第5話 テーゼの街の拠点と新しい家族

ーー  拠点に戻る



メードの街から拠点の街テーゼに帰るため、警護の依頼を探す。

すると丁度アスカ商会のケニーさんが依頼を出しに来たのに出会った。

「こんにちは、ケニーさん。依頼ですか?」

と声をかけると

「カイトさん。ええまたテーゼの街まで向かうので。」

と言うので

「私たちも帰るつもりで依頼を見てたんですが、何時ですか?」

とさらに聞くと

「明後日です。日程が合えば是非お願いしたいとこですが如何ですか?」

と言うのに

「良いですよ。朝に門で良いですか。」

と聞くと

「カイトさん達なら別にお願いしたいことがあって、朝店までおいでもらって良いですか?」

と言うので了承した。


                ◇


2日後。


アスカ商会に向かうと、ケニーさんが待っていた。

「朝早くからありがとうございます。別の依頼はこれです。」

と言いながら生肉と生魚を見せながら。

「この商品をカイトさん達の収納で保存しながら運べませんか?」

と聞かれた。


「確かに私の収納なら時間の経過がほとんどありません。良いですよ。」

と答えると。

「やっぱり。」

と声が聞こえた。


荷物を収納し隊列を組むとテーゼに向けて出発した。



今回は途中の山賊も居ないし、魔物も減っているのでかなり安全な警護になる。


山賊が出た山岳付近で野宿の準備をした後私はアリスに

「山賊の宝を探してくる。」

と言って1人キャンプを離れた。




              ◇



山賊の形跡を辿り、アジトを探すと意外と早く見つかった。


街道から裏側に位置する場所に横穴があり、その奥がアジトだったようだ。

中に入ると、7日ほど経っていたので。人気がないと思っていたら人質になっていた子供が3人いた。

水だけで7日間過ごしていたため、かなり衰弱している。

回復魔法を当てて、浄化で身綺麗にし意識が戻ったものから食事をさせた。


「貴方は、山賊なの?」

1人の少女がそう聞く

「いいや、違うよ。私は山賊を退治した冒険者だ。」

と答えると

「山賊は、退治されたの」

と再度確認するので

「そうだ。皆退治された。」

と答えるとやっとホッとしたようだ。


山賊は意外と宝を溜め込んでいたようで、それを全て回収して子供らを連れてキャンプ地に戻った。


テントに子供らを入れてアリス等に子供等のことを伝えた。

「テーゼの街まで連れて行くのですね。」

と喜んでいるようだった。



次の朝、ケニーさんに山賊のアジトで子供を保護したと伝えた。



そのままテーゼまで連れて行くことにした。





           ◇



その後は特に何もなく、テーゼの街に着いた。


ギルドで依頼完了の報告をし子供達をアリスに任せて、私はケニーさんと共に商会に行く。

そこで生肉などを出すと。

「氷魔法で氷を作れますが、要ります?」

と聞くと「是非に」と言われ、かなりの量の氷を出しておいた。


ギルドに戻ると、アリス等がギルド職員と何か話をしていた。

「どうしたんだ?」

と聞くと

 この子供達の保護者がいないと言う事で、孤児院で預かると言われたそうだが。引き取り手のいないこの子達の行く末が心配だとアリス達が。自分等で保護すると言い出して話し合いが行われているようだ。


