第6話 戦争に王家の争いとSランク
ーー 3人娘の行先は。
7日ほどすると完全に食料の相場が安定し始めた、再度買い付けに向かうと言うケニーさんが。
「あの子らを我が商会の専属で雇いたいのだが。」
と言い出した。
3人に意見を聞くと、しばらくケニーさん元で商売の基礎を習いたいと申し出たので、一月と期限を切って許した。
私は新たに作成した魔法袋をケニーさんに手渡しながら、
「これは私らがついて行かない代わりのものです。大事にしてくださいね。」
と言うと
「ありがとうございます、大事に使わせてもらいます。」
と頭を下げた。
その後1月間、3人はケニーさんについて行き商売のイロハを習ったようだ。
◇
依頼が終わり3人が報酬をもらいケニーさんの元を帰ろうとしたところで、ケニーさんが呼び止めた。
「君たちが良ければ、これからも我が商会で専属契約を結んで欲しいのだが。どうかな考えてみて欲しい。」
と熱心に勧誘していたのが印象的だった。
そりゃそうだろう、商売人として欲しいものを全て持っているような3人を手放す商人は、本物ではないだろう。
ケニーさんから私の作った収納袋の購入の相談があった。
私の収納袋は時間の流れが緩やかになるように魔法が付与されている。
これも商売人にとって喉から手が出るほど欲しい物だろう。
「そうですね、あの魔法袋は使う人(取り出す)を指定出来る物で盗難防止にもなる優れものです。」
と切り出した後
「私も商売がしたくてね。ケニーさんがいいなら私の商品も売ってくださいよ。」
と言うと、ケニーさんが目の色を真剣に変えて
「商売のことならじっくり伺いましょう。どうぞ。」
と応接室に呼ばれた。
僕が取り出して見せたのは、シャンプー、石鹸とゴムで織った下着だ。
「これは何と言うものを・・・。」
暫く触ったり使ったりしていたケニーさんが
「わかりましたこれらの品は、私が責任を持って売りましょう。」
と言うので、
「それでは手付けで、あの袋は差し上げましょう。これ以降は有料ですからね。」
と言った。
これより私はライディン商会という名で商業ギルドに登録し、ケニーさんを通じて販売をはじめたのだった。
ーー 商売人としての商品開発
ライディン商会の製品のラインナップは、
・コスメとして
シャンプー、石鹸、化粧水
・服として
女性用下着上下、男性用下着、ゴム底靴、女性用のドレス類
・武器として
属性の付いた刀剣類、属性はないが質の良い刀剣類
・収納袋
魔法の収納袋各種
で、最後の収納袋以外は誰でも購入できるが、大量買は禁止している。
暇暇に私はこれらの製品を作っていたが、需要に追いつかなくなった。
「どうしようかな。」
と思いつつ構想を練る私。
私は、分業制にして多くの人に仕事を振ることを考えた。
丁度その頃、私は冒険者ギルドから指名依頼を受けた。
「ある令嬢を王都まで送り届ける依頼だ。しかも人数は少数で。」
という依頼内容で、これをクリアできるのは私たちのパーティーだけと考えた、ギルマスが指名依頼にしたのだ。
指定された日にメードの街を治めるトーラル子爵の屋敷に向かう。
案内のまま屋敷に入り、応接室に案内された私たち。
暫くすると、少女を伴った、男性が現れた。
トーラル子爵様のようだ。するとその横の少女が警護対象かな。
と思っていたら、
「待たせた。君たちが「ライディンの雷」で間違いなか。」
と子爵様が聞いてきた。
「はい私がリーダーのカイトです。彼女らはパーティーメンバーです。」
と答えると、少女が
「私と同じくらいの少女ばかり、貴方はハーレム願望があるの?」
と突然聞いてきたので
「二人以外は、私たちが保護した者でそのままパーティーに入っただけですよ。私はまだ子供ですからハーレム思考はありません。」
と答えると、「「「え!」」」という声が漏れ聞こえたが無視した。
「ふんーん。それならいいわ。私はエルメア16歳よ。よろしくね。」
と言った。
すると子爵様が
「この者達で良いのですね。」
と確認し、話は決まった。出発は2日後。少女以外は二人の侍女がいるだけのようだ。
馬車で迎えに来ることを約束して子爵様の屋敷を後にした。
私以前から護衛用の馬車を考えていた。
魔法の付与を大いに与えた、防御と快適さに優れた馬車を作っていたのだ。
「こんなに早くお披露目の時が来るとは。」
感慨深く馬車を見つめる僕にイデアが
「この馬車凄すぎますよね。」
と感想を呟いた。
約束の朝、子爵様の屋敷に迎えにゆくと。
荷物の山が見えた。
「これは?」
