第2話 交易街セウタ
ギルバルドは若い二人の仲間を引き連れて、街の西門に向かった。
「何か忘れ物はないか?」
「大丈夫です。ちゃんと確認しましたから」
セオドアがすぐに返事した。アッシュは親指を立てるだけで、言葉は発さない。
交易街セウタには東門と西門があり、それぞれの場所に自警団の関所が置かれている。自治が認められている街なので、自警団は街の住人の有志で成り立っている。当然、猛者揃いというわけではないが、真面目な人が選ばれるのか、すこぶる自警団の評判は良い。
「ギルバルドさん、こんにちは。街の外へお出掛けですか?」
自警団の一人が声を掛けてくる。ギルバルドも彼の顔を知ってる。
「ニック、元気か?あぁ、ちょっと、こいつらと仕事でな」
振り返って、セオドアとアッシュを示す。
ニックは微笑んだ。彼は自警団の副団長のはずだが、物腰はいつも柔らかく人望も厚い。
「野盗退治ですね?」
「情報が早いな」
「小さい街ですからね。元々、自警団で対処しようと思ってたんですが、表立って動くと、取り逃す可能性のほうが高くて」
「そこで俺らの出番ってわけか」
「宜しくお願いします」
ニックは丁寧にそう言った。
「明日の朝には戻ってくる予定だから。軽装だが、何とかなるだろう」
「アジトと目されている場所の周りは荒廃してますが、村落の面影は残ってますから。明日の朝には、こちらから人を出しましょう」
「そうか。分かった。捕縛して、待機だな」
ニックを始めとする自警団員数名に見送られながら、三人はセウタの街を出た。太陽が沈むまで、まだしばらく時間がある。
今はあまり使われていない獣道を歩きながら、目的地へ向かう。
若者二人は大人しいが、初めての冒険で興奮しているのが分かる。ギルバルドはそんな二人を微笑ましく感じながらも、彼らの初仕事が無事に終わるように最善を尽くそうと改めて思った。
しばらく歩き続けると、少し景色が変わってきた。離れたところに教会らしき建物が見える。
「さて、そろそろ、気を引き締めて行こうか」
「はい」とセオドアが。
「おぅ」とアッシュが。
街の外では、ルールなどは適応されない。
野盗を退治する仕事がある。
同時に野盗という生きる為の仕事もあるのだ。
どちらが正義というわけでもない。
正面から教会に近付くのは得策ではない。地図を広げ、周辺を確認する。隠れられそうな場所を探す。
「二人はここで待機だ」
「えっ、斥候なら僕が」
セオドアが言った。
アッシュも負けじと言う。
「俺のほうが得意だよ、おっちゃん」
「誰がおっちゃんだ」
ギルバードは苦笑した。
「野盗の数は知れているはずだ。情報では六、七人だ。理想は一気に蹴りを付けることだが、きっと臆病な奴もいる。逃げ出す奴もな。そしたら手間だろ」
セオドアが静かに頷く。
アッシュが短く言った
「おっちゃんが囮をするって意味か?」
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