episode 36『へその緒博物館』

 ――へその緒博物館

 特別展2124年〇月△日~□月〇日


 海岸を散歩していると不思議なポストカードが落ちていた。日付は100年後だ。ジョークで作られたものか。それとも単なる誤植か。

 表面には展示室と思われる写真が印刷されていた。館内が暗く、展示品ははっきりとは映っていない。ほんとうにへその緒が展示されているのだろうか。……だとしたらなぜ?

 興味をそそられたので現地まで行ってみることにした。簡単な地図しかなかったが、印の場所なら知っていた。

 印の指し示している建物はほんとうにあった。博物館は2階の一室にあるようだ。私は歩いて階段を上った。

「へその緒博物館」という看板が出ていた。心臓が跳ね上がった。

 受付には黒いスーツを着た紳士が立っていた。紳士が声をかけてきた。

「初めまして。館長のルトスワフスキです。招待状をお持ちですね」

 私はポストカードを見せた。

「おや、お客様は100年後でございますね。100年後のお越しを心よりお待ちしております」

 その後も少し問答があったが、結局私は入ることができなかった。

 日を改めて博物館を訪れると、建物のシャッターが下りていた。

 それから前を通る度に入口を気にしていたが、開いているところを見ることはなかった。

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