と尋ねると、二人の侍女が
「「お嬢様のお召し物です。」」
と答えたが私らに荷物の問題はないも同然。
馬車の後ろに備えた扉を開けて次々に収納して行くとあっという間になくなった。
「ではおエルメア嬢様どうぞ。」
と言いながら馬車にエスコートした。
「こんな小さな馬車で私を・・・何ということ。」
突然声のトーンが変わった。
エルメアお嬢様は、馬車が気に入ったようだ。
外からはこじんまりとした馬車だが、実は空間拡張がされており、とても中は広い。
当然振動対策もしてあり、クッションやマットレスが引いてあるベットも備えているので、屋敷と言える快適さだ。
中は幾つかに区切られており、寝室が4つに台所、ダイニング、トイレに浴場まである。
窓はマジックミラーになっており、当然防弾の付与がされている。
壁も断熱と防弾の付与及び浄化魔法が付与され、いつもきれいな状態を保っている。
マットレスの効いた座席は座り心地が良く、3列のリクライニング仕様。
遮光をすれば昼でも真っ暗な空間ができる。
馬は特別に魔馬を捕まえてティムして使っており、馬の数倍の速さで進むことが出来る。
王都に向けて出発する私たち、始めの御者はアルマが担当する。
街を出てから暫くして私はエルメアお嬢様に聞き始めた
「警護を受けた以上ある程度の事情を知らなければ、守ることができません。可能な限りお話しください。」
というと。
「当然ね。いいわここだけの話できてね。」
というと、ことの成り行きを話してくれた。
【ミセール王国は現在、病で倒れた現国王の跡目争いで揉めており。
第一王子、第二王子、第三王子、第一王女と私第二王女がその渦中にあるの。
残念なことに第一、第二、第三王子らはその後ろ盾の貴族の領地で身を隠しながらお互いの命を狙っている状態で、先日第一王子が暗殺されました。
第一王女はトーラル王国に輿入れが決まっており、その後ろ盾てと武力を持ってセミール王国を狙っている。
当然私も暗殺対象となっているけど、私は王位に興味などないわ。ただお父様を助けてあげたい出来ないまでもそばに居て最後を看取りたいの。】
という話だった。
そこで私は、国王の病気を詳しく聞くとある症状によく似ていることに気づいた。
「エルメアお嬢様、国王の病気を治せるかもしれません。」
というと、真っ赤になったお嬢様が
「簡単に嘘を言わないで。王国の名医が誰も原因がわからず、死期を待つだけと言うのよ。」
と憤慨するので、
「そう怒らずに、聞いてください。名医という人たちが直せないからもう無理だというなら、諦めてもらって結構。ただ私はその症状の病によく効く物を知っているだけ。必要がないなら忘れてください。」
というと、顔を青ざめたお嬢様が
「謝罪します。もしその言葉が本当なら私は貴方のために何でもしたしましょう。」
と答えたので
「ご期待にお応えします。」
と応えた。
旅は予想通り、どこで聞きつけてきたか。山賊や盗賊がわんさかと押し寄せて来るし、宿にも刺客が待ち構えていたりしたが、私らの場合馬車で休むのでその心配は要らなかった。
もう直ぐ王都が見えるというところで、兵隊が500騎現れた。
「そこの馬車止まれ。中のエルメアを出せ。さすればお前達は命を助けてやろう。」
と一人の若い男が叫んだ。
「第二王子です。」
エルメアがそう言う。そこで私は
「第二王子とお見受けします。私は医者で王都に向かっております。そこを通してください。」
と答えると
「医者だと。余計通せぬな。者共囲みエルメアを捕らえよ、抵抗すれば殺して構わぬ。」
と下命した。
走り来る騎馬に私は馬車を突っ込ませる。
魔馬の引く馬車を止める騎馬など存在しない。
当たるを幸いに跳ね飛ばしながら進む馬車。
「どうしたお前ら。馬車を止めんか!」
王子の檄が飛ぶが、止まるはずもなく進み抜けた後、私はUターンをした。
王子に向かい馬車をはしらせたのだ。
危険を感じた騎馬隊は弓を打ち出すも、馬車には刺さりもしない。
「王子お逃げください。」
その言葉を最後に第二王子の意識は途切れた。
その後意識を失った王子を馬車に詰め込み、王都へ進む馬車。
「何故、兄を捕らえたのだ?」
というとエルメアに
「担ぐ神輿がなければ第二王子の後ろ盾は動けないでしょ。」
と答えて王都に入ると、そこには1000人からの兵が待ち受けていた。
「ここも押して通るよ。」
私はそう言うと、魔法を繰り出した。
「アブソリュート・ゼロ」
その瞬間に一面氷も世界に変わった。
誰一人動けぬ中を馬車は進む。
「あ、兄です。」
