第12話

【ダスト視点】


 俺はステータスを開く。



 ダスト 人族 男

 レベル:  11

 HP:   77    B

 MP:    77    B

 物理攻撃: 77    B

 物理防御: 77    B

 魔法攻撃: 77    B

 魔法防御: 77    B

 すばやさ: 77    B

 固有スキル:勇者

 スキル:『剣LV5』

 武器 鉄の剣:150

 防具 革の服:20 バトルブーツ:40



 いつ見ても最高のステータスだ。

 俺はすぐにレベル40を超える。


 俺がその気になれば簡単に強くなれる。


 勇者である俺を訓練する為村に人が派遣されるが、その前にレベルを上げてぶっちぎる!




 俺はアリシアと別れた後、村を回った。

 ダンジョンに行くためにポーションを揃えておきたい。

 金が必要だ。


「おい!魔物で困っているなら俺が倒してやるよ」

「ゲットが倒してくれているから問題無いわね」

「は!雑魚のゲットより勇者ダストの方が優秀だ。今なら3万ゴールドで依頼を受けてやる」


「ゲットはただで魔物を倒してくれるわね」

「金がねえのか?」

「無いわねえ」

「ち、使えねーな!」



「おっさん!3万ゴールドで魔物狩りを受けてやるよ」

「必要無いよ。払う金は無い」

「ここには貧乏人しか居ねーのかよ!」




 その日の内に村中にダストのうわさが広がった。


『ダストが高額な依頼料で魔物狩りを受けようとしている。ダストに近づくな』


 村人は金が無いのではなく、ダストに金を払いたくないのだ。

 そのお金があるならゲットに寄付をする。

 



 まったく、誰も俺に依頼をしねえ!

 仕方ねーがダンジョンに向かうか。

 始まりのダンジョンでレベルを上げて金も貯める。


 俺は始まりのダンジョンに向かった。



 ダンジョンに入ると、魔物が少ない。

 ダンジョンの中も外も魔物と遭遇する確率は変わらないのか?


 ち、ダンジョンの入り口付近でレベル上げをしようと思ったが、しょーがねえ。

 奥に進むか。


 俺はダンジョンの中層にたどり着いた。

 ここも魔物が少ないか。


 へっへっへ、この奥には隠し扉がある。

 まずは宝箱を手に入れる。

 確かあそこには鉄の鎧がある。


 それも考えた上で鎧を買っていない。


 キシャアアア!


 ポイズンスネークか。


 ポイズンスネークが俺に毒霧を吐き出す。


 毒を受けるが問題無い。

 俺はポイズンスネークを斬り倒した。


 そして異常解除のポーションを飲む。


「馬鹿め、対策済みだ」


 値は張るが異常解除のポーションを3つ持って来た。

 中層の魔物が毒攻撃をして来るのは知っている。

 俺はゲームをクリアしている。


 カサカサカサ


 ポイズンスパイダーが3体か!


 俺は囲まれて噛みつかれた。


『毒の状態異常を受けました』


「くそがあああああ!!」


 俺はダメージを受けつつ異常解除のポーションを飲み、ポイズンスパイダーを1体倒す。


 後ろからまた噛みつかれた。


『毒の状態異常を受けました』


 俺は走って逃げ出す。

 もう異常解除のポーションが切れる!


 異常解除のポーションを飲みつつ走る。


 入り口付近でゴブリンに見つかるが、構わず外に出た。


「はあ、はあ!ここまでくれば、大丈夫だ」


 俺はダンジョンの外に出て息を整えた。

 

 だが、ダンジョンからゴブリンが7体出てくる。


「嘘だろ!ダンジョンから出てくるのか!」


 ゲームではダンジョンの魔物は外に出てこなかった!

 おかしいおかしいおかしい!


 ゴブリンは後ろから石や短剣を投げてくる。


「くそ!やめ!あああ!痛い!このやろおおおおおおおおおおおお!殺すぞ!!!」


 俺は反転してゴブリンを倒す。

 用意したポーションで傷を回復しながら戦い、何とか勝利した。


「はあ、はあ、はあ、ポーションも、異常解除のポーションも全部使い切った」


 俺はゴブリンのゴールドを拾って街に戻る。




 おかしい。

 俺は勇者だ。


 何でこんなに苦戦する?

 ……攻撃モーションがゲームの時より遅い気がする。

 剣LVを上げれば攻撃スピードが速くなるのは分かる。

 だが、LVの割に俺の攻撃モーションがぎこちない。


 もっと速く攻撃出来れば魔物に苦戦する事は無かった。

 それに高い金を出して買ったポーションを全部使い切ってしまった。

 完全に赤字だ。


 慣れていなかったからか?


 そうだ、初めてのダンジョンで緊張していた。

 だからうまく動けなかったんだ。


 ダンジョンに行く前に村の周りで金を稼ぐ。

 そしてまたダンジョンに向かう。



 ◇




 俺は魔物を倒してレベルを上げた。

 ポーションも揃えた。

 また始まりのダンジョンに向かう!

 魔物がなかなか見つからず、金稼ぎに時間がかかったがまあいい。

 そろそろ頃合いだな。

 ダンジョンで効率よく稼ぐ。




【始まりのダンジョン】


「くそ!魔物が多い!」


 おかしい、前より魔物が多くなっている!

 中層に進めない!


 だ、だが入り口の近くで魔物狩りをすればレベルは上がる。




 俺は7日間ダンジョンの入り口で魔物を狩った。


 そして中層の隠し部屋にたどり着いた。

 ふ、レベルも上がったぜ。

 俺様の才能が恐ろしい


「はあ、はあ、はあ!やっと、たどり着いた。これで楽に……ない!無い無い無い無い!宝箱の中身はどこに行った!」


 鉄の鎧!鉄の鎧が無い!俺の計画が台無しだ!


 最初にダンジョンに来た時は魔物が少なかった。

 誰かが攻略した直後だったからか?


 でも今は魔物が多い。

 すでに攻略された?

 いや、ありえない。


 ダンジョン深層のざまあチケットは主人公だけが使う事が出来るキーアイテムだ。

 宝箱は空けられても、ダンジョン深層のゴブリンキングとざまあチケットは俺の獲物だ。


 だが、このままダンジョンの深層に行くのはまずい。

 死んでしまう。



 俺は隠し部屋で休んで、何とかダンジョンを抜け出し、村に戻った。

 うまくいかねえ。


 毒を受けるのは俺じゃなくゲットの役目だ!


 攻撃を受ける肉壁はゲットが務めるべきだ!


 あいつは俺の女と仲良くしてちまちま魔物を倒すだけで村人に取り入ってやがる。


 俺が尊敬されてアリシアに懐かれるのが当然なのにあいつはゆるせねえ!


 俺はざまあチケットを取り出す。

 くそ、これは俺の切り札だ。


 ゲットには使わねえ。


 ゲットごときには使わねえ!


 ゲットは18才で死んで、俺の引き立て役になる大事な役目がある。

 まだ死なねえか、くそ!18才までなげえゼ!

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