第11話

 

コボルトのダンジョンに行くために俺は一旦家に帰った。

家に帰ると母さんが近所のおばさんと話をしていた。


「お帰りなさい。丁度いい所に来たわね」

「何かあったの?」


「実は、村の近くにスライムが出ているのよ」

「倒してくればいいのか?」

「お願いできる?」

「ゲット君、ごめんね。最近けが人が増えているのよ。依頼料は出せないけど、スライム狩りをお願いしたいの」


「分かった、行って来るよ」


 俺はスライムを倒して家に戻った。




「30体以上倒して来たよ」


 家に戻ると近所のおじさんがいた。


「ゲット、最近ゴブリンが多くてなあ」

「場所さえ教えてもらえれば行って来よう」




 俺はゴブリンを倒して家に戻ると、次の日はオークの退治を頼まれた。


 オークを倒して家に戻る。




 俺は村の近くにいる魔物を倒して一週間が過ぎた。


 ……おかしい。


 ゲームの時と明らかに違う。

 こんなに依頼が頻発する事は無い。


 ダストがあまり魔物を狩っていないからか。

 そういえばゲームではダストは何度も魔物を倒した事を感謝されていた。

 でも今ダストはそこまで魔物狩りをしていないようだ。


 それだけじゃない。

 最近ゼスじいが魔物を狩っていない。

 こっちの方が大きいと思う。

 ダストから距離を取ったみんながゼスじいの訓練を受けているからゼスじいは忙しいのだ。

 村にとってスキルを鍛えた者が増えるのは良い事だけど、今その影響もあって魔物狩りが遅れているんだ。

 長い目で見れば良い事でも、短期的には魔物狩りが遅れる、か……


 このままでは、18才になると発生する盗賊イベント以前の問題だ。

 魔物に村を攻められて被害が出てしまう。

 村の周りにいる魔物を討伐しよう。


「父さん、魔呼びのポーションを100本買いたい」

「村の周りの魔物狩りか?」

「そうだね」


「100本は無いが、不足分は作って貰おう」


 買えるだけ魔呼びのポーションを買って村を出る。

 俺はその日から村の周りにいる魔物狩りを始めた。


 魔呼びのポーションを投げて魔物を呼びよせる。

 


 ゴブリン12体、スライム6体、オーク3体か。


「ハイファイア!ファイア!ファイア!」


 俺はハイファイアの範囲攻撃で魔物を焼いて、余った敵をファイアで倒す。


 ハイファイア=範囲攻撃

 ファイア=単体攻撃なのだ。


 効率だけで考えればメイスで殴ってヒールで回復しつつ時間をかけて戦った方が多くの魔物を倒せる。

 炎魔法はMPが切れたら回復するまで休む必要がある。

 でも、切り札の炎魔法を鍛えておきたい。


 俺は毎日魔物を呼びよせて炎魔法で魔物を倒した。




 毎日魔物を狩ると村人の反応が変わってきた。


「ゲット、お疲れ様」

「ゲット君、いつも魔物を狩ってくれてありがとう」

「無理しすぎるなよ」


 主人公のダストが言われるはずの言葉を俺がかけられる。


 そして、寄付として魔呼びのポーションをたくさんプレゼントされた。




 更に、


「たくさん狩るにゃあ!」


 アリシアも魔物狩りに同行するようになった。


 俺が魔呼びのポーションを投げると魔物が寄って来る。



「全部スライムにゃあ」

「数が多い、50近く居るぞ。ハイファイア!ファイア!ファイア!ファイア!」


 ある程度魔法で数をは減らすとアリシアが素早くスライムに近づく。

 ロングナイフの二刀流でスライムをどんどん倒していく。


 俺は後ろから追いついてメイスで殴って倒し、全部倒し終わるとハイタッチをする。




 俺とアリシアが村に帰るとダストが俺を睨みつけた。


「おい!くそデブ!調子に乗ってんじゃねーぞ!」

「ゲットは太ってないにゃあ」


「ち!お前はどんくさいゲットに騙されてんだよ」

「ゲットはどんくさくないにゃあ」


「そろそろ行こう」

「待てよ!逃げてんじゃねーぞ!お前村の周りにいる魔物をちまちま狩っただけで調子に乗るなよ!」


「確かに村の周りにいる魔物を狩っているだけだ。でも感謝はされている」

「そうにゃあ、皆の役にたっているにゃあ」


「ふん、今に見てろよ。俺は皆が近づかないダンジョンを攻略して俺の凄さを分からせてやる!」


 そうか、ダストは俺が始まりのダンジョンを攻略済みな事を知らない。

 都合がいい。


 少し煽っておこう。


「ダンジョンは危ない。いくら勇者でも危険だ」

「は!俺は問題ねえよ!さくっと攻略して見せる!そうすりゃあどっちが上かわかるだろ!」


「危険だぞ」

「お前はな!俺は勇者だ!余裕なんだよ!」

「そうか、分かった」


 これでダストは始まりのダンジョンに行くだろう。

 そしてアイテムが無い事でショックを受けるだけでなく、俺がダンジョンに行ったとは思わないだろう。

 それに、多くの魔物をすでに狩ってある。

 ダンジョン内は魔物がまだ少なく、レベルアップもしにくいだろう。


 俺とアリシアは家に向かおうとする。


「待てよ!お前、アリシアと仲良くしてんじゃねえぞ!」

「もういいにゃあ。ゲット母さんのシチューを食べに行くにゃあ」


「アリシア!お前は俺のものだ!」

「俺もアリシアもお腹が空いている」

「口答えしてんじゃねーよ!」


「ダストは口だけにゃあ。近くにいる魔物をそんなに倒さないし、ダンジョンに行く話は前も聞いたにゃあ。でも、あまり魔物を倒していないにゃあ」


「やってやるよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!俺の力を見せてやる!」


 ダストは大地を踏みしめるように怒って歩いて去って行った。

 俺の言葉よりアリシアの言葉が効くようだな。


「やっと行ったか」

「ダストは口だけでしつこいにゃあ」


 ダストは厄介だ。

 態度はでかいけど自分では動かず、文句だけ言ってくる。


 ああいう態度だから村人に魔物狩りを頼まれることは無い。

 ダストは孤立しているけど分かっていないのか?


 でも、才能だけはあるんだよなあ。


「早くシチューを食べに行くにゃあ」

「そうだな」


 アリシアが後ろから俺を押す。

 アリシアは前にも増してまた可愛くなった。


 ダストはアリシアを手に入れたいと思っている。

 だがダストが何とかしようとすればするほどアリシアが離れていく。

 俺がアリシアと仲良くすればダストが俺に敵意を向ける。

 アリシアとはもっと仲良くしたいけど、今は中々難しい状況だ。


「アリシア、ダストのレベルって分かるか?」

「40を超えてるって言ってたにゃあ」

「40越え!」


「真に受けない方がいいにゃあ。ダストは嘘つきにゃあ」

「そ、そうだな」


 恐らく嘘だ。

 だが、本当に40越えならまずい。




 ゲット 人族 男

 レベル:  36

 HP:  360   SS

 MP:   108    F

 物理攻撃:180    D

 物理防御:360   SS

 魔法攻撃:360   SS

 魔法防御:108    F

 すばやさ:216    C

 固有スキル:炎強化

 スキル:『メイスLV31』『盾LV31』『ファイアLV26』『ハイファイアLV16』『ヒールLV17』『リカバリーLV2』『トラップLV10』『宝感知LV8』『ストレージLV14』

 武器 マジックメイス:220 魔法威力+10%

 防具 黒鉄の円盾:70 ハイブリッドローブ:50 バトルブーツ:40

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