「それで話はついたのか?」

と聞くと、

「子供を簡単に預かると言いますけど、貴方達にその能力があるんですか?」

と初めて見る職員が胡散臭そうに私等を見る。

「最近では子供を売り飛ばす輩もいる様なので、こちらも慎重に対応しているんですよ。大体貴方達に子供3人も育てる経済的力が有るんですか?」

と偏見の目で見る職員に少しばかりイラッとして。

「ギルドマスターを呼んでもらおう。」

と言うと

「貴方達程度が元Sランクのギルマスを呼びつけるなど、身の程を考えなさい。」

とさらに言うので、オロオロしている受付嬢に合図を送った。


直ぐにギルマスが現れた。

「何騒いでいるんだ。」

と言うギルドマスターに

「騒いでいるのは、誰かさんと同じで、見た目で誤った判断をしているこの人だけだ。」

とこたえると

「まあなんて事を、だからランクも低い冒険者は常識も無いのですから。」

と大袈裟に叫ぶ職員にギルマスが

「お前が悪い。話はこっちで聞く、それと依頼達成の証明はあるか?」

と言いながら私等を部屋に案内した。

向こうでヒステリーな声がしていたが「ヒイー。」と叫び声が聞こえたと思ったら静かになった。



子供等は私たちの拠点で預かる事になった。

ギルドランクもBとなり、この街では3本の指に入るクラスになった。



ーー 子供ら  side



私達は、同じ村の出身で盗賊に襲われ拐われた身の上だ。

以前捕まった山賊らがその犯人で、村人は私ら以外は殺されたり売られたりしている。


私はサニー 12歳、他はリーゼ 11歳とカンヌ 11歳だ。

突然山賊が姿を消し、7日間飢えを凌いで生きていたら。

若い男が助けてくれた。彼は山賊を退治したと言った。


馬車でこの街に連れて来られた時、世話をしてくれたアリスお姉ちゃんやイデアお姉ちゃんが心配して一緒に暮らそう。と言ってくれた、とても嬉しかった。


色々あったけど、大きなお屋敷みたいな家に連れて帰えると。

3人のお姉ちゃんらにお風呂というものに入れられ、身体中をきれいにされた。


温かいご飯を食べ眠くなったところで、個別の寝室に連れて行かされて。

「今日からここがサニーのお部屋よ。綺麗に使ってね。」

とそれぞれが言われたみたいだ。

お布団に入ると、あっと言う間に眠っていた。

物凄いお布団だったの。


次の日3人で、

「何かやらせてください。」

と言うと

「大人になって何がしたい?何をやってみたい?」

と聞かれ。

・サニーは、商人

・リーゼは、薬師

・カンヌは、冒険者

と答えると。

カイトさんが、

「今日から夢に向かって訓練するぞ!」

と言ってくれた、嬉しかった。



そしてその日から私たちの勉強と訓練は始まったのです。

「サニー商人は、読み書きそろばんが必要だ。そして収納魔法だ。」

「リーゼ薬師は、読み書きに加え錬金術それと関係する魔法が必要になる。」

「カンヌ冒険者は、身体強化と攻撃魔法それと回復魔法だ。」

と言われ、日々カリキュラムというものをこなしている。


特に難しいのは、身体の仕組みや働きと火や水の変化や構成だ。

聞いたこともない話を実験というもので目に見えるようにしてくれる。


とにかく頑張るしかない、3人で教え合って日々を乗り越えている。




ーー  1年6ヶ月が過ぎた。



この年は各地で作物の不作が続いて、飢饉になりかけている地域も多くあると聞く。


子供達もかなり成長した。

・サニーは、基礎の読み書き計算は十分にできるようになり。

つい最近 

 「収納魔法」

を始め、

 「氷魔法」「水魔法」「火魔法」

を使えるようになった。


・リーゼは、同じく基礎は十分。

さらに

 「錬金術」「創薬」「浄化」「解呪」「解毒」

を習得した。


・カンヌは、同じく基礎は十分。

さらに

 「身体強化」「水魔法」「火魔法」「土魔法」「回復魔法」

を習得しさらに

 「気配察知」「MAP」

もものにした。


同じようにパーティーメンバーもそれぞれレベルを上げスキルを伸ばして、ギルドランクはAになった。



                 ◇



そんな時にアスカ商会のケニーさんが訪ねてきた。

「お久しぶりです。カイトさん。お元気でしたか。」

と挨拶をしたケニーさんは、疲れて見えた。

「どうしました?お疲れのようですが。」

と聞くと

「最近の作物の凶作で、王国内の各地で食料が足らず。それを手配する私達商人も苦労しているのです。」

と話だし次のように話した。


 この凶作はこの国が1番ひどく、他の国から食糧を持って来れればいいのだが。

直接仕入れでなければ、通常に2〜3倍に値段で購入する事になる。

直接仕入れに行っても、運べる量に限度がありあまり儲けが出ない。


という事で、大きな商会が買い占めに走り最近ではさらに値上がりしているという。



「ということは、私らに警護依頼と言う運搬を頼みたいと。」

と私が言うと、

「その通りです。いかがでしょうか?」

と言われた。

「そうですね。以前話していた事をお見せするためにもいい機会です。受けましょう。」

と答え明日にでも出発する事にした。


私はパーティーメンバーにその事を伝え、さらに3人にも連れて行くと伝えた。


次の日の朝、アスカ商会に集まるとケニーさんに挨拶をした。

「おはようございます。カイトさんとメンバーの方々に・・あの時の子供ですか?」

と言うケニーさんに

「彼女らにはきっと驚きますよ。」

と言う私の言葉に何か感じたケニーさんは、

「分かりました。旅の中で確認しましょう。」

と答えた。



           ◇



旅に出て7日目。


商人の中で病気になった者が出た。

するとリーゼが

「私にお任せください」

と言って、

 回復魔法をかけた後、薬を処方した。

すると商人は一晩で快癒したのだ。



旅10日目。


後10日と言うところで、魔物が出てきた。

するとカンヌが

「この程度なら私が」

と言って走り出すと、30余の魔物を殲滅した。



その後は特に問題なく、目的地のグスタング王国の街に着いた。




             ◇



アスカ商会は、かなりの量の穀物と生鮮野菜を購入したようだ。

普通なら10回相当の輸送になる。


ここでサニーが

「私が収納します。」

と言いながら次々に収納すると約半分を収納した。

私たちのパーティーメンバー以外が収納した事に驚いた、ケニーさん。

そのあとイデアが残りを収納。

そして私が

「まだ十分収納できますよ。」

と伝えると、大急ぎで購入するケニーさん。


そして通常の20倍の物資を購入して帰途に着く。



これからが問題の移動だ。

何故なら、これだけの食料を持ち込めば当然我が国の食料の値段が下がるはず。

それでは美味い思いをしていた者達が何事かすることが予想できる。


ダミーの馬車体を連れての帰りの旅路。


途中途中で、妨害行為が頻発するが、3人の少女の活躍で問題なく通過する。


最大の妨害が、国に戻る直前の山賊風の襲撃だ。

しかもこちらはかなり手前で気づいていたので、出てきた瞬間に殲滅終了。

ついでに依頼者も判明しこれからどうするか決めるところ。



               ◇



王都までにを運び、倉庫に納入。暫くはこれの警護となる。


アスカ商会が大量の食料を仕入れたことは、直ぐに知れ渡る。

食料の値段が急落し、平常に近くなる。

すると夜に、不審な者達が倉庫に近づく。


鍵をこじ開け中に入るがそこには何もない。

「どう言うことだ。空じゃねえか。」

と言いながら首謀者は、外に出る。

残った男達が火を放つ準備をする。


すると突然落雷が「ドドーン」と鳴り、男達が倒れる。


憲兵を呼び男達を「泥棒」として突き出す。




次の日、アスカ商会は嘘を言っている。食料はない。

と言う噂が流れた。その噂の元をたどり依頼者を確認。


アスカ商会の店頭には山のような食料が並ぶ。

「皆さんアスカ商会では多くの食料を新鮮なまま揃えています、あわれずにお買い求めください。」

というケニーさんの言葉に多くの客が商品を買ってゆく。

その夜、また不審な男らが倉庫に。

同じことが繰り返される。


毎日アスカ商会では多くの客が食料を買い求め、高い値段の古びた食料は誰も買おうとはしない。

高値で販売していた者らが安値で売り出すも、売れない。

その理由は、アスカ商会の食料は新鮮なのだ。


取り立てのような野菜や肉。穀物も保管が管理されていて煮えていない。

馬車で長旅をすると太陽熱で煮えることがある。


そう言う理由で、不味い食料は売れるはずがない。

大赤字を出し始めた、商人らが買取に話を持ち込むが断ると。

実力行使に動き出した。


20人ほどの男らが、商会に訪れ商品にケチをつけ暴れようとしたのだ。

私はその前に立ち、威圧を放つ。

今の私の威圧をまともに受けて立っていられるものなど数えるほどしかいない。

当然のこと、意識を失い倒れ崩れる男達。リーダーらしき男を起こし依頼者の元に案内させる。


そこは王都でも一二を争う商会だった。

「お宅の依頼した男らが邪魔で困っている。」

と言うと店の奥から出てきた男が

「それなら店を閉めれば済むこと。」

と言うので、

「何か勘違いしてませんか?道端に倒れていて、お宅の食糧を食べて倒れたと言うので連絡に来たんですよ。」

と言うと

「なんですと、うちのものを食べて倒れていると言うのですか?」

と怒ったように言うので

「見にくれば分かりますよ」

と言いながらそこに来ていた客に聞こえるように

「ここの食べ物は気をつけないと、倒れますよ。」

と言いながらその場を去った。


直ぐに店のものが現れ、アスカ商会の先に倒れ伏す30人ほどの男らを見つけ慌てて店に戻る。


こんなことがありさらに売上が下がった商会は、暫く店を閉めたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る