一滴の夢に溺れて

アカギメラン

Prologue


 鳥の囀り《さえずり》、風の吹く音、流れる人の声。

全てがこの世界の安寧を形作り、また、確たる普遍性をも証明していた。






       かの一人の少女は、そんな世界の上に立っていた。





 青空の下、起こる出来事は実に様々である。

一人ずつに人生という名のストーリーがあり、喧騒の構成分子はきっと…握ってしまえば直ぐに砕け散ってしまう程の、小さな小さなドラマだ。



 少女は深呼吸をし、歩き出す。

すっかりへとなった彼女の容姿は、人々に希望と絶望を与える象徴でもある。



既に瞼の裏側まで焼き付いた地獄の果てを、ここで終わらせるために。

そして………我々が見ることを許されなかった、この世界の本当の意味を、探す。



 剣を固く握りしめ、歯を食いしばる。

この仕事は、言ってしまえば汚れ仕事だ。何故この選択をしたのか、何故悪夢に自分から足を突っ込んだのか、答えは未だに探し当てることはできない。



___________でも。




「…もうとっくに、私達は悪夢の最中だ。」




どうしてか、過去の自分を振り返ることはしなかった。

もう、足を止めたくなかったのだ。


深淵を覗き込んだ少女の瞳には、蒼い夕焼けが映った。

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