第8話 道中の会話

「シーラお嬢様。見てください。マクスウェル領に入りました。マクスウェル領は国内で最大の穀物の産地であると同時に、S級のダンジョンを3つも抱えています。どうですか?良い景色だと思いませんか?」


「そうですね。貸していただいた魔道書ですが、ここ文章は―“眼に魔力を集中させることで、練り上げた魔力を属性色で視認することができる。赤色が火。水色が水。茶色が土。緑色が風。”―で良いですか?」


「…合っています。…わずか2~3日でそこまで文字を読めるようになったのですね…。」


「はい。続きですが、四属性以外の魔力の色は、もしかして、”炎は朱”、“氷は青”なのではないですか?」


「…その通りです。…その魔道書には書いておりませんが、上位属性は基本属性の色を濃くした色と言われています。」


「ありがとうございます。ええと…次は…眼に魔力を集中…。身体強化のオーラのように眼に魔力を集中させて…。できた…。なるほど…、魔力も同じ要領で操作できるのか…。次は、魔力を手のひらにも集中させて…。治癒魔法はピンク…。…このまま色は変えられる?…ダメか…。まずは透明に戻して…。水魔法をイメージしながら…。…少しずつ…少しずつ………」


「…な、何をしているのですか?…もう“魔力視”が使えるようになったのですかッ!?…うん?…色が水色に変わっていく…?」


「水魔法を覚えた。なるほど、こうやって魔法スキルを習得していくのか…。次は火をイメージして…。…成功…。…次は…」


「…水と火魔法を習得したのですか?」


「はい。水と火魔法による拷問は、日常的に受けてましたから。」


「…ぐッ。(魔法スキルは血統が強く影響されるため、血統以外の属性魔法を習得するのは難しいとされている。しかし、肉体と精神に強制的に魔法を覚えさせればその限りではないという研究データがあったが、被験者のほとんどが魔法スキルを習得する前に死亡し、生き残った者も精神が壊れていたという。シーラお嬢様は、いったいそれほどの魔法による拷問を受けてきたのだろうか。)」


「魔道書には、魔法を使い続けるとレベルが上がると書いていますが、レベルが上がるとどうなるのですか?」


「魔法レベルが上がると魔法の範囲や威力が増えます。使用できる魔法の種類が増えると誤解されていますが、理論とイメージができていれば、魔法レベル1でも全ての種類が使用できるのです。」


「そうなのですね。ありがとうございます。…………」


「…今、土と風魔法スキルも習得しましたか?」


「はい。…………」


「…そ、それは、闇魔法ですか?」


「はい。…拷問客の中に闇魔法の研究者もいたので。」


「…闇魔法の研究者が拷問客にッ!?…最上位属性である闇魔法の使い手は、国内に3名ほどしかいなかったはず…。ま、まさか、3名のうちの誰かが…。」


「…なるほど…。…闇魔法は最上位属性…。…どうりで、闇魔法の拷問が一番キツかった訳だ…。…エネルギーを奪いとられて回復系のスキルが思うように使えず何度も死にかけた…。…一番苦しめられた属性のせいか、負の感情に呼応するせいか、一番しっくりくる…なるほど…ブツブツ…」


「……。」



……………

…………

………

……



「…し、シーラお嬢様。右手に水、左手に火の魔力が視えるのですが、“ダブルマジック”を習得したのですか?」


「二つの属性魔法を同時に発動することを“ダブルマジック”と呼ぶのであればそうですね。…………」


「…そ、その水と火の魔力が混ざったように視えたのですが、“カオスマジック”を習得したのですか?」


「異なる属性を混ぜることを“カオスマジック”というのであればそうですね。………」


「…そ、その短剣は…」


「身体強化のオーラと魔力を混ぜると、物質化するんですね。」


「…あ、あり得ない…。わ、私も使えない魔法の奥義である“魔装”まで…」



……………

…………

………

……


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