第9話 価格とサブスク
商品に対する「価格」というものは、一定ではありません。一定ではありませんが、一部定価を定める商品が存在します。新聞や音楽CD、それから書籍です。これらは、割引が禁止される商品として法律で定められているようです。それ以外の商品は、希望小売価格やオープン価格と明記されたりします。販売者は、売価を自分で設定することが出来ます。利益を取るために高く販売しても良いし、在庫を減らすために損して販売しても良いわけです。
僕は中央卸売市場で仕事をしています。主に、果実の売買に関わっていますが、価格は常に変動するのが普通(最近は違ってきていますが、ここでは説明しません)です。市場では、価格とは言いません。「相場」と言います。相場というのは、需要と供給が折り合う場所です。ある商品に対して需要が高まれば、相場は上がっていきます。どんなに需要があっても、その需要に対して供給量が溢れるほどに増えれば、相場は下がっていきます。その反対もあるわけです。
拙著「逃げるしかないだろう:上巻」の価格を、僕は500円と設定しました。現在のところ、僕が購入した一冊だけしか販売は出来ておりません。販売して直ぐに無料キャンペーンを打ったので、多くの方に読んでいただける環境は整いましたが、商売にはなっておりません。無料キャンペーンの影響もありますから、当分は売れないでしょう。だからといって、価格を下げるつもりもありません。
需要と供給の話をしました。紙の本は、製本した冊数しか販売できませんから、供給量に限界が存在します。ところがkindleは電子書籍です。供給量は無限です。購買を希望する方たちがクリックすればクリックしただけ販売されていきます。ここには、世間一般的な相場の原理とは違う力学が存在していることになります。
価格は、作者が決めます。売れるから高くするとか、売れないから安くするとか、そうした需要と供給に惑わされてはいけないと思いました。自分の作品の価値がどこにあるのか、自分で決めないといけません。この価格に正解はありません。あるとすれば、他の作品との相対的な価格差だけだと思います。適正な価格帯というのは存在するので、その範疇で決めるのが妥当だと思います。
kindle出版する場合、作者は印税について選択を求められます。売価に対して、35%か70%です。僕の本は500円ですから、一冊販売できると双方の印税は175円か350円になります。当然、70%に設定したほうが利益が大きい。ところが、70%に設定するためには、kindleから条件を設けられます。kindleの独占販売です。
僕は、印税70%を選択する為に、ノベルアップ+、小説家になろう、カクヨムで公開していた「逃げるしかないだろう」を、非公開にしました。読者の方がまだ存在していたので、猶予期間は設けましたが、僕にとっては大きな決断です。一見、うま味のある印税70%ですが、これは売れなければ印税は入りません。売れもしない、読まれもしないでは、何をしているのか分かりません。
kindleは、電子書籍の販売だけを行っているわけではありません。Kindle Unlimitedというサブスプリクションが存在します。月額980円で読み放題になるサービスです。音楽の世界もそうですが、無限に商品を供給できる環境では、サブスプリクションという販売方法は効果的です。販売者、購買者、双方にメリットがあります。印税を70%に設定すると、自動的にこのKindle Unlimitedのリストに加えられます。
現在のところ、本は一冊しか販売できておりません。ただ、Kindle Unlimitedでは読まれています。実は、これが大きいです。サブスプリクションで読まれた場合も、印税は入ります。1ページ約0.5円です。「逃げるしかないだろう」は361ページあります。一冊読んでもらうと、180.5円になります。販売するよりは利益は低いですが、読まれやすくなります。
「逃げるしかないだろう:上巻」を販売して、ほぼ半月が経過しました。現在は、下巻の推敲に時間を掛けています。下巻を販売したら、次にしたいことがあります。ペーパーバックです。実は、kindleでは、書籍を製本化して販売するサービスが存在しています。ペーパーバックとして販売出来たら、それは嬉しいことです。でも、それ以上に、僕自身が製本化された自分の本を手にしたいと思っています。もう少し先のことになりますが、ペーパーバックの準備が整いましたら、そのことについても経過報告をしていきたいと思っています。
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