と言うエルメアの言葉で第三王子も捕らえて進む。
王城に着くと宰相の公爵が出迎えた。
「よくぞ戻ってきた、エルメアよ。」
するとエルメアは
「叔父様、医者を連れて参りました。お父上の所に向かいます。兄上達をよろしく。」
と言って王子らを転がして奥に向かう。
私とエルメア二人である部屋に入ると。
ベッドの上で弱々しい寝息を立てる国王がいた。
私はそばに立つと診察のために「鑑定」を行う。
「脚気」
と病名が表示された。
「やっぱり考えた通りだ。それならこれで治る。」
そう言いながら脚気に効く薬と回復魔法をかけた。
効果は目を見張るほど、直ぐに意識を回復した国王は
「何故か体調が良くなった。お主は医者か?」
の言葉に
「はい私はエルメア王女の医師です。」
と答えたところで、エルメアが国王に飛びついて泣き出した。
私はそっと部屋を出ると廊下の先で待っていた宰相に病状が回復したことを話した。
依頼を達成した私は戻ろうかと考えていた所に、また指名依頼が飛び込んできた。
王都のギルドに向かうと直ぐに部屋に通され
「悪いが指名を受けてほしい。依頼はこの国の防衛だ。隣国トーラル王国が20万の軍で進軍中との情報がきた。この国を救ってほしい。」
と言われた。
そこで私はパーティーメンバーにどうするか確認した。
「カイトさんだけで蹴散らしてきてください。私たちは王都に見学の予定があります。」
と言われ、私は仕方なく一人で国境の砂漠に向かった。
ーー 20万対1人の戦い
馬車を走らせ5日ほどで国境に着いた。
そこには大きな砂漠があり、自然の国境になっているのだが、そこに大軍が来ていた。
私は魔法で声を大きくし
「これから先は戦になります。お戻りください。」
と言うと、相手からも
「そこを退け、踏み潰すぞ。」
と言ってきた。仕方ないな。
土魔法で低いがしっかりとした区切りを長さ3kmで引くと
「これより一歩でも入れば命はない。」
と再度警告して、よく見える場所まで下がった。
相手はそこを無視するように大群を進める。
私一人しかいないのを確認して、笑いながら。
そして雷撃が大軍を襲った。
「ドドドド〜ド。」
世界が真っ白く光、音が空気を切り裂いた。
静けさが戻った時に、国境を超えて立っている者は一人も居なかった。
倒れた兵の数は役1万人。その光景を見た兵士は足を踏み出すのを恐れ、後ろに逃げ出し始めた。
「止まれ!どうしたのだ?今のは落雷であろう。」
司令官が言えば、ある兵士が
「ならばあそこにいるのは、神に違いない。」
と言いながら逃げ去った。
「司令官は後方の兵を前に出し、また国境を超えさせた。」
「ドドドド。」
再度雷鳴が轟、国境を超えた兵士は一人も立っていなかった。
私は再度魔法で言う
「今度は私から見える兵士を打ち倒そうぞ。」
と言いながら右手を上げて、上空に雷雲を呼べば。
残りの兵は死に物狂いで逃げ始めた。
20万の兵が一人に負けた瞬間である。
兵が逃げ去った後に残された兵士の骸を、火魔法で燃やすと3日燃え続けた。
この様子を遠目に見た兵士が、
「この世の戦いでもない一方的な蹂躙でした。」
と青い顔で報告していたらしい。
王都の戻ると、王城の前に沢山の兵が。
すると第二王女のエルメアが兵を割って出てきて、
「救国の英雄にお話があります。此方にどうぞ。」
と私を王城に招いた。
ピリピリとした中、国王と宰相の待つ執務室に入ると扉が閉められ。
「此度は我が王国の存亡につき感謝の言葉もない。我が命と王国二つとも守った其方に王国として然るべき報酬を与えなければ、神の神罰を受ける。」
と国王が言うと、宰相が。
「冒険者カイト。その方に伯爵の爵位を授け、その領地を与える。更に第二王女エルメアを降嫁させるものとする。」
と言うと有無を言わせぬ勢いで、署名のある命令書を渡してさっさと逃げ出した。
残ったのは、エルメア嬢だけ。
「驚いたでしょう。これも運命と諦めてね。それと彼女らは私の離宮にいるから。後で連絡するわ。」
と言うとさっさと立ち去った。
残された私は城の者に恐れられながら、王都の街に歩いて出た。
1番近くにあった宿に部屋を取り、ギルドに向かうと指名依頼の完了を報告した。
「何!トーラル王国軍2万を殺して残り18万を追い返したと。あの噂は本当だったのか。」
とギルマスが呟き
「今日からお前はSランクだ。」
と言ってゴールドのカードを差し出した。
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