僕は死んで転生したらしい
俺はつい最近まで穏やかでとても幸せな日々を送っていた。勉強に追われている点を除けば、世界一可愛い彼女がいたり、彼女の作る最高に美味しい料理を食べられたりと、とても充実していた。
それなのに、そんな時不幸な事故が起きた。
ベランダからの転落。一瞬の間に何が起きたかを把握しきれなかったが、僕の体は重力による浮遊感に包まれて頭に衝撃があったと認識する瞬間に意識が途切れた。だから僕は天に召されたものだと思っていたのだが……。
あれ、なんだか眩しい。
さっきまで麻紀の作ったカルボナーラを食べていたはずなのにどうして僕は見慣れない天井を眺めているのだろう……?
体を起こそうとしたが、どうにも体が起き上がらない。重くて動かない。ふと疑問に思って視線を自分の体に巡らせる。体が小さい。いや、それだけじゃない。なんだか手足は少し張っている。まるで赤ん坊のように。
と、そこに一人の女性がやってきた。それもかなりでかい。一体どういう……?
「実紀ちゃん、おはよう」
彼女はそう微笑んだ。
「今日はお姉ちゃんも来たよ」
声を弾ませて入ってきたのは可愛い少女。つまりこの子が僕の姉、ということだろう。それにしても、こうも小さいうちから顔立ちが整っている子がいるとは心底驚いた。
「麻紀ちゃん、この子が妹だよ」
「よろちくね、みきちゃん」
あれ、今……。確かに「麻紀」って言ってたよな……?
だとしたらもしかして……
そう考えてから自分の考えを否定する。
僕が一度死んだのなら、ここは未来だと考えるのが妥当だろう。同一人物だなんてありえない。
僕が死んだのが二千二十年だから今はそれよりも未来
なのだろう。
とりあえず今日の日付を確認したいがこの通り全く動けないので今はお預けだ。おまけに言葉も喋れない。赤ん坊だから……。
さて、今はまだ朝らしい。けれど朝だからといって一日特にこれといってすることもなく、退屈な一日になりそうだ。
最も不便に感じたことは、自分でトイレに行けないこと。行きたくなってもそれだけの筋肉がないから歩くことはもちろんはいはいもできないので、あらかじめはかされた紙おむつに全て出さないといけない……大も小も。さらに言えば自分は排泄してとても居心地が悪いから、どうしても交換したくなる。けれども自分では変えられないから、それを周りに伝える必要がある。要するに、泣き喚く必要がある。そうでなければ気づいてもらえない。最悪、匂いでも気づいてもらえるかもしれないが、それまで耐えるのもなかなかに辛い。だから泣くという行為をしなければいけない。なんとも辛い……。
そうしてとても退屈だと思いきや思いの外忙しかった転生後初めての一日が終わった。
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