き出されていた。
「参りました。」
僕は潔く負けを認めた。
決勝戦はフルプレートの騎士と今剣聖の剣士の戦い。
昼食を挟んでの試合となった。
◇
決勝。
守りの剣術と攻めの剣術。面白い戦いになった。
先に攻め込んだのは、意外にもフルプレートだ、鎧の重さをものともせぬ素早い動きで剣を振る。
力強い剣を上手く力を逃す様に捌く剣聖。
一息ついたところで攻守交代だ。
剣聖の鋭い剣がフルプレートのプレートを叩く様に掠るが、フルプレートは構わず攻撃に転じる。
その様な激しい戦いに終わりが近づいて来た。
流石のフルプレートの騎士もスタミナがつきはじめたようで、動きに精彩を欠き始めた。
「あ!」
観客の声が揃う、フルプレートの騎士の足がふらついた。
そこに剣聖の鋭い打ち込みが決まる。
「ま・・・参った。」
歓声が会場を飲み込む。
ーー タイトルホルダーのアリスと優勝者の戦い。
1時間の休憩の後、優勝者と前年優勝者の戦いが行われた。
結果は、一瞬。
いつ動き出したかわからぬ動きで、アリスが打って出ていた。
剣聖の額の寸前で止まった剣を見て、剣聖は
「参りました。まだまだでござる。」
と頭を下げた剣聖が下がると、再度大きな歓声が会場を包み今大会は終了した。
その後表彰式が行われ、晴れがましい顔のキャノンが居た。
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