第8話 マーケティング

 ネット小説の登場により、多くの作家さんが生まれました。僕もその一人です。小説を書くという作業は、時に非常に気持ち良い行為です。ワクワクしながら言葉を紡いでいく瞬間が快感だったりします。変な譬えですが、自慰行為に近い。そうした作品が、ネットを介して世間に発表された時、読み手との関係が始まります。またまた変な譬えですが、セックスに近い。ただ、絡み合うのですが、一般的なセックスと違うところがあります。身体を晒すのは作家のみだったりします。


 作品は、読者によって評価されます。しかし、その評価は多くの場合、かなり辛口です。低評価でも、評価されればマシです。ほとんどの作品は、評価されることなく埋没してしまうのが現実だったりします。小説を投稿し始めた頃、読んで欲しくて投稿したのに、読んでくれなくて悩みました。


 ――多く方に読んでもらいたい!


 そんな気持ちを抱えている作家さんは、多いと思います。もちろん、作品の質を上げる努力も必要ですが、良く出来た作品であっても、読んでもらうのはなかなか難しい。


 以前、人間の意識の話をしました。芸術と呼ばれるジャンルの中で「小説」だけは特異です。音楽や絵画は、作品に触れた瞬間にその良さが分かります。ところが、「小説」は、読者が努力して読み進めてくれないと良さが分かりません。出だしで面白くないと判断されたら、数ページで読まれなくなります。手に取ってもらうだけでも大変なのに、最後まで読まれないことも覚悟しなければなりません。


 ところが、世間的に評価を受けた作品は違います。芥川賞や直木賞を受賞する作品は、第三者によって面白さが保証されています。読者はお金を払って読むわけですから、元を取ろうとします。相互に関係しあって相乗効果が生み出され、作品は指数関数的に読者が増えていきます。有名どころの文学賞でなくても、ネット小説であればランキングに上がってくるだけでも、その効果は大きい。


 「逃げるしかないだろう」をkindle出版しましたが、それだけでは読者は現れません。そもそも、読者が僕の作品を見つけ出すことが難しい。何らかの方法で、知ってもらう努力が必要です。kindle出版に際して、僕なりに無い頭を絞って考えてみました。


 名前を知ってもらう受け皿として、ホームページは必要だと思いました。マーケティングという観点では、読者が増える仕組みではありません。ただ、何らかのきっかけで僕の事を知り、僕の事を調べようとした場合の足掛かりにはなります。名刺のようなものですね。まだ、工事中ですが、準備は進めています。


 次に、広告が必要です。僕は、幾つかのSNSを使用しています。あまり広げてはいないので、友達は少ない。広告としては効果は薄いです。また、友達に僕の本を薦めるのは、正直なところ……したくなかった。人間関係に妙な軋轢が生まれるからです。それでも、友達の前で裸になる覚悟をしました。フェイスブック、ツイッター、LINE、ノベルアップ+、小説家になろう、カクヨム。これらのSNSやサイトに、僕の作品を出版する告知を行いました。また、この記事も含めて、僕の動きも定期的に発信しました。


 kindleでは、マーケティングのツールとして、無料キャンペーンがありました。この使用方法について考えました。無料で配布するのは簡単ですが、それは収益にはなりません。ただ、僕の事を知ってもらうことは出来ます。作品の完成度さえ高ければ、次に繋がる可能性が高まります。特に、「逃げるしかないだろう」は上下巻になっています。下巻の販売の布石として、上巻を無料にするのは一つの手です。


 また、ランキングの上位に食い込むと、サイトに表示されるようになります。今回、無料という枠の中でしたが、ロマンス部門で1位(5日間だけでした)になることが出来ました。嬉しい限りです。この場で、皆さんにお礼を述べさせていただきます。


 ありがとうございました。


 その上で、面白いと感じて頂けたら、「逃げるしかないだろう」に評価を頂けると、尚更嬉しいです。宜しくお願いいたします。


 マーケティングの最後として、僕の体験記の出版を考えています。この記事のことです。ノベルアップ+、小説家になろう、カクヨムでは、「あなたも、kindleで出版しませんか」という題名で、一つの作品として公開しています。現在進行形で、体験記をアップしているので、現在も広告としての機能は十分です。その上で、「逃げるしかないだろう:下巻」を発刊したら、再構成してkindleで出版します。最初から、そのつもりで題名も決めました。


 実は、kindle出版する為に、kindleのサイトを見ていたら、「kindle出版は、まだするな」的なタイトルの本がありました。気になったので買いました。内容は、ネット上で紹介されているkindle出版の手続きをパワーポイント風に整理した本でした。


 ……。


 正直、吃驚しました。その上で、勉強になりました。既に紹介されている内容なので、わざわざ買う必要がなかった本です。しかも文字が少ない。ただ、タイトルが俊逸でした。「まだ、するな」という言うからには、何かしらの裏情報があるのではないかと期待してしまいました。


 kindleで本を出版する場合、タイトルは重要です。それと、ハウツー本に需要があることを知りました。僕のように、何らかの専門知識が欲しい時は、ハウツー本はとても価値があります。僕も、体験記としてのハウツー本を出版することにしました。出版するからには、面白いものにしたい。その上で「あなたも、kindleで出版しませんか」が、「逃げるしかないだろう」の援護射撃になれば良いなと考えています。


 現在、僕が考えているマーケティングは、ここまでです。お金を出せば広告を打つことは出来ますが、そこまでは考えていません。kindleを切っ掛けとして、「逃げるしかないだろう」という作品の質を上げることが出来ました。現在は、それだけで嬉しいです。今後、500円という価格がネックになってきます。正直なところ、売れないでしょう。価格を下げたとしても、売れないでしょう。やれることは、やっています。今は、推敲に集中して、より面白い作品に仕上げることが大切です。そんな風に思っています。

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