異世界で過ごす悪役ロールプレイ【コミカライズ連載決定】

む~ん

プロローグ

第1話 PKは至高

「くそっ! これ絶対に有志を集めて張ってたよねぇ!!」


 真島三太はゲーミングチェアに座ったまま天井を仰ぐと、コントローラーを投げ捨てた。


「くくくっ あっはっはっはっはっ いや~いいねいいねぇ」


 ゲーム内では二つ名を付けられる程、有名な嫌われ者のPKプレイヤーにとって、自分一人の為に複数のプレイヤーが団結して攻撃してくるような出来事は、ゲーム内で悪役ロールプレイをしている本人にとってはご褒美であり、楽しみの一つだった。


 ゲームの世界で普通にプレイする意味ある?というかなり拗らせた性格ではあるが、リアルではとても心優しい社会人のフリをしている男(27歳)とは言え、義理堅さでは負けない。


しかし、その性根は闇深い。


「おっ! あった! これだな」


 無造作に置いてあったスマートフォンを手に取り、とある掲示板を開く。


そこには


Crazy ruler(暴虐の支配者)こと懺蛇のクソ野郎被害者の会 Part73 というスレッドが立てられていた。


 真島三太のプレイヤーネームは懺蛇(ザンダ)。

 本名に濁点を付け、何か良い感じに格好良さげと思った漢字をあてただけで、特に意味はない。


 一見して嫌われるPKではあるが、ゲームシステム上では何の問題もない。


 そんな懺陀のプレイスタイルに対して一定の盲信者も存在する。そのため懺陀がPKを開始するとお祭り騒ぎのようになり、そのフィールド一帯が暴虐に満ちていくゆえにTyranny ruler(暴虐の支配者)という二つ名が付けられた。


 1 名無しの被害者

【吉報】懺蛇きゅん有志により無事討伐完了でごさるwww


 2 名無しの被害者

 まじかwwwwざまああああwwww


 3 名無しの被害者

 結局何人集まったの?


 4 名無しの被害者

 討伐に参加したのは五十人強


 5 名無しの被害者

 少なくない?


 6 名無しの被害者

 サーバーの問題もあるけど、無駄に犠牲者だしたくないから、大手クランの連合で選抜したらしいよ


 7 名無しの被害者

 大手クランの選抜(ごくり……


 8 名無しの被害者

 それでも百人超えの大手クランが複数集まったから七百人位で周囲を包囲していたらしいよ


 9 名無しの被害者

 それで被害状況は?


10 名無しの被害者

 半分以上は天に召されたらしい……


11 名無しの被害者

 どんだけだよ……まともにプレイしてたら尊敬されるレベルなのに


12 名無しの被害者

 でもさすがに復讐あるんじゃね? 懺蛇のクランも黙っちゃいないだろ


13 名無しの被害者

 あいつソロだぞ?


14 名無しの被害者

 はwww 盲信者共はクランメンバーだろ?www


15 名無しの被害者

 盲信者共はファンクラブみたいなクランを作ってるだけで、懺蛇とは一切関係ない


16 名無しの被害者

 あいつらついでに狩られてるしなw


17 名無しの被害者

 え? 狩られるのに信者? どういうこと?


18 名無しの被害者

 おまいみたいなもぐりに懺蛇を説明してやるよ

 プレイヤーネーム 懺蛇 二つ名Crazy ruler(暴虐の支配者)

 PK主体のプレイゆえに対人戦スキルはトップレベル


 クランには属せずにソロで活動


 トップクランのメンバーには仲の良い人もいるらしいがPK対象でもあるらしい(知らんけど


 初心者やレベルの低いプレイヤーにはクエストを手伝ったりと優しいらしいが、レベルがある一定の値に達するとPK対象になる


 懺蛇がPKを始めると盲信者共が暴れるため、フィールド全体がカオスになるが盲信者共も狩られる(うける


 高難易度のクエストもソロでクリアする廃人プレイヤー


 盲信者は懺蛇を崇拝するやつら、懺蛇に狩られる事はこの上ないご褒美らしい


 盲信者になれば低レベルでも狩ってくれる(盲信者談)


 PKをした際は持ち物には絶対に手を付けないと聞いたが、気分次第で全部ボッシュートするらしい


 クエスト挑戦中にもPKをしてくるので出会ったら逃げるをおすすめする


19 名無しの被害者

 対人戦主体のゲームにいけばいいのに……


20 名無しの被害者

 街中で会うと普通に会話出来る人だから話しかけてみたらいいよ


21 名無しの被害者

 (そしてまた被害者が増えていく)


     ・

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     ・

998名無しの被害者

 次スレ

【歓喜】Tyranny ruler(暴虐の支配者)こと懺蛇のクソ野郎の被害者の会 Part74



「街中で話しかけられたら優しくしよう(瞬殺してあげよう)」


 次の日が休みというのもあり、時間は午前2時を過ぎていた。

 自分の事を書いてあるスレッドを最後まで確認するとベッドに倒れ込むように横になった。


(明日は朝からクラン狩りかなぁ……チーターが何人か居たけどあれは垢BAN対象だろ……)


 真島三太はそのまま深い眠りに落ちて行くのだった。

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