第一章 幼少期編

第2話 異世界転生は突然に

 目を覚ますと見知らぬ天井がそこにはあった。


(何処だここ……体は……動く……!!)


 腕を動かすと赤ん坊の手が目に前にあった。


(寝返りが出来ない……なんだこれは……赤ちゃんの手?)


 体が思うように動かない状況で少しパニック状態に落ちているところに、見知らぬ女性が確認するかのようにこちらをのぞき込む。


「∧☆∮¥*≒※」


(聞いたことのない言語だ……何を言っているんだ……口も上手く動かない)


「あうあうあー!(ここはどこだ!)」


「∮∧○*〒□」


「あうあうあー(お前は誰だ!)」


 必死に問いかけるが意思の疎通が一切とれない状況に癇癪を起こして暴れていると、見知らぬ女性から両手が伸びてきて抱きかかえられる。


(うおぉぉぉ! まてまてまて!)


 目の前に大きな乳房が迫ってくると、本能的に栄養補給をしてしまった。


(落ち着け……落ち着け……この状況はなんだ……俺にそんな趣味はない……ということは夢? これは俺が潜在的にもっている母性に対する性癖? いやいやこんなプレイは好みではない……ない……ないはず?)


 栄養補給により多少冷静さを取り戻しつつある三太であったが、その安心感が性癖に変換されてるあたり混乱状態は継続しているようだった。


(夢だな……昨日はゲームで惨殺されたから無意識に癒しを求めているんだろう、そうでなければこの状況を理解できない。まあこんな体験夢でもそうそうできるものではないし楽しむか)


 夢と結論づけて安心したのか、ふたたび深い眠りに落ちていった三太であったがまさかの事態に遭遇し覚醒してしまう。


(う○こ……これはう○こなのか……しかも下痢……27歳にもなって……いや今は赤ちゃんなのか……いや、そういう問題ではない! 夢とはこんなにもリアルだったか? 否! これは夢ではない! 夢ならばこんな恥辱は耐えることが出来るはずだ!)


 現在、真島三太は絶賛おしめを替えられてる最中である。


(くっ殺せ! こんなプレイ……こんな……)


 慈愛に満ちた笑顔は恥辱プレイに悶えている三太にむけられ、大きな手は頭を撫で去っていった。

 遠くでは男の声も聞こえるが何を言っているかさっぱりわからない。

 下もすっきりしたことで、時間と共に頭もすっきりしてきた。


(状況を整理しよう、ベッドに横になって……そのまま寝て……起きたら赤ちゃん? そう今の俺は赤ちゃんだ、これはわかったが夢にしてはリアル過ぎる……お腹もすくし、便意も尿意もある……知らない女性あれは母親なのだろうが……見た目はヨーロッパ系? 言語は聞いたことない)


 冷静になればなるほどある一つの可能性に辿り着いてしまう。ただ、自分が知っているそれとの違いがあり、状況があまりにも突然すぎた。


(異世界? これが異世界転生? いやいや! 女神は? 創造神的な存在は? 「あなたは不幸にも死んでしまいました」的なくだりは? そもそも俺は寝てたはずで死んではいない! いや……そういうパターンもあるのか……ん~折角ならチート的な能力を授かる儀式とか通過したかったな〜、でも勇者とかは勘弁だなぁ……俺tueee!!!!してハーレムとか無自覚主人公の「俺何かしちゃった?」みたいなテンプレは虫唾が走る! あ〜鳥肌が……あっ違うこれしょんべんだわ)


 異世界転生とは突然に訪れるそれはテンプレであるがゆえ、ゲーム脳のヲタクはシミュレーションを怠らない。


 突然の交通事故、女神か神のような存在によるシステムのチュートリアル。


 魔法陣による召還ルートで王族の善悪にゆだねられた分岐ルート。


 大きな衝撃か生死をさまよう事で前世を思い出すパターン。このパターンには、ゲーム内のキャラに魂が宿る不思議ルートと男爵家に産まれ不遇からの成り上がりだろうか。


 ヲタク的脳みそは、そのいずれかの主人公になった場合の行動を妄想しながら現実逃避をするのが日常だ(偏見)。


(このパターンは何だ? そもそもこれは夢か? 可能性は無限大だが、考えるはまた明日にしよう……むにゃむにゃ)


 誰かが言ってた、明日やろうは馬鹿野郎だと。

 だがしかし、真島三太は思考を放棄して深い眠りにつくのだった。

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