第5話 次の仕事
セウタの街に戻ってきて、酒場の店主アンガスに仕事の報告をして報酬を貰った。金貨三枚、銀貨五十枚の報酬だった。金貨一枚で、食べるだけならば、二十日は暮らせるだろう。
「ありがとう」
ギルバルドは礼を述べ、報酬を仕舞う。
セオドアとアッシュにも小遣いが支払われたようだ。
「ちぇ、初仕事のつもりだったのに」
アッシュは不満そうに言う。
「ギルバルドさんと仕事ができたんだから、文句を言わない」
セオドアが嗜める。
二人のやりとりを見て、ギルバルドは笑った。
「二人は本当に仲が良いな。まぁ、焦るな。コツコツ仕事をこなしてると、その内、嫌と言うほど仕事を引き受けることになるぞ」
「はい、そうなれるよう努力します」
セオドアは優等生な返答をする。
ギルバルドら三人はカウンターでお酒を飲むことにした。とは言え、セオドアとアッシュはまだ若い。二人の前には限りなくジュースに近い果実酒が置かれている。しばらく談笑に耽っていると、酒場も夜の賑わいを帯びてきた。
「帰って来て早々だが、次の仕事を受けてくれるかい?」
店主のアルガスが声を掛けてきた。
西にある山岳部の小さな村、ラピスに荷物を運送する馬車の護衛だ。護衛任務の割には報酬が良い。金貨十枚。少し距離があるとは言え、報酬が良すぎる気がする。
「最近は魔物が増えたようでな。少し前から、ラピス方面への荷馬車が度々襲われたりしているんだ。自警団が警戒しているセウタの周りは安全圏なのだが、そこから外れると、ただの無法地帯だ」
「あぁ、ラピス村は、地理的に、何処の自治都市にも属していないからな」
「その通りだ。あの村の者は、村自体を大きくしたいという野心はないようで、どうにもその周辺は荒れ気味だとか。まぁ、人が増えれば、それだけ揉め事が増える。それが厄介なのだろうよ。」
「分かった。引き受けよう。こいつらもか?」
「連れて行ってくれるかい?自警団の誰かでも、とは思ったが」
「連れてけよ、おっちゃん」
「一緒に行かせてください」
アッシュとセオドアが同時に言った。
「気に入られちまったな」
アルガスが大笑いした。
「まあな。経験値ってのは、金では買えないからな」
しばらく三人は他愛もない話をして過ごし、酒場の賑わいが落ち着いた頃に帰路についた。アッシュとセオドアは貧民地区のほうに消えていった。二人の話によれば、そこに秘密基地のような根城があるらしい。
仕事の集合場所と時間は、西門の前に三日後の早朝。それまでは自由時間だ。ギルバルドは背伸びをしながら夜風を感じて、大通りを横切る。路地に入ると、小さな家が密集している。この辺りは中産階級地区であろう。彼の家はその一角にある。大家の好意で住まわせてもらっている。
今夜はよく眠れそうだ。
ギルバルドは扉に手を掛けた。
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