episode 31『真夜中の電話』
真夜中に電話で目が覚めた。
私は反射的にスマホを手に取ったが、すぐ勘違いに気づいた。実家に泊まりに……というか留守番に来ているので、普段あまり馴染みがない
実家は思い切ったリフォームの結果、私の住むマンションよりもモダンな造りに変貌を遂げていた。
ちょっとしたホテルに泊っているかのようだ。
留守番を兼ねての泊まりとはいえ、電話に関しては、夜九時以降は出なくてよいことになっていた。もう九時はとっくに過ぎている。多くの人は眠っている時間だ。私は無視を決めこむつもりだった。
しかし、違和感はあった。電話機の設定上、深夜〇時を回るとそもそも音が鳴らないずなのだ。それなら何が鳴っているのだろう。
仕方なく電話を取りにいった。
よくあることだが、電話機のある部屋にたどり着くと、ちょうど電話が切れてしまった。また鳴ると面倒だ。音が鳴らないようにしておこう。だが、設定を確認するとやはり着信音はオフになっている。
その時、またさっきの電話の音が鳴った。
廊下を隔てて反対側から聞こえる気がした。
だが、そちらには部屋はない。
廊下に出ると、壁に大きな写真が掛けられていた。リゾート地の別荘のような、きれいな広い部屋の写真だった。ところどころ床がくりぬかれ、ヤシの木や観葉植物が植えられていた。
電話の音は、写真の中から響いていた。
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