第4話 闇に蠢く何か
リーダー格の怪しげな魔導士には逃げられたが、野盗狩りの仕事は無事に片付いた。セオドアとアッシュが捕縛した二人の野盗はセウタ自警団によって取調べを受けている。自警団は今朝方、セシリア教会跡地に到着して、ギルバルドから短い説明を受けた。
「気になりますね。その魔導士」
セウタ自警団の副団長のニックが首を捻る。他の団員は野盗らを詰問していた。ただの寄せ集まりではない可能性もある。
「裏で誰か、厄介な奴が手を引いているのか?」
「さぁ、どうでしょう?ここ数年、この辺りでは大きな事件は起こってないけれど。ここより、もっと西の山岳地帯では魔物が増えているという噂は聞きましたけどね」
「そうか。この辺りには、魔物は出ないようだな」
礼拝堂の隅っこでセオドアとアッシュは眠っていた。二人は少し傷を負ったギルバルドを気遣い、夜通し見張りの役を買って出たのだ。
「あの二人が交代で外を見回ったみたいだが、物音一つしなかったらしい。獣もいないのかもな」
「まぁ、野盗が住み着いていたので、動物たちも避けていたのかもしれません。不気味な魔導士がいたなら、尚更」
ギルバルドは遠目に取調べを観察しながら、休憩することにした。セオドアとアッシュをもう少し寝かしたら、自警団と一緒に街に戻るつもりだ。
それにしても、あの魔導士、何者なんだ。
久しぶりにあんな魔法を見た。
魔法自体はもちろん見たことがある。ギルバルド自身は魔力の適性が低く、魔法は使えない。それ故、戦闘において、魔導士は先に潰しておくのが彼の戦い方だった。魔法には様々な種類があり、一つ一つに警戒などしていたら、こちらが先にやられてしまう。
火と風の魔法を使い熟すようだった。
それだけではない。剣術の心得もあるようだった。ギルバルドの一撃を受け止めて、反撃として魔法を行使した。
強い。
セウタの街に落ち着いてから、手応えのある相手と対峙していなかったから余計にそう感じたのかもしれない。
少し気を引き締めないといけないな。
セオドアが大きく背伸びをし、起き上がってきた。
「あっ、すみません。すっかり眠っちゃって」
「まだゆっくりしてても構わない」
「取調べ中ですね、まだ、あっちは?」
二人は自警団のほうに視線を移す。
多少、手荒な尋問のようだが、野盗に人権などない。それを許せば、セウタの街の治安は維持できないだろう。
「まだ、街に帰還じゃないのかな?」
アッシュも起き上がってきた。
「取り敢えず、最初の仕事はクリアってことだよな、おっちゃん」
ギルバルドは苦笑しながら頷いた。
「アッシュ、言葉遣い」
セオドアがアッシュの背中を小突いた。
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