episode 24『ヒュアデス』
ギリシャの精霊の姉妹。ヒュアデスたち。その名は雨を降らせる女を意味する。
それなら、行く先々で雨を降らせるわたしも、ヒュアデスを気取りたい。
同人誌のイベントに参加するため、雨の中、地下鉄の駅に向かって歩いていた。傘を傾けて、カバンを雨滴から守る。中には、一冊ずつ手作業で綴じた冊子が三〇冊程。収められているのは、中学三年の時に書いた小説と、ここ何か月かで書いた詩のような文章。
地下鉄の駅に入るといくらか安心できる。紙袋の上から被せてあるビニールをハンカチで拭う。中身は無事なようだ。
改札を抜け会場まで歩く。その間、雨に降られなかった。
ヒュアデスのわたしは、少しの間なら雨を抑えておくこともできるのだ。
題名とペンネームだけのシンプルな表紙を並べる。会場の設営を終え、写真をアップする。ヒュアデスのブースは小さい。テーブル半分だ。どん、どろん、と大きな音がして雷。激しい雨が降り出した模様。これで完成。ヒュアデスのブース。
口の中がカラカラになって、ペットボトルのお茶をひと口飲む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます