第8話 妹達の輿入れと戦争再び

ーー 貴族の付き合いややり方はめんどくさい



伯爵として生活を送り出した私は、色々なことで不自由やめんど臭さを感じていた。


自分の味方的な貴族に対する付き合いや、反対に敵対する貴族との付き合いに細かいことで注意が必要なこと。


更に自分でどこかに行こうとすると、必ず護衛が付くし馬車での移動になる。

歩いていこうなんてすれば、妻を筆頭にお叱りを受けるのだ。


自由が欲しくて生きて来たのに自由がない生活になった事が不満に感じる事が多々。


しかしその代わり、自領で何をするのも自分の責任のもとだ。金さえあればしたい事がしたいだけできる。


戦争の後始末で、隣国からせしめた和解金もかなりの額に登り、本当にお金の心配がいらないほどだ。


そこで領内の教育と福祉を充実する方針を立て、街作り、村作り、耕作地開拓で我がライディン伯爵領の繁栄・発展の勢いが止まらない状態だ。


他所の領地がそのアイデアややり方を盗もうとしても、やるだけの実行力とお金がないだろう。

道を広げて伸ばす先から、露店や商人が先を争ってその場所を求めにくる。


農地は開拓した側から農民が入植する。

人口は1年前の3倍ほどに膨れ上がり、当然住む所や食料その他の日用品が飛ぶ様に売れる。

ゴールドラッシュと言える繁栄ぶりだ。


当然それをよく思わない貴族や商家も多いだろう。特に領民が離散し流れ出すような税の重い貴族領はその勢いが顕著で、何かといちゃもんをつけてきだしている。


などと言いながら少しずつ貴族の生活にも慣れた時に、その事件は起きた。

ミセール王国から見ると、険しい山脈を越えた北東にエデン王国が存在する。

そのエデン王国内で大暴れする火竜が、山脈を越えそうだと言う情報がもたらされたのだ。


当然ミセール王国の北東に領地を持つ、辺境伯やメードの街を持つトーラル子爵などから王国へ応援の要請が行われるが、誰も火竜に対抗出来る方法を知らない。

この世界において竜種は自然災害のような物だ、特に火竜は街を燃やし尽くすため手がつけられない。


そんな災害級の火竜が山脈を超えてやってくると言う。

そこで私に緊急依頼だ。

【火竜を討伐または追い返してほしい。】

こんな依頼以前では存在しないような依頼だが、私が大きな地竜を討伐している事が今回分かったことからこのような依頼が来たようだ。


私はメードの街に向かいトーラル子爵に面会し、依頼を受けたことを伝えた。

「そうか、ライディン伯爵が受けてくれれば、光明も見えると言う事だ。ありがたい。」

と喜ぶ子爵。


暫く火竜飛来の警戒で街に居ると、馴染みの人々が訪れては拝んでいった。


そんな日が2日ほど続いたところで、火竜が山脈を超えた。



ーー  火竜との闘い



火竜は火の属性竜の頂点、当然弱点も水や氷の属性魔法か物理的打撃だ。

私は火竜の進路に立ち、上空を通り過ぎようとした火竜に魔力を込めた「雷撃」を打ち込んだ。

「ギャーッ!」

響き渡る火竜の悲鳴。痺れた身体を立て直そうとするが上手くいかず、地面に墜落する火竜。

そこに「アブソリュート・ゼロ」を叩き込むと一帯が氷の世界に塗り変わる。

身体が痺れて上手く動けない火竜はブレスを吐けないまま、私の次なる攻撃を受ける。

凍りついた身体に物理的な打撃でダメージを狙った。

「スター・ホール」(星降り)

物理攻撃の特級魔法だ。


地面が揺れ、大気が震える。

周囲の巻き上がった土埃が鎮まると、そこには原形すらとどめぬ火竜の死骸があった。

私は死骸を収納しトーラル子爵に討伐が済んだことを伝え、王都に引き返す。


王都では、お祭り騒ぎの喜びようだった。

死骸を王城の前の広場に晒すと、広場に集まった民衆に

「我がミセール王国には火竜すら土足で踏み込むことを認めず。」

と意味深な言葉を持って紹介した。

その後我が国で私のことを

「ドラゴンハンターライディン。」

と呼ぶようになった。



ーー  侯爵へ



今回の火竜討伐の恩賞として国王から

「ライディン伯爵を侯爵に陞爵する」

と発表された。


これを受けて、我が領はまたしてもお祭り騒ぎが。

年に何回お祭りがあるんだ、と言われるほどライディン領はお祭り好きである。

そのまま露店や出し物の大道芸で、新しい文化を築きつつあるライディンの街を人は。

「ライディンズ」

と呼ぶようになったと聞く。


数日後侯爵に陞爵した私は、領内に次の布告をした。

【税の免除を本日より3年とする。子供の教育費は無料とする。】

これにより5年10年後に人材が溢れることになる。



ーー  妹たちの輿入れと叙爵



ここに来て、私の養妹達の行く末が話題に上りだした。


「皆んな、この辺りで結婚か独立を考える時が来たと私は思うんだがどうかな。」

とダイニングに揃った朝に、話を振った。

するとアリスから

「結婚は分かるけど独立て、何?」

と質問が出た。


「私も侯爵になり、自分の裁量で男爵位を授ける事が可能になった。そこで何人か男爵位を授ける中に君たちも候補に上げようと考えている。」

と答えると。

「その基準は何かしら」

イデアが発言する。

「侯爵領内で、必要な人材ということだ。それは色々な物があるだろう、意欲があるものは挑戦してほしい。」

と答えてその日の話は終わった。


ここで改めて養妹達の紹介をしよう。

・アリス〜21歳、冒険者ランクA、身体強化・剣術が得意

・イデア〜21歳、冒険者ランクA、収納・攻撃魔法が得意

・アルマ〜19歳、冒険者ランクA、身体強化・盾役と鍛治士

・サニー〜15歳、冒険者ランクB、収納・氷・水・火魔法

・リーゼ〜14歳、冒険者ランクB、錬金・創薬

・カンヌ〜14歳、冒険者ランクB、回復士・水・火・土

で、サニー、リーゼ、カンヌは商人としても大成を夢見る3人。


するとアリス、イデア、アルマの3人から貴族が出るのか。

最近アルマの作る武器が有名になっている。


イデアに付与魔法を付けてもらい、「魔剣のアルマ」「賢者イデア」と呼ばれている。


アリスの剣術も有名で、「今剣聖」と騒がれている。


となると3人ともが候補か。



しかも女性としては婚期遅めのアリス、イデア、アルマは私のコスメ使用のおかげか。

ライディンの美人3人娘と呼ばれ、見た目は15・6歳にしか見えないと言われている。


今回の輿入れで人気の高いのはサニー、リーゼ、カンヌの3人で、アリス達はランクAと言うだけあって、怖がられているところもある。


3人にそのところを含めて意思を確認すると、

「「「男爵として、この地を護ります。」」」

と言い切った。


『やっぱりね。』と思いつつ、

「分かった。我が侯爵軍の隊長として男爵に叙爵しよう。」

と伝えた。


この後、ライディン侯爵家の3女傑と呼ばれることになる。



ーー  ケニーさんの念願叶う



アスカ商会のケニーさんが、真剣な面差しで面会を求めてきた。

今やアスカ商会は、大商会としてその地位を不動のものにしているが、後継が決まっていない。

その条件にサニー達3人娘を嫁にもらうことが必須だからだ。

サニー達も美人で有名になりつつある少女達。

多くの男達があの手この手で言い寄るが、相手にされないと言うのが。

「鋼鉄の少女」と言われる理由だ。


「侯爵様お時間をいただきありがとうございます。」

と挨拶の後に

「実は長年の夢であった、後継者問題が解決しそうで報告にあがりました。」

と話出した。


「この度ここにいますスバルがアスカ商会の暖簾分けをすることになりましたが、ライディン商会のサニー様とパートナーにと選ばれたとお聞きしました。」

と言うここで私は思い出した。

サニーがこの間、

「一つ上の商売を考えています。その為に独立も・・。」

と言っていたが、そうか。


そこにサニーが現れ、私の前に深々と頭を下げると

「何も出来ない私を拾ってもらい、ここまで出来るようになったのも全てカイトお兄ちゃんのお陰です。この前の話で私も自分の力で飛び立ってみたいと強く思い、以前からお付き合いしていたスバルさんと新しい店を出すことに決めました。お許しください。」

と二人が並んで頭を下げた。

幼さが目立っていたサニーもよく見ると、立派なレディーだ。

「話は分かった。応援しよう、やってみなさい。」

と許すと、ケニーさんをはじめ3人で深々と頭を下げた。



最初はサニーがかと思っていたら、その日のうちに。

リーゼとカンヌが男を連れて来て、

「お兄ちゃん。私達も幸せになります。」

だって。


『急に妹が3人もいなくなった・・・寂しくないぞ。』



ーー  社交界の花達



侯爵になってからの私は、社交の機会が激増し始めた。

ほとんどの場合は妻のエルメアが対応していて、手が足りない場合はアリス、イデア、アルマが顔を出していた。

しかし流石に私が一度も顔出ししない訳にもいかず、10回に1回は出るようにしている。


それでも最近は、王妃様の若々しさと我妻及び妹達の若々しい美しさに

「社交の華」と言われるようになった為か。

誘われる機会が非常に多くなっている。

あの化粧水は、王妃の立っての希望で、限定品となっており。

その選別を王妃がしているのだ。


女性の力を手にした王妃は、この国を動かしていると言える実力者だ。


「息子カイトよ。お母様からのお願いです。アレを10ケースお願いするわね。」

と書かれた手紙一枚、これが王妃からの注文表です。

最近は私も火竜を倒したこともあり、かなり魔力が増えましたが、それ以上に王妃様の注文は私の魔力を増やすことに役立っております。

『時々朝日が黄色く見えます。』


「社交界の華が増える度に、私は力をつけるのです。」

と言う王妃や妻の言葉を耳にする。

そういえば最近やっとリーゼも似た効果の化粧水を作る事が出来る様になりました。

新しい店で目玉商品になることでしょう。

そして私の苦労を知ることになるでしょうね・・・。




ーー  戦争再び



この世界は僕にとってはイージーな世界です。

でもここに住むほとんどの人にとっては、生きる事が難しい厳しい世界です。


この世界のどこかで、常に争いがありまた災害がある。

そんな世界に野心を持った一握りの者達が、力で富を得ようと考えるのだ。


現在隣国3つが戦争状態に入ったようだ。流石に我が国には戦火は飛び火していないが、何処にでもバカはいるもの気を付けておこう。



              ◇


1年後。


戦火が広がって来た。

このまま行くと我が王国にも手を出す勢いのようだ。


国王からの呼び出しに王都に向かい王と会う。

「カイト侯爵呼び立ててすまんの。実は戦争の話じゃ、其方も聞き及んでおると思うが。

共和国が倒れ、新しい王国が誕生したようで。その王国が我が国に一方的に要求をして来たのじゃ。」

と言いながら信書を見せてくれた。


【我はセンジャ王国建国の王であるセンジャだ。我が王国の軍門に降るならば、攻め落とさずにすませよう。断るならば明日はないとしれ。期日は10日、遅れることなく。我が軍勢50万が国境で待つ。】


と言う内容だった。


「何ですか。この馬鹿者は。」

と私が言うと

「共和国を倒し隣国2つに勝利した為、世界統一を目指しているようじゃ。国内はかなり疲弊しているようで、戦地では酷い略奪が行われていると聞く。そこで相談じゃが、国境の50万何とかならぬか。」

と言う依頼であった。


あの頃を思い出しますね。

「分かりました。せっかく我が王国が安定して来たこの時期に戦争は不要ですね。ひと暴れして来ましょう。」

と答え戦場に向かうことになった。


同行はアリスとイデアだ。

3人で馬車で国境に向かうと、国境を持つ男爵が祈るように挨拶に来た。

そりゃそうだよな、50万を目の前にしたら生きた心地しないよな。


期日の1日前に国境に着く、こりゃ初めから戦争する気の日程じゃないか。

矢文を使い回答を送りつけた。

「国境を越えれば、命の保障なし。これが最後通知。」

と言う文面の。


次の日の朝、大きな音を響かせて50万の兵士が動き始めた。

地平線を埋め尽くすような数だ。

よって私とイデアで、殲滅級の魔法を打ち込むことにした。

「スター・ホール」と「アブソリュート・ゼロ」

を広範囲に打ち出すことにした。


魔力を練り込み準備する。敵軍が国境を超えて来た、その数10万ほど。

ここで魔法を発動。


すると世界が真っ白に塗り替えられた途端、空から燃えたぎる隕石が降り注いできた。

「ドカーン。ドカーン。」

と言う地面を揺らす音が敵軍を包み込む。


水蒸気が消えて見え始める、焼けひしゃげ氷ついた敵軍の兵士の死体が台地を覆っていた。


今度はアリスを伴い、その中を歩き敵軍の大将首を探す。

後ろの方で混乱している天幕が見えて来た。


私は近づく敵軍に雷撃を撃ち落としながら、進む。

アリスは近づく者を一太刀で切り捨てて歩く。

二人の死神が敵軍の主力を紙のように打ち破りながら大将首を打ちに進む。


「あの二人を止めよ!できた者には将軍の地位を・・・金貨1000枚を・・とにかく助けよ!」

と言うところで、目の前にたどり着いた。

「覚悟は出来ているにであろうな。名も知らぬ馬鹿よ。」

と言いながら私は雷撃を落とし、大将を討ち取る。

そして魔法で声を広げながら

「我はライディンなり。立ち塞ぐ者には雷を落とす者なり。これより帰らぬものは死あるのみ。」

と言うと雷の雨を降らせまくる。


生き残った数十万の兵士らが我先に逃げ帰る。

それを追うように歩く3人。


敵国の王都が見えたところで、警告する。

「我はライディンなり。国王よ城を捨ててひれ伏せるが良い。1時間待とう、それ以降は城ごと滅ぶが良い。」

と魔法で声を王都中に広げる。


1時間後誰も出てこない城に特大の雷撃を打ち落とす、それも数十の。


空を染める雷撃の光が消えた後、城があった場所に有るのは瓦礫の山が残っただけだった。


この戦いを「ライディンの雷(イカズチ)」と言い、意味は全てを消し去る事という意味の言葉だそうだ。


そして「一月王国」と言う意味の言葉も流行った。意味はのぼせた馬鹿の末路は早い。と言う意味だそうだ。



3人で戻ると、王都はまたお祭り騒ぎ。

「これで良いのか?」

と思わないこともないが、これで暫くは戦争をふっかける国はないだろうと思うことにした。



ーー  子供が産まれました。



国境の名前が「首塚」と言われる頃に、私の子供が誕生した。

数十万の死と一人の誕生、計算は合わないがこれがこの世界。

私は自分の手が届く範囲の命を守る事を本質に、生きるために死を振りまく人生を生きるのだと思った。


我が子をその手に抱き、思う。

「お前が幸せな人生を送れるように父は頑張るよ。」

と。



周辺国から我が王国は恐怖の対象のようだ。

一人で国一つを滅ぼす男が居る国、怒らせるべからず。

すると調子に乗る同国の士がいる。


隣国との交易で無理難題を言ったり、代金を踏み倒したり。

当然判明すれば、その貴族は存在自体がこの世界から消える。

しかし相手には分からないもの、横暴な王国と見られ始めてきた。

これが次なる問題の始まりとなる